野村総合研究所が、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士と共同で、将来、人工知能(AI)やロボットに代替できる職業の確率を試算した。労働政策研究・研修機構がまとめている「職務構造に関する研究」で対象にしている国内601職種。試算結果によると、10~20年後、日本の労働人口の約半分、49%が従事している職業で、AIやロボットの代替が可能だとした。
代替可能性が高い職業100職種のうち、建設産業に関連するのはCADオペレーター、サッシ工、セメント生産オペレーター、測量士、ビル施設管理技術者など。野村総研は、「特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業は、代替可能性が高い傾向が確認できた」としている。
代替が難しいとした職業は、抽象的な概念を整理・創出する知識が必要な職業、サービス志向が強い職業、他者との強調・調和が必要な職業などを列挙。具体例として映画監督や経営コンサルタント、歯科医師、俳優、報道カメラマン、ライター、学芸員などを挙げた。
情報通信技術(ICT)やAI、センサーや自動制御、プログラミングといった技術がどれだけ進化するかによって、試算結果は変化する。新聞業界で言えば、代替が難しい職業に挙がったライターも、米国では、企業の決算情報を自動的に記事化するロボットが実用段階にあり、編集記者もうかうかしていられる状況でなくなっている
今回の試算は、「従事する一人の業務すべてを高確率(66%以上)でコンピューターが代替遂行できる」ことを条件に、各職種の就業人数を推計して就業者全体に占める割合を算出している。あくまで〝技術的〟に代替できるかどうかがベースになっており、社会環境要因は考慮に入れていない。
少子高齢化の進展に伴い、労働力人口の減少が顕在化している日本。建設業界でも人材の確保と育成、業務の効率化やロボット技術の導入は、産業の行く末を左右する大きな課題になっている。
将来、AIやロボットが活躍する場面は増えるだろうが、だからといって長い年月を掛けて培った技術や技能、知識が不要になることはない。ロボットが黙々とビルや道路を造る様子を見てみたい気もするが、きっとそれらの建物や構造物は、味気なく冷たい、ただの「モノ」なのだろうと、思えてならない。
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