私は耐震補強工事を専門に行う会社で現場の施工管理の仕事をしています。これはある夏小学校の耐震工事現場を担当した際に経験した話です。
工事が始まった際はまだ学校も夏休みに入る前で、休み時間にはグラウンドで子供たちが元気に走り回っており、「何してるの?」と聞かれることもしばしばありました。中には「耐震補強工事をやってるんでしょ?」と問いかけてくる子どももいました。
前日に暴風を伴った強い雨が降った日の朝のことです。私はひとりの先生に声をかけられました。「午後からの時間で、子どもたちを連れて仮囲いの中に入り、花壇に生えたひまわりの花に添え木をさせてほしい」。確かに前日の雨風により、花壇の花たちはその多くが頭を垂れた状態となっていました。通常であれば仮囲いの中には危険で、第三者を入らせることはありません。しかし事情を聞いて私は所長との相談の上、その時間の作業場所を移し、仮囲いの中へ入ってもらうことにしました。
先生に聞くと、そのひまわりは、東日本大震災で崩壊してしまった小学校から送られたものであり、そのひまわりを通して子どもたちに命の尊さを伝えたいとのことでした。
私は、子どもたちのこの工事に対する関心が高い理由が分かった気がしました。地震の恐ろしさ、命の尊さを、ひまわりから学んでいたのです。
子どもたちの手によって添え木がなされたひまわりは、また元気に天に向かって顔を上げていました。そのひまわりと子どもたちの姿を見て、私自身も改めて命の尊さを学び、この工事をやり遂げ、この校舎を子どもたちの命を守ってくれる校舎へと生まれ変わらせるんだという責任感に燃えるきっかけとなりました。
降旗達生(ハタコンサルタント代表取締役)選
協力=全国土木施工管理技士連合会
NPO法人建設経営者倶楽部KKC
0 comments :
コメントを投稿