2016年6月20日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設執行役員技術研究所長・沼上清氏


 ◇「コト」づくりのための積極性を◇

 高校生の時から建築に興味があり、もともとは設計士になりたくて大学の建築学科に入りました。ですが、自分には実験や解析などの方が合っていると分かり、建築構造の研究室に所属します。指導教授の勧めで進学した早大大学院の研究室には、東急建設の社員が研修に来ていました。

 入社して配属されたのは技術研究所建築基礎研究室で、初年度から「Shell Foundation」(筒基礎)の研究開発に取り組みました。その成果は学術的には認められたのですが、建築基準法や行政指導の壁もあり、建築確認申請を必要とする建物基礎での実績を上げられず、研究開発を実務に結び付ける難しさを知りました。

 これに対し、技術コンペや載荷試験に基づく設計の実務は、取り組んだことの成果が会社の利益に直結する魅力的な業務でした。

 1997年に本社設計本部基礎エンジニアリング部の配属となります。初めての本社勤務であり、38歳の時でした。設計と施工のコンサルタントを両立させるために新設された部署です。会社が厳しい時代を迎えていたこともあり、より実務に役立つ仕事をしたいと志願しての異動でした。

 ここでは1日に数十件という技術相談の多さと、求められる解決のスピードの速さに驚いたものです。全国どこにでも行かなければならなかったのですが、地盤は地域や現場ごとにすべて異なり、大変に良い勉強になりました。

 杭の設計変更などに携わっていくうち、より地盤特性を生かした基礎の計画や地盤リスクを想定した施工が必要であることに気付きました。見積もりや工期にすぐ反映できるようなものをつくらなければいけないと考え、杭基礎の設計計算ソフトなどを独自に作成しました。忙しい日々でしたが、壁を壁とも感じない勢いのようなものがあったように思います。

 その後もいつの間にか建築の地盤・基礎分野で判断と責任を問われる立場になり、現場の工事主任や所長と一緒に苦労しながら大変に鍛えられました。

 若い人たちには、自分の専門性を確立し、社内で第一人者になるよう努力してほしいです。周りをよく見て、誰と連携すれば自分の専門性がより生かせるかを考えることも必要です。

 そしてある年齢になったら社外に目を向け、どの業界と建設業が連携していけば新しい価値が生まれるのかを考えなければいけません。これが「コト」づくりです。ですから、じっとしているのではなく、なるべく外に出て行動するよう期待しています。

 (ぬまかみ・きよし)1981年武蔵工大工学部建築学科卒、83年早大大学院修了、同年東急建設入社。技術本部建築エンジニアリング部基礎技術グループリーダー、技術研究所基盤技術開発部長、執行役員技術研究所長兼建築本部副本部長などを経て、15年現職。神奈川県出身、57歳。

筒基礎の研究開発に携わっていた当時の一枚
(左端が本人)


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