2017年2月7日火曜日

【安全性向上へ整備推進】鉄道各社、ホームドア設置急ぐ

鉄道駅の安全性向上に向けた取り組みとして、鉄道各社がホーム柵の導入に注力している。

 JRは東日本が昨年末、乗降客10万人以上の駅などを中心に、2020年度末までに58駅で整備を終える計画を公表。西日本は大阪駅など乗降10万人以上の14駅を対象に優先個所を選定して整備すると共に、京都駅と三ノ宮駅で「昇降式ホーム柵」を設置する方針を明らかにした。

 大手私鉄では東京メトロが銀座、東西、半蔵門の3路線でホーム柵設置の工程を前倒すと同時に、東西線6駅と、半蔵門線7駅で2019年度末までに工事を終える。首都圏の京王電鉄や西武鉄道、東武鉄道、京浜急行電鉄、関西圏の近畿日本鉄道や阪急電鉄なども計画の前倒しや整備完了時期の明確化など、取り組み方針を相次ぎ公表している。

 ◇計画前倒しで整備急ぐ◇

 国土交通省は東京や大阪の鉄道駅で昨年、視覚障害者の転落死亡事故が相次いだ事態などを受け、ホームの安全性向上のための検討会を設置。昨年末に整備方針の中間取りまとめと新型ホームドア導入検討手引を策定した。今年に入ってJR6社、大手民鉄16社、公営地下鉄5社が参加する「新型ホームドア技術ワーキンググループ」も立ち上げた。

 1日の乗降客が10万人を超える鉄道駅でホーム柵を優先的に整備するという国交省の方針に沿い、鉄道各社は従来工程の前倒しや計画の練り直しといった取り組みを加速している。

京浜東北・根岸両線のホームドア整備状況
JR東日本は東京の大動脈である山手、京浜東北・根岸両線で整備を推進する。山手線は駅改良中の新宿・渋谷駅を除く駅で2020年度までに設置工事を完了させ、京浜東北・根岸線も大宮~桜木町間37駅で、全駅へのホームドア導入を急ぐ。東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムになる新国立競技場の最寄り駅となる総武快速線千駄ヶ谷、信濃町両駅なども整備を推進する。

 JR西日本は可動式と昇降式の2種類を使い分け、整備を推し進める。今年春には大阪駅と京橋駅で可動式ホーム柵の使用を開始。京都、三ノ宮両駅への昇降式ホーム柵の導入以外にも、ホームからの転落事故や列車との接触事故が多い駅として、西明石駅での整備を検討している。
JR九州が開発している軽量型ホームドアのイメージ
JR九州はホームの補強工事が最小限に抑えられ、工期も短くなる「軽量型ホームドア」の開発を進めており、今年秋以降に筑肥線九大学研都市駅で実用化に向けた試験に入る。

 ◇五輪見据えターミナル駅に重点◇

 大手民鉄の取り組み状況を見ると、東京では京急が2020年度までに京急蒲田、京急川崎、横浜、上大岡、羽田空港国内線ターミナルの5駅にホーム柵を設置する。京王電鉄はすでに着手している新線新宿駅と渋谷駅に加え、下北沢駅と明大前駅にホームドアを整備する。東武はスカイツリーライン(伊勢崎線)の押上駅や北千住駅(5~7番ホーム)、東上線の池袋駅や志木駅など8駅で2020年度末までに整備を終える。2021年度以降もスカイツリーラインと東上線、アーバンパークライン(野田線)の3路線で23駅を対象に整備を行う。西武は池袋駅のホームドア整備を2017年内に完了させるほか、練馬や高田馬場など5駅を対象に2020年度までに整備を終える計画だ。

大阪阿部野橋に設置する昇降式ホーム柵のイメージ
関西では近鉄が大阪阿部野橋駅の一部ホームに昇降式ホーム柵を設置する。17年度に試験設置して検証を行った上で、18年度中の本設置を目指す。複数のワイヤーロープを水平に張った柵を上下に動かすタイプの柵で、車両扉の配置や枚数に関係なく、使用できる特徴がある。阪急は十三駅の3・4・5番線ホームに、2019年春頃までに可動式ホーム柵を設置する。

地下鉄の取り組み状況を見ると、東京メトロは3路線の設置計画を昨年11月に見直し、銀座線は2018年上期、東西線と半蔵門線の優先駅は2019年度末までに工事を終える。

 日比谷線と千代田線も設置完了時期の前倒しを検討している。計画の前倒しによって、2015年度末に47%だった東京メトロのホームドア設置率は2020年夏に74%、2022年度末に87%になる見通し。

 東京都が運営する都営地下鉄は2019年度中に新宿線の全駅で整備を終え、浅草線は2020年までに泉岳寺駅と大門駅で整備を計画している。

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