事前の期待が大きいほど、落胆も大きいことは珍しくない。日本で名の知れたある城を見た時もそう。石垣越しに見上げた天守閣は雄大そのものだったが、中に入ると近代的なSRC造で味気なさを感じた▼木造の天守は戦災で焼失したという。「二度と燃えないように」との市民の願いを受け、この城の天守は半世紀以上前に再建された。そうした市民の強い思いは分かるが、史実と異なる建造物になってしまった面も否めない▼貴重な文化財である城や史跡は、まちのシンボルとして市民の手で大切に守り継がれてきた。今春に耐震改修工事を終えた小田原城はRC造だが、地元では木造天守への再建を求める声が強い▼構造設計や耐火、施工などの技術が進歩し、ここ数年は建築の木造化・木質化の動きが活発になっている。日本に再び「木の時代」が到来するのは歓迎だ▼地震で創建当時からの木造櫓が石垣と共に崩れる被害に見舞われた熊本城はいまだ再建の見通しが立たない。この影響で天守の木造復元構想に逆風が吹き始めた城もある。地域活性化のためにも木造復元の意義は高い。行方を見守りたい。
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