2016年10月31日月曜日

【建設業の心温まる物語】浜野雅司氏(常陽建設・茨城県)/「バカヤロー」と「よかったな」

 私が中学生の時です。私の実家近くに川があり、橋を渡るため学校と逆方向へ向かって大回りして通学していました。もう1本橋があれば学校までが近くていいのになぁと思っていました。

 その1年後、川で工事が始まりました。帰り道に近くに行ってみるとどうも橋を造っているようです。ある日、作業をしていなかったので、近道をしようとゲートを潜り抜け工事現場の中を自転車で通りました。すると地面がやわらかいのです。通った跡を見てみるとタイヤの跡がくっきり。コンクリートがまだ固まらない時に通ってしまったのです。すると奥で休憩していたこわそうな作業員の方が出てきて、「何してんだ。バカヤロー!!」。私は急いで逃げました。

 それから数か月間、工事を行っていましたが、近づいたらまた怒られると思い近づかないようにしていました。

 しばらくして工事が終わりました。その橋を渡っているとあの「バカヤロー」の作業員の方がたまたま現場にいて、ばったりと会ってしまいました。「おー、あの時の小僧かあ」っと話しかけてきたので、とっさに逃げようとすると、「ちょっと待て。工事は終わったから通っていいんだぞ。無事できたので俺はうれしいんだよ。小僧は橋がかかり学校が近くなったんじゃないか? よかったな」とやさしく言ってくれました。私は「建設業で働く人は実はすごく優しいんだな」と心の中で思いながら「橋を造ってくれてありがとう」って言いました。

 あの出来事は物を造ることの厳しさとやりがいに気づかせてくれました。今では、橋梁工事を行うと必ず「バカヤロー」と「よかったな」の声を思い出します。

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