大林組がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した建物の維持管理ツールを開発した。
現場に携帯する多機能型携帯端末(iPad)に導入し、点検業務を効率化・高度化できるのが特徴。設計や施工段階のBIMを基に3次元(3D)モデルの容量を軽量化することで、躯体や仕上げ材、設備機器の属性情報と合わせて端末に表示できる。その場で写真や点検記録などの追加情報を入力することも可能という。
開発したのは「BIMobile」(ビーモバイル)。ソフトウエア開発ベンチャーのラティス・テクノロジー(東京都文京区、鳥谷浩志社長)が展開する「XVL技術」を使い、軽量化したBIMの3Dモデルと、モデルにひも付けられた属性情報をiPadに表示できるのが特徴だ。
このツールを導入した携帯タブレットを持って現場を巡回すると、実物と3Dモデルを見比べながら点検対象となる構造躯体、仕上げ、建具、設備機器などの仕様・材質・基本性能やメーカー情報の検索、図面・取扱説明書などドキュメントの閲覧が可能になる。
過去の点検記録や不具合記録を参照することもできる。あらかじめ設定した項目に沿った点検や気付いた点のメモ、撮影した写真の取り込みも可能で、点検業務の効率を飛躍的に高めることにつながる。点検記録などの追加情報は、特別な技術を必要としないエクセルファイルでサーバーに保存される。3Dモデルや属性情報の参照と同時に点検記録などを入力できる技術は建設業界で初という。
建物の維持管理業務では、竣工時の最終図面や設備機器の取扱説明書などを収めた竣工図書を使うが、量が膨大になるため、点検時の携帯には不向きで、必要な情報がすぐに引き出せない点も課題とされる。
このため、設計や施工で活用が進むBIMを建物完成後の維持管理でも活用することが期待されている。ただ、BIMは専用ソフトと操作の習得が必要な上にデータ量が大きく、携帯タブレットでは属性情報を十分には表示できない。点検記録などを携帯タブレットからアップデートできるアプリケーションがない点も導入の妨げとなっていた。
大林組の建築事業では、設計・施工を手掛ける全案件と他社設計のプロジェクトの約8割の施工でBIMを導入している。BIMのデータベースを核とした新たな業務プロセス「スマートBIM」を構成する技術の一つとして、BIMobileを顧客が自身で行う建物の維持管理業務や自社の施工管理で展開していく。
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