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合同企業説明会に参加する就活生 |
学生が就職活動を行う範囲が広がっている。地方の大学に通う学生が首都圏で就活をしたり、首都圏の学生がUターンなどで地方の就職先を探したりするのは、交通費が重い負担になるが、遠方で就活をする学生に交通費を支援する大学や航空会社が現れ始めた。遠方の地域にある企業が、学生にとっては就職先として新たな選択肢となり、企業側にとっても採用選考する人材を多様化できるメリットがある。建設業界の人材確保にも影響が出てきそうだ。
◇学生の就活範囲、拡大傾向◇
16年春の新卒採用に向けた企業による就職説明会が解禁された今年3月。東京都港区にあるホテルのホールには、リクルートスーツに身を包んだ50人ほどの学生が集まっていた。彼らは広島工業大学の建築工学科の3年生。東京で開かれる大規模な合同企業説明会に参加するため、団体で東京を訪れた「東京フライト」の一行だ。
広島工業大では毎年、東京で開かれる就職説明会に建設系学科の学生がまとまって参加する東京フライトを実施している。交通費や旅費の一部を大学が負担。就職説明会の後には、宿泊するホテルでゼネコンなどの建設業界で働く卒業生を交えた懇親会があり、学生には人気のイベントになっているという。
学生が東京フライトに参加する動機はさまざま。「ランドマークになるような建築物に携わりたいので、必然的に東京や大阪に本社がある大手ゼネコンを目指している」という大手志向の学生もいれば、「広島には企業が少ないので、東京で開かれる大規模な合同説明会でいろんな企業の話を聞きたい」という学生もいる。
◇地方大学、首都圏説明会に交通費◇
地方の大学から、本社を東京や大阪などに置く大手企業への就職を目指す学生は少なくない。学生が首都圏で開かれる合同就職説明会に参加するために交通費などを支援する取り組みは、広島工業大のほかにも複数の地方大学で行われている。
こうした支援の取り組みには、学生の負担を軽減することに加えて、就活意欲を高めてもらいたいという大学側の狙いもある。地方大学の学生は「首都圏の学生と比べて就活に動きだすのが遅い傾向がある」(地方中堅ゼネコン採用担当)ともいわれる。首都圏の就活生と一緒に説明会に参加させることで、地方学生の就活意欲に火をつけたいというわけだ。
就活生の交通費負担を減らそうと、支援を行っているのは大学だけではない。札幌市に本社を置く航空会社のエア・ドゥは、就活生向けに独自の割引運賃を設定している。14年に始めたのが、北海道内の就活生を対象とした「就活支援割引運賃」。割り引くのは、東京(羽田)~札幌(新千歳)間など8路線で、東京~札幌間の運賃は、通常運賃のほぼ半額となる1万2000円。区間によっては、最大で69%と7割近い割引になる路線もある。
就活生の支援を目的に運賃割引を行うのは、全国の航空会社の中でも同社が初めてだ。運賃割引は、大学が申請手続きを取れば、学生の利用が可能。14年は、就職説明会が集中する2~3月に割引を行った。
同社の営業担当者によると、割引運賃は好評で、学生からは継続を希望する声が上がっているという。道内のある工業大学の就職課の担当者は「道内には理系学生が専門知識を生かせる就職口が少なく、道外での就職を望む学生は多い。運賃割引は学生の負担軽減になる」と歓迎する。
◇航空会社、両方向で割引運賃設定◇
エア・ドゥでは、地方学生の首都圏での就活を支援すると同時に、首都圏などから地方に戻って就職先を探すUターン就職も支援しようと、15年度は割引運賃の対象を道外の就航地にある学校にまで拡大した。15年度の申請学校数は、道外が39校、道内が51校。割引運賃の適用期間を4月1日~6月30日とし、約7800席の利用実績があったという。
Uターン就職に対する支援は北海道と連携した取り組みだ。人材を道外からも積極的に呼び込み、定住を促進することで道内の活性化を狙う。エア・ドゥの担当者は「交通費の負担が重いことを理由に道内への就職を視野に入れていなかった学生にとって、運賃割引は就活の視野を広げるきっかけになったのでは」と見る。
徳島県では、新たな入札契約制度でUターン就職を促す。17年度からの入札参加資格の格付けでは、Uターン就職など、県外の学校を卒業した人を社員として採用した建設会社を加算評価する予定だ。こうした取り組みと併せて県は、地元企業へのUターン就職を支援する目的で、首都圏で県主催による県内企業の合同企業説明会などを開催している。