2016年10月19日水曜日

【沼田、高松、大阪…】職人育成塾が各地で始動

 ◇廃校利用、地方創生にも貢献◇

 建設現場で活躍する職人を育成する動きが新たな広がりを見せている。4月に群馬県沼田市で「利根沼田テクノアカデミー」が、今月には高松市で「職人育成塾」が始動。国も、地方創生にもつながる動きとして制度を総動員して後押しする。こうした取り組みが全国に広がることが、将来を担う人材を集め、業界の活性化に寄与することになりそうだ。

 利根沼田テクノアカデミーは、沼田市を拠点とする建築板金のテクノアウターが取り組んできた人材育成事業を発展させたものだ。4月に板金、瓦の2コースが開講した。両職種に入職したばかりの若者ら24人が第1期生で、寝食を共にする3カ月の訓練を経て、6月末に無事修了した。今後は、大工や設備工事にも対象職種を広げる計画だ。

 地域の業界挙げた活動であり、運営母体には、群馬県建設業協会の青柳剛会長が役員として参画している。地元も「衣食住の住を担う建設職人の技能伝承は重要」(横山公一沼田市長)として、積極的に後押し。廃校になった学校の校舎を有効活用しており、「建設職人のまち」づくりを通じて地域活性化も図っていく。

 高松市の職人育成塾は、内装異業種10社による一般社団法人が運営している。建設業振興基金が厚生労働省から受託している「建設労働者緊急育成支援事業」を活用し、開校時には1期生の男女22人向けに無料研修を実施。地域の建設会社などへの就職も支援する。

 代表理事を務める岡村真史新日本建工社長は、職人育成塾のネーミングについて「職人をブランド化したかった」と強調。「職人育成の動きが全国から出てきて連携していきたい」とも話し、持続可能なビジネスモデルの構築に意欲を示す。

 こうした取り組みに加え、個々の企業レベルでの職人育成の動きも新たな展開を見せている。

 大阪市を拠点とする建築塗装の竹延とグループ会社のKMユナイテッドは先月末、社有地に育成拠点を開設した。ベテラン職人が指導役となり、塗装の技能を高める施設となる。今後の参入を見据え、左官や防水、耐火被覆など周辺職種の技能習得を図り、多能工化にもつなげたい考えだ。

 北九州市で建築事業会社ゼムケンサービスを営む籠田淳子代表取締役は、建設業での女性活躍を一段と推し進めようと、女性技術者・技能者を育成する学校の設立を計画している。

 石井啓一国土交通相は今月1日に富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)を視察。研修施設の重要性を強調し、全国レベルの動きの中で「センターに中核的な役割を担ってもらいたい」と語り、国土交通省として引き続き支援する意向を示した。中央と地方の活動の相乗効果で、職人育成に向けた取り組みが広がることが期待されている。

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