キンチョウスタジアム長居の改修イメージ。壁面緑化や再生可能エネルギー の利用など「エコ」を前面に押し出す計画を立案する (ⓒCEREZO OSAKA SPORTS CLUB) |
球技専用スタジアムを整備し維持管理する事業で新たな動きが出始めている。サッカーJリーグで大阪に拠点を置く2チームが、建設した施設を地元自治体に寄付した上で、指定管理者として維持管理にも積極的に関与するビジネスモデルを具体化。ホームスタジアム整備のあり方で新たな道を開拓しようとしている。設計事務所やゼネコンにとっても、こうした動きは新たなビジネスモデルの構築につながる可能性がある。
ガンバ大阪の新しいホームスタジアムは、9月30日に竣工し、大阪府吹田市に引き渡された。建設主体はスタジアム建設募金団体。施工は竹中工務店が担当した。セレッソ大阪は同日、現在の本拠地・キンチョウスタジアム(大阪市東住吉区)を段階的に改修し、収容人数を4万人規模にする「セレッソの森スタジアム構想」計画を発表した。
両チームのスタジアム整備で隠れたポイントになっているのが、工事を終えた施設を自治体に寄付した上で、チームの運営母体が指定管理者としてスタジアムを運営・管理する点だ。
市立推移田サッカースタジアムは10月10日に竣工式が行われた (ⓒスタジアム建設募金団体) |
吹田サッカースタジアムは10月10日に竣工イベントが開かれた |
キンチョウスタジアム長居の改修イメージ(鳥瞰図)。2019シーズンの完成を目指すという (ⓒCEREZO OSAKA SPORTS CLUB) |
建設費は50億円と見積もり、この費用に充てる寄付を募る。改修完了後は、増築した施設を大阪市に寄付することを提案し、さらに指定管理者としてスタジアムの維持管理を行うことも標榜する。施設の寄付と指定管理者を組み合わせた点は、ガンバのケースとよく似ている。
チームの母体であるセレッソ大阪スポーツクラブは、大阪スポーツ緑財団やNTTファシリティーズなどと「長居公園スポーツの森プロジェクトグループ」を組織。16年4月から5年間、長居公園や長居陸上競技場、地下駐車場などの管理を行うことが決まっている。セレッソは、この枠組みに改修後のスタジアムを組み込むことを想定。指定管理者になることで施設の運営、維持管理に主体的に関わることが可能になるという構図を描く。現在のキンチョウスタジアムは土地、建物ともに大阪市が所有しているため、固定資産税の負担などはない。ただ公有物を民間が増築し完成後に寄付することは、全国的に見ても事例が少ないとみられる。
◇行政、企業、市民のコラボが不可欠◇
2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場の建設問題でも取り上げられたように、スタジアムは整備だけでなく完成後の維持管理にも決して少なくない費用が掛かる。その額は、スタジアムの規模によって異なるが、球技専用スタジアムの場合、県立鹿島サッカースタジアムで2億8000万円、埼玉スタジアム2002で7億円前後といわれる。施設利用料以外にネーミングライツやテナント使用料などで収入増を図っているところもあるが、施設単体の収支は多くが赤字なのが実情だ。
財政基盤の厳しいJリーグのチームが自らスタジアムを所有し、維持管理していくのは困難だ。ガンバやセレッソの取り組みは専用スタジアムの整備を目指す上で、大きな試金石と言え、スタジアムの設計や建設、維持管理に関わる建設業界のビジネスチャンスも広がる可能性がある。
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