食卓から季節感が薄れたと言われて久しいが、スーパーマーケットの果物売り場はまだまだ季節の移り変わりをよく映していると思う。この間までぶどうや梨が並んでいたスペースの主役は、今は柿とみかん。晩秋を飾る鮮やかな色彩である▼ある世代以上の人にとっては、柿はスーパーで買うより庭の木からもいで食べるものというイメージが強いのではないか。売り場に並ぶ柿は「富有柿」「おけさ柿」「次郎柿」と名前も形・大きさもさまざま。干し柿専用の渋柿も売っており、これほど種類があったのかと思わされる▼もっとも、農林水産省の統計では、国内の柿の出荷量はここ数十年の間、大きくは変わっていないので、「もいで食う」はあくまでもイメージに過ぎないのかもしれない▼斎藤茂吉の歌集「赤光」に〈霜ふりて一もと立てる柿の木の柿はあはれに黒ずみにけり〉という歌がある。霜が降り、一本だけある木の柿もしなびて色が黒ずんでしまう。ちょうど今ごろの情景だろうか▼きょうから師走。果物売り場の主役が、柿からクリスマス用のイチゴに交代すれば、間もなく一年も終わりである。
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