2015年12月4日金曜日

【回転窓】神業を受け継ぐ

なじみのそば屋が、天ぷらの揚げ温度を一定に保つ設備を導入したが、客の評判が芳しくないとこぼしていた。ベテラン職人が辞めたために仕方なく機械を入れたそうだが、食感や味の微妙な変化を指摘する常連客が後を絶たないという▼大勢の客が押し掛ける時間帯が特に問題。ころもを付けた大量の天ぷらのたねを次々に投入するため、揚げ油の温度が一気に下がってしまう。機械では揚げむらができてしまうらしい▼季節やその日の天候、気温などに応じて油温を管理し、揚げ方を微妙に変えるのがベテラン職人の腕の見せ所である。やはり機械にはまねができないのだろう▼こうしたプロの技を持つ技能者は建設分野にも多い。トンネルや橋の点検、地下の水道管の漏水検査などだ。目視と打音でコンクリートの変状を見極め、見えない水の流れを聴診器で判別する技術は神業に近い▼担い手不足が深刻化する中、人に頼らない点検・検査技術の開発も進むが、機械偏重に陥ることには危険もあろう。山梨県の中央道笹子トンネル天井板落下事故から3年。神業を受け継ぐ人の育成にも、もっと力を入れたい。

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