近所の食肉店が店頭で小売りしている焼き鳥がおいしく、どこかの地鶏だろうと思って店主に産地を聞くと、やんわりと否定された▼各地に地域ブランドの鶏がいる。うま味に優れ、脂肪が少なく、淡白で美味とは秋田の比内地鶏の売り文句。原種は国の天然記念物で料理には使えないため、比内地鶏の名で売られているのは他種と交配した一代雑種を固定化した鶏という。それでも貴重で値段も高い▼冒頭の店の焼き鳥はブロイラー。ブロイラーは品種ではなく、短期出荷のために改良された肉用若鶏の総称だそうだ。密閉した鶏舎で大量に飼われている映像が流布し、美味とはかけ離れたイメージを持つ人も多かろうが、食肉としてはうま味もあってコストも安い▼鶏肉は、生の状態で適正に温度を管理して料理するとおいしいそう。ところが今は冷凍肉を使う店が多く、解凍の不手際と相まってブロイラーも味の評価を落としたようだ。どんなに優れた素材でも、最適な形で使われなければ本来の効果を十分には発揮できないということだろう▼行き着く先は、使い方と使う人の技量。あらゆる分野に当てはまることである。
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