21世紀も20年近くが過ぎようとする時代にこんな言葉がにわかに注目を集めるのはちょっと意外な感じがする。「エンゲル係数」。最近、日本ではこの数値が上昇傾向にあるとの報道をメディアでしばしば目にする▼家計の消費支出に占める食費の割合を百分率で表し、数値が大きいほど生活水準が低いことを示す-と何十年も前に学校で習った記憶がある。言葉にどことなく「昭和の香り」が漂うのは、戦後の経済成長がエンゲル係数を下げる営みでもあったからだろう▼総務省の統計では、前回の東京五輪があった1964年のエンゲル係数は40%近かった。90年代後半からはほぼ20%台前半で推移してきたが、ここへ来て25%を超すことが多くなっているという▼先月末に発表された16年12月の家計調査では27・5%である。外食や割高な総菜を使う「中食」が増えたことなどが上昇の要因との指摘もあるがどうだろう。所得が伸びないのに食品が値上がりしているからというのが大方の庶民の実感ではないか▼兆単位のお金をつぎ込んでまたオリンピックをやろうという国で、「食べるだけで精いっぱい」はいただけない。
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