2016年4月8日金曜日

【自分らしく働くには】在阪ゼネコン設計部女性社員が交流会議で議論

 女性が長く働き続けるにはロールモデルの存在が不可欠だが、建築設計界では女性はまだまだ少数派だ。そこで、在阪のゼネコン設計部に所属する女性技術者たちが立ち上がり、14年に「フロム関西設計女子技術者会議」を結成。会社や年代の垣根を越えたネットワーキングが実を結びつつある。3月11日に竹中工務店大阪本店で開かれた第4回会議を取材した。

 ◇社の垣根超えつながり深化◇

 会議に参加しているのは、大林組大阪本店、鹿島関西支店、清水建設関西支店、大成建設関西支店、竹中工務店大阪本店、戸田建設大阪支店の6社で働く女性社員。全員が設計部門に所属し、担当業務は意匠設計や構造、設備、監理などさまざまだ。メンバーは固定せず、毎回、各社から数人ずつが出席している。

 「建築設計界に共通する課題や、女性技術者、ゼネコン設計部ならではの問題は多い」と話すのは「女子会」設立のきっかけを作った一人、竹中工務店の大河原郁子さん。

 同社大阪本店設計部では14年に女性活躍推進ワーキンググループ(WG)を設置。WGに参加している大河原さんらが「他社はどうしているのか」と疑問を持ち、各社に声を掛けたのが設立の発端だ。各社の設計部トップを中心に構成するグループ「フロム関西」の女性版として発足し、14年9月に第1回会議を開催した。

 各社の幹事は、「建築設計に携わる女性が集まる貴重な機会」と口をそろえる。参加企業には関西の設計部門は規模が小さく、女性社員が少ない会社もある。

 清水建設の田口美沙さんは「女性社員は若手が中心で、関西支店では育休からの復帰第1号が誕生したばかり」と話す。女子会では他社の先輩技術者に出会えることが魅力の一つになっているようだ。

 ◇「自分らしい働き方」模索◇

 第4回会議では、まず大林組が幹事を務めた前回会議を振り返った。「社内にロールモデルがいないため将来をイメージできない」という参加者の声が多かったことから、大林組のベテラン女性技術者が自身の体験談を披露。「パワフル派」と「マイペース派」の2人が登場し、各自の考えに合った違うタイプの働き方を提示したという。

 次に、竹中工務店の設計部WGのメンバーである谷地富美子さんがこれまでの活動を報告。WGは、ロールモデルの不在や長時間労働を前提とした働き方など女性の活躍を妨げていると考えられる原因を挙げ、14年末に▽社内の意識・風土改革▽平等な評価制度▽業務時間の短縮▽前倒しのキャリア開発▽周辺環境の整備-の5点を提言にまとめた。

 これを受け、設計部として女性活躍推進のためのアクションプラン20項目を設定。これまでに全項目で課題をほぼ達成したと報告した。

 キャリア開発については、一つの物件を一貫して担当することが設計者の能力育成につながるとの考えから、早い段階から若手にプロジェクトを通しで経験させることを提案。谷地さんは「特に女性は出産などの前に自信を付けてもらうことが大切だ」と指摘した。参加者からは「WG活動に男性も巻き込んでいる点がよい」といった反応があった。

 続いて、大河原さんと鹿島の大平直子さんの進行でフリートークを実施。「これまで一番ピンチと感じたこと」というテーマでは、夫の転勤や育休によるブランクといったライフイベントと関連する仕事上のピンチを挙げる意見が目立った。

 ◇仕事のつきあい方、〝鈍感力〟も必要◇

 ある参加者は、夫が転勤になった時に当時の上司が総合職への転換を勧めてくれ、自身も転勤して仕事を続けられることになったと説明し、「上司に恵まれ、ピンチがチャンスにつながった」と振り返った。建設業に限らず、配偶者の転勤を機に退職する女性が多いことは大きな問題。全国規模のゼネコンの利点を生かし、雇用する側にとっても貴重な専門職人材を維持できた例と言える。

 「フルで働けない時の仕事との付き合い方」についての議論では、育児中の参加者が「できないと思うと落ち込むので、できなくても大丈夫と自分に言い聞かせている」と悩みを打ち明けると「『鈍感力』が必要。自分を追い詰めないで」という助言があった。

 大成建設の本家公巳子さんは「子どもの急病などの時、電話でも仕事を頼めるような、普段からの環境づくりが大切」と話す。

 育休からの復帰直後は、特に子どもの病気で休むことが多くなるのが働く親の共通の悩み。「会社に貢献したい」という思いの強い人ほど悩みが深くなる傾向があると言われる。

 女子会メンバーには子育て期を乗り越えて活躍し、「案ずるより産むがやすし」を体現する女性もいる。会議で自分の経験を惜しみなく披露する先輩の姿には、次世代の女性たちへの期待が感じられる。

 設計という妥協を許さない世界でどう自分らしく働くか-。一つではない答えを「議論を通じて探りながらやっている」と参加者の一人は話していた。

2 件のコメント :

  1. コメント失礼します。女性進出の中で、子供の事が置き去りになっているように思う。物言わぬ子どもがどんな思いで保育所に預けられているか?母親によっては「保育所に預けたほうが楽よ」と平然と言う親のいる。貴殿たちは恵まれた環境にいると思うが本当の意見を聞きたいならば、もっと大手ではなくて小さな子会社に本当に困っているひとの話しに耳を傾けて、本当に今すべきことは何なのかを追求してもらいたい。
    女性進出と美談ですましてほしくない。弱い立場の子供に目をむけ、本来の女性のしごととは何かを一旦立ち止まり考えてほしい。女性進出の陰で泣いている人もいるのを少しは考えてほしい。ポーズだけをとるのは、簡単で目につきやすいのはわかるが、もっと真剣に考えてもらいたい。

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  2. 追記させてもらいます。貴殿たちの行動は大手の企業だけに通じる話だ。
    中小企業で同じ事をしたならば、即座に退社においこめられる。もっと弱い立場にいるひとの事を考えてほしい。ゼネコンだけが少人数ではない。女性の進出は素晴らしい美談だ。しかし朝の3時に起きて働いている女性なども、いることをら理解してほしい。本当に真剣に考えているならば、笑ってはいられないし、そんな時間などなく働かせられている世の中に目をむけるべきである。所詮めぐまれた環境の女性のポーズでしかないと思う。
    また、先にこれからの世の中を担う子供たちに目をむけるべきではないか??
    このような意見がわからないのは、大手の甘い環境にいる一部の人だけだと痛感する。

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