「ぜひ、ご一読いただきたい」。太田昭宏前国土交通相が9月上旬、日本経団連の榊原定征会長にそう呼び掛けた。手にしていたのは国交省職員の精鋭が執筆した『インフラ・ストック効果』(中央公論新社刊)。民間投資を喚起するインフラの効果を重視した公共投資によって、経済成長を支えるというのが同書の主張だ◆予算要求官庁である国交省が「財政健全化と経済再生の両立を目指すと訴えるのは初めて」(徳山日出男事務次官)。政府の経済財政諮問会議で榊原会長もこの考え方に同調する発言をしたという◆この動きに反応したのか、ある経済官庁がストック効果に違和感を示しているという話を耳にした。経済成長に関する省庁横断の会議の文書から、「ストック効果」の文言が削られたという◆ちょうど1年前、経財諮問会議である民間議員が、公共投資の増加が労働者不足を発生させ、民間投資を圧迫するという「クラウディングアウト」論を展開し、公共投資の抑制を求めた記憶がよみがえる。同論は国交省だけではなく財務省も否定したが、年末の予算編成に向けてまた火花が散る場面もありそうだ。(ち)
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