南アルプトンネルのの施工位置図 |
JR東海が進めるリニア中央 新幹線の建設プロジェクト。本線整備では最大の難所とみられる南アルプストンネル(延長約25キロ)の建設工事が始まる。同トンネルの初弾工事の山梨工区(施工延長約7・7キロ)が12月に着工する予定だ。標高3000メートル級の山岳地帯を貫くトンネル工事は、土かぶりが1000メートルを超える部分もあり、高度な施工・管理技術が不可欠。安全や環境面での対策に加え、地域産業である観光分野への影響にも最大限の配慮が求められる。(編集部・遠藤奨吾)
事前調査で試掘が行われた早川非常口㊤と広河原非常口の建設予定地㊦ |
リニア中央新幹線は、東京~名古屋間(延長286キロ)を最速40分で結ぶ。2027年の開業を目指し、昨年12月に東京・品川と名古屋側のターミナル駅の準備工事に着手した。
山梨県内の実験線区間を除いた本線の建設工事は、南アルプストンネルの工事が先行して進められる。初弾発注となった山梨工区は大成建設・佐藤工業・錢高組JVが施工を担当。10月27日に山梨県早川町で地元向けの工事説明会が開かれ、年内にも準備工事に着手する。
説明会後の記者会見でJR東海の奥田純三中央新幹線建設部土木工事部担当部長は「さまざまな機会を設け、丁寧に説明しながら工事への理解を深めてもらう。準備が整い次第、工事に着手する」と表明。関係者の理解、協力を得ながら「工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して中央新幹線の早期実現に努める」と決意を示した。
南アルプストンネルは、山梨・静岡・長野の3県にまたがる山岳地帯に構築される。山梨工区は東側(東京側)区間に当たる。工事内容は、NATMによる本線トンネル(幅約13メートル)と、その他先進坑、非常口などの建設。早川町内の非常口2カ所(早川、広河原)から本線に向かう斜坑を掘り進め、本線トンネルの掘削に入る。
順調に進めば、12月に早川非常口の準備工に着手し、16年3月には斜坑の掘削に取り掛かる。広河原非常口の準備工には16年1月、斜坑掘削には同年8月ごろ着手。本線トンネルの掘削は16年秋ごろに始まる予定だ。
会見する奥田部長㊨と青山代理人 |
地域の主要な幹線道路は早川沿いを通る県道37号線だけ。ここを多くの工事車両が通過することに不安を抱く住民は少なくない。
説明会の資料によると、工事用車両の運行時間帯は午前7時30分~午後5時(日曜日は休工)。安全対策として、運転者への安全教育の徹底をはじめ、交通誘導員の適切な配置、待避場所での後続車の優先通行、要注意箇所への注意喚起用立て看板の設置などに取り組む。
工事説明会に出席した大成JVの青山繁夫現場代理人は「工事車両による観光業への影響を懸念する意見も出た。最大の運行台数を示したが、台数を徐々に増やしながら何か問題・影響が出たらその都度対応し、万全の体制で工事を進める」と強調した。
本線トンネルは、糸魚川・静岡構造線と中央構造線の間を貫き、最大土かぶりが1000メートルに達する区間では、地表からは十分な調査ができない。青山氏は「破砕帯と水への対応が問題になる。長尺の先進ボーリングなどによって、いきなり水が出たり岩盤が崩落したりするリスクの軽減を図る」と説明。「リニア関連の大規模トンネルの初弾工事に携われる誇りを持ちながら、工事で迷惑や不便を掛ける地元の意見・要望を真摯しんしに受け止め、JV3社の力をフルに発揮して無事完成させたい」と意気込みを語った。
リニア新幹線への夢を語る辻町長 |
日本一人口の少ない町、早川町でこれから進むリニア建設プロジェクトに対し、辻一幸町長は全面協力する姿勢を示す。
工事を進める上では、地域住民の安全・安心の確保と併せ、町の主要産業の一つである観光業への対応を重視。観光資源である豊かな自然環境への影響を抑えながら、地域とリニアの工事が共存・共栄できる関係を構築する必要性を訴える。
辻町長は「30年ほど前に町長になった時、地元の子どもたちが描いた町の将来に、高い山や深い谷の間に高速道路や新幹線が通る絵があった。中部横断自動車道の完成も近づき、いよいよリニア新幹線も動きだす。夢の実現に向け、町民全員がリニア建設の成功を祈っている」と期待を込める。
南アルプストンネルでは、山梨工区に続いて西側(名古屋側)の長野工区(施工延長約8・4キロ)の施工者を選定する手続きも進んでおり、15年度中にも決まる見通しだ。
《工事概要》
△件名=南アルプストンネル新設(山梨工区)
△建設地=山梨県早川町新倉(一部静岡県側含む)
△工事内容=本線トンネル7.7km、その他(先進坑、斜坑など)
△工期=2025年10月末まで
△施工者=大成建設・佐藤工業・錢高組JV
世界が注目するトンネルですね。
返信削除安全に工事が完成するのを 祈念します。