2015年12月18日金曜日

【日本初の試み】河川構造物で実大健全性評価実験

 流域水管理研究所(代表理事・虫明功臣東大名誉教授)が設置した「これからの河川管理システム検討会」は、河川構造物の健全性評価に固有振動数を適用することの可否を調べる実験を、11~12日に神奈川県寒川町で行った。

 鉄道橋では固有振動数を使った健全性評価が一般的に行われており、河川構造物への適用を目指す。実験では、実構造物のコンクリートや鉄筋などの部材を意図的に損傷・劣化させた上で衝撃を与え、固有周期が変化することを確認した。河川構造物では初めての試みという。

 実験はパシフィックコンサルタンツ、日本工営、ニュージェックの3社と共同で行い、河川堤防の改修工事の一環として改築される「寒川第二樋管」で実施した。

 寒川第二樋管は1961年の竣工。11月に仮締め切り工が始まっており、発注者の国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所、施工を担当するエス・ケイ・ディの協力を得て、撤去直前の2日間で実験を行った。

 実験では、30キログラムの重りを使って、高さ約9メートルの門柱の上端、中間、下端の3カ所にそれぞれ10回ずつ打撃を与えた。劣化による健全性を評価するため、コンクリートをブレーカーではつったほか、9本入っている鉄筋を切断するなど、人為的な損傷を加えた上でも打撃を与え、振動数やひずみを計測。固有周期が変化することを確認した。

 ひび割れが生じるなど劣化・損傷していれば、固有周期は長くなる。構造物の固有周期、ひずみを測り、建設直後(初期値)と比較することで、劣化の有無を把握できる。5~10年など定期的に固有周期を測って建設直後の初期値と比較すれば、劣化状態の把握が容易にでき、補修のタイミングが適切に判断できるとみている。

 JRや民鉄など鉄道会社では、管理する橋脚の管理に活用しており、地震直後の健全性評価でも実施している。道路橋の一部にも採用事例があるが、水門や堰、樋門といった河川構造物では使われていない。

 コンクリート構造物の健全性の評価は、非破壊による検査や打音検査などの方法で行われるのが一般的だ。本格的な人口減少社会を迎え、ベテラン技術者が減少する中、点検担当者の技量に左右されない定量的な評価手法の確立が喫緊の課題となっている。

 同検討会では、ICT(情報通信技術)を活用した全体最適の河川マネジメントの確立を目指しており、建設コンサルタントと共にこうした課題の解決策を検討中だ。同検討会には、今回の実験を共同で行った3社のほかに、建設技術研究所、東京建設コンサルタント、八千代エンジニヤリング、アジア航測が参加している。

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