2016年4月4日月曜日

【駆け出しのころ】松井建設取締役執行役員建設本部長・鎌田洋次氏

 ◇建設は人として成長できる仕事◇

 中学生のころに東京オリンピックが開かれ、テレビで見た国立競技場や代々木体育館などの施設に感動したものです。これをきっかけに建築に興味を持ち、その道へ進みました。

 松井建設の入社面接では趣味を聞かれたことだけが鮮明に思い出されます。「山登りです」と答えると、「どんな山が好きですか」などと矢継ぎ早に質問され、答えるのが大変でした。

 当時は当社が得意とする社寺建築の知識はありませんでしたが、神社やお寺で感じる清明な空気は好きでしたし、そのような思いも入社の縁になったのかも知れません。

 新入社員で最初に配属されたのは、東京都内のマンション工事です。ここに4歳上の先輩がおられ、「自分で覚えろ」といった教え方でしたが、いろいろ勉強させてもらいました。今でも感謝しています。

 当時はがむしゃらでしたので、それだけたくさん失敗もしました。1年ほどたって慣れてきたころのことです。製作金物を取り付ける職人たちの機嫌を損ね、「冗談じゃない」と現場から帰られてしまったことがありました。墨出しができていない、埋め込みアンカーが入っていない、しまいには資材が散乱していて作業ができない。要はまったく段取りができていなかったのです。

 恥ずかしいやら情けないやら、自分ではどうしていいか分からず、すぐには事務所に戻れませんでした。これはしかられると覚悟して事務所にやっと戻ったのですが、先輩は意外にも怒らず、すぐに職人の会社に電話をしてくれました。

 そして一緒に現場に行き、何が悪かったのかを丁寧に教えてくれたのです。後で思ったことですが、これは知ったかぶりで段取りのことを相談もせず、勝手に作業を進めていた生意気な私への先輩からの「大喝」だったのかもしれません。

 35歳の時に初めて所長を任されましたが、若いころから早く所長になりたいと考えていました。自分ならこうやりたいといった思いが強く、やはり生意気だったのだと思います。

 建設というのは最高の仕事だと信じています。足場を解体して現れる新築の建物を初めて見た時の「感動」。苦労を共にした同僚や仕事に打ち込んでくれた職人たちへの「感謝」。そしてお客さまに喜んでいただいた時の「感激」。この「3K」は私だけでなく建設技術者に共通した財産でしょう。

 多くの人たちと出会い、深く関わるのが建設の仕事とも言えます。人間として成長できる仕事であり、若い人たちにはこれからの自分をどんどん磨き上げていってほしいと思います。

若い時から早く所長になりたいと考えていた
 (かまた・ひろつぐ)1969年松井建設入社。初めて東京都内の建築現場に配属されて以来、約25年にわたり現場で施工に携わる。建設本部品質環境部長兼安全労務部長、執行役員建設本部副本部長兼安全品質環境部長などを経て現職。北海道出身、65歳。

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