◇皆が豊かになれる空間づくりを◇
「何かモノを形にしていく仕事がしたい」。幼い頃からそんな思いを抱き、地元の熊本大学工学部社会環境工学科に進学した。「土木を選んだのは自然豊かな熊本で育ったこと、都市空間に興味があったからです。ただ、大学・大学院時代は何かをつくれるように早くなりたいと焦っていました」。
学校の長期休暇期間中はためたアルバイト代で東京都内の格安シェアハウスに滞在し、設計事務所のオープンデスクなどに積極的に参加。デザインコンペなどにも応募した。大学院修了後、設計事務所に就職したが、体調を崩し退社した。
「もう建設業から離れようかとも思いました。でもここで諦めたら一生後悔すると思い、建設業に再挑戦しようと思いました」。それで、どうせ再挑戦するのなら「建設業の最前線である現場に行こう」と決心した。
2年前に今の会社に入社。研修を受け、昨年10月から愛知県内の大規模な土地造成工事の現場に従事している。「この現場は土地造成だけでなく、橋梁やトンネル、貯水池など各種の工種があり、勉強になります。学生時代にダムや護岸などの模型を作りましたが、この現場ではそれを実物大で造り上げている。一つずつの工程を経て、出来上がっていく過程に自分が参加できているのはとても楽しい」。
現場での担当はのり面保護工。のり面に関係する施工管理や施工計画書、設計変更のための図面作製などを行う。「毎日いろいろな発見があります。例えば土地や構造物はまるで生き物のようだと感じました。施工者がいろいろと考えて土地や構造物に働き掛けることで、土地が適した形に変化し、構造物も安全に出来上がっていく。環境に配慮して施工すれば調整池に水鳥が暮らし、夏には蛍が飛びます」。
高校時代は空手選手でインターハイに出場した経験があり体力には自信があったが、現場では男性社員との体力差を感じることもある。「夏の現場は暑さなどで厳しい時もありますが、仕事と生活のバランスをきちんと管理しようと心掛けています」。料理をするのが趣味で、三食自炊をして体調管理を行っている。
将来の夢を聞くと「土木・建築の垣根を越えた視野を持ち、周囲の環境も人々も、皆が豊かになれる空間づくりのプロになりたいです」。さらに「建設業の仕事の面白さを多くの人に伝えることができたらいいな」とも。
(豊田中工区作業所、まえだ・あきこ)
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