2016年10月31日月曜日

【建設業の心温まる物語】上野修氏 (神田エンジニアリング・新潟県)/大河ドラマ「坂の上の雲」での出会い

 三年程前、NHKの大河ドラマ「坂の上の雲」の舞台セット戦艦三笠を地上に1/1スケールS造5階建てで作る工事の現場監督として従事しました。全国から土工、とび、造形の専門工、戦艦ならではの金物職人、艦板デッキを張る大工が延べ3000名携わり、約1年半かけた工事でした。鉄骨工事が完了し、戦艦特有のマストの工事で東京から来た特殊で巨大な物を吊(つ)り上げるときのことです。

 私が指示を職長へまず伝え、職長がその下の各部署持場のとびへ伝えるルールでした。ある日、とてもやる気のある若いとびBさんが「上野さん、何かやることありませんか?」と尋ねてきたので「〇○○してもらえるととても助かるよ」と伝えました。すると「了解! すぐやっておきます!」と、現場へ向かっていきました。

 その30分後、職長であるとびのリーダーAさんが「監督さん! 勝手な指示してもらったらこまる」と、すごい形相でおしかけて来ました。私は「しまった」と思いながらも「若いとびさんのやる気、そして現場での向上心あふれる取り組みに感銘して、つい直接指示を出してしまったんです。」とAさんに伝えました。

 すると「上野さん、すまん!Bの気持ちに応えてくれたんやな!」といい、続いて現場にいる大勢のとびの部下に対して「今日から、上野さんの指示に従わなかったやつは、オレが容赦せんぞ!」と言ってくれたのです。私はうれしさと反省が入り交じった気持ちでした。

 命を張って働いている現場では、職長や職人とのなれ合いの関係があると大きな問題になりかねません。「互いに決めたルールを守る」という信頼関係があって成り立っているのだと改めて感じたできごとでした。


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