インバウンド(訪日外国人旅行者)の増加などを追い風に、JR2社がホテル事業で攻勢を掛けている。 JR東日本は、東京五輪が開催される2020年をめどにグループで運営するホテルの客室数を現在の約6300室から1万室に増やす。JR西日本は2日、JR京都駅南側・八条口で2ブランド約延べ900室を確保するホテル開発計画を発表した。
JR東日本が進めるアグジュアリーホテルが入る 竹芝ウォーターフロント開発計画の完成イメージ |
JR東日本のホテル事業は、現時点の公表ベースのホテル開発計画5件で7000室程度に増える見通し。目標への残り3000室の整備に向け、十数件の事業を具体化していく。従来の首都圏の自社用地での開発を主軸としつつ、今後は東日本エリアに限定せず、全国規模で事業化の検討を進める。
JR東日本グループが展開する直営ホテルは100年の歴史を持つ東京ステーションホテルのほか、シティーホテル系の「メトロポリタンホテルズ」、宿泊特化型の「ホテルメッツ」、レジャー・リゾート系の「ファミリーオ・フォルクローロ」など。稼働中の直営施設は43ホテル(6293室)となる。
15年3月に岩手県釜石市内に開業した「ホテルフォルクローロ三陸釜石」以降、この2年ほどは新規開業する直営ホテルはなかったが、17年度には▽ホテルメトロポリタン仙台イースト=客室数282室(開業予定6月19日)▽ホテルメトロポリタンさいたま新都心=157室(6月中旬)▽JR船橋駅南口駅ビル(仮称)=未定(ホテルメッツ、17年度末)▽ホテルドリームゲート舞浜別館(仮称)=80室(17年度冬)-の4施設が開業する。
東京都港区内の社有地で計画している複合開発事業「竹芝ウォーターフロント開発計画」では、高層棟の上層階に同社初のラグジュアリーホテルを本格導入する。現在、インターナショナルブランドとの提携に向けて複数社と協議中。客室数は未定だが、「都心部に展開している他のラグジュアリーホテルと同程度の200~300室の規模が一つの目安になる」(担当者)としている。
これまでのホテル関連の開発事業では東日本エリア内の自社用地に建物を建設し、グループの中で事業を完結する形で展開してきた。今後は他社の事業用地を借りたり、他社が整備した建物にリースで入るなど、開発手法の多様化も図りながら事業拡大を進める方針。未進出の東日本エリア以外の地域でも事業化に向けた検討に入った。
今後、20年をめどに新規開発する計画未公表分の約3000室については、ホテルメッツのような1物件当たり200室前後のコンパクト型が中心になる見通し。建物規模はコンパクトでも1部屋当たりのスペースを広げたり、よりグレードを高くしたりするなど、品質とサービス向上に力を入れる。
既存施設の改装にも重点的に取り組む。地域密着でエリアごとの特徴をデザインやサービスに取り入れ、差別化を図る。
JR西日本が計画する新ホテルの完成イメージ |
◇新ホテルは京都駅直近の好立地◇
JR西日本は2日、グループ会社のJR西日本ホテル開発とJR西日本デイリーサービスネット、JR西日本ヴィアインが、JR京都駅南側・八条口で2ブランド約延べ900室のホテル開発に取り組むと発表した。敷地東側にはハイクラスの宿泊特化型新規ブランドホテルを、西側には既存の「ヴィアイン」ブランドのホテルを計画。土地所有者の松原興産(京都市伏見区)からホテル建築物を賃借する。設計は東急設計コンサルタント、施工者は未定。18年当初に着工し、19年春ごろの開業を目指す。
建設場所は南区東九条上殿田町42。東側敷地の面積は3148平方メートルで西側は2800平方メートル。東側の新規ブランドホテルの規模は9階建て延べ約1万7500平方メートル(約430室)で、ヴィアインは10階建て延べ約1万4000平方メートル(約470室)。2棟の総投資額は100億円を超える見通しだ。
JR西日本は宿泊特化型ホテルの新規開発や外部企業からのホテル事業取得などを積極的に進めている。宿泊特化型ホテル事業は「ヴィアイン」のブランド名で展開。4月に大阪市の天王寺エリアに新ホテルを開業するほか、東京と名古屋、大阪の3大都市に新規出店し、18年までに新規開業を予定している。この計画が実現すると東京は6店舗、名古屋は2店舗、大阪は7店舗の体制となり、チェーン全体の客室数は5000室を超える。
さらにキャビンスタイルの宿泊事業を展開するファーストキャビン(東京都千代田区、来海忠男社長)と合弁会社・JR西日本ファーストキャビンを設立。コンパクトホテルの開発を両社が協力して進め、17年内に1号店を開業する計画を立てている。
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