◇PCa化など現場工程短縮に知恵絞る◇
供用開始から半世紀が過ぎ、老朽化が激しい首都高速1号羽田線の東品川桟橋・鮫洲埋立部(東京都品川区)。
羽田空港方面と都心部を結び、2020年東京五輪開催時には重要な輸送路となることなどを踏まえ、首都高速道路会社は利用者の安全・安心を確保するための大規模更新工事に本格着手した。
事業全体の完了時期は26年度を見込むが、仮設の迂回(うかい)路などを活用し、五輪前には既存道路を使用せずに高速道路のネットワーク機能を確保する。限られた時間の中で施工者と協力・連携しながら現場の生産性向上に知恵を絞る。
◇実施設計・施工は大林組JV◇
1964年の東京五輪前に急ピッチで整備が進められた首都高速道路。62年12月に1号線京橋~芝浦間(延長約4・5キロ)が開通して以降、現在までに東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県に張り巡らされたネットワークの総延長は約311キロに達する。
このうち開通から50年以上が経過した構造物は全体の約10%を占め、10年後には約35%まで増大する見通し。63年に供用を開始した東品川桟橋・鮫洲埋立部(東品川2丁目~東大井1丁目、更新延長約1・9キロ)は京浜運河沿いに整備され、首都高全線の中でも構造物の損傷が特に激しい区間に挙げられる。1日の平均交通量が約7万台に上るなど、過酷な使用状況に加え、海水の影響を受けて桟橋部ではコンクリートの剥離や鉄筋の腐食など重大な損傷が多数発生している。
東京西局プロジェクト本部の林寛之本部長は「老朽化が進む東品川桟橋・鮫洲埋立部は運河の中に建設されているため、日ごろの点検や補修がかなり難しいこともあり、将来の安全・安心を確保する観点から構造物全体を造り直すことにした」と説明する。
羽田線と護岸に囲まれた工事用道路 |
現在進めている第1段階(17年夏~秋ごろまで)は、工事用道路と迂回(うかい)路の設置などを行う。併せて、大井ジャンクション(JCT)を造り替えるため、湾岸線東行きから羽田線上りに接続する区間を今月8日から19年9月末までの約40カ月の長期にわたって通行止めにする。
第2段階(20年五輪まで)では先に整備した迂回路に現在の上り線の交通を切り替えた後、上り線の更新道路の新設工事に入る。桟橋部は、現在は海面近くにある橋桁を最大約20メートル上空に高架構造として再整備する。
第3段階(23年半ばまで)では、完成した上り線の更新道路に下り線の交通を切り替え、暫定利用しながら下り線の架け替え工事を実施。第4段階(26年度まで)では上下線ともに更新道路での供用を開始後、迂回路の撤去工事を進める。
◇事業完了は2026年度◇
既存の構造物を再整備する際には、新設以上に難題も多い。
東京西局プロジェクト本部の高橋三雅更新事業部長は「京浜運河の中の工事となり、船を使って工事を進められれば効率が良いかもしれないが、護岸とモノレールが近く、浅瀬で大型の作業船が付けられないといった問題があった」と指摘する。こうした厳しい作業環境などを踏まえ、現場では工事用車両の進入路を東大井地区側に5本設置。運河内に作業構台や桟橋を整備するため、対岸側にも2本の進入路を設ける。
迂回路の構築に当たり、周辺道路の交通への影響を最小限に抑えるため、護岸と既設の羽田線の間に、工事車両用の仮設道路を整備する
施工に当たる大林組JVは現在、工事用の仮設道路と作業構台を整備中。通行止めにした大井JCTの造り替え区間では、桁など迂回路の支障となる構造物の撤去作業をこれから進める。
現在の羽田線上空を横切る大井水管橋は二つのアーチ橋で構成され、高架化する更新道路の支障となるため、片側をトラス橋に架け替える。
工程短縮のためにさまざまな対策を講じる。桟橋部の上部工ではプレキャスト(PCa)のPC床版や工場製作の鋼製橋脚を採用。埋立部でも道路構造物の躯体部分にPCaのU形ボックスや大口径の地盤改良工法などを導入し、現場作業の効率化を図る。
20年東京五輪を経て26年度の事業完了に向け、首都高速会社や大林組JVら関係者が知恵を出し合いながら難工事を円滑に進めていく。
《工事概要》
【工事名】高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事
【実施設計・施工】大林組・清水建設・三井住友建設・東亜建設工業・青木あすなろ建設・川田工業・東京鉄骨橋梁・エム・エムブリッジ・宮地エンジニアリングJV
【工事場所】東京都品川区東品川2丁目~東大井1丁目
【更新延長】約1・9km(4車線)
【事業完成予定時期】26年度
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