2016年12月28日水曜日

【回転窓】書き入れ時に100万人割れ

この時期、子どもたちにとってはサンタクロースからのプレゼントやお年玉とうれしいイベントが続く。玩具メーカーは一年で一番の書き入れ時になるはずだが、少子化の進展が収益に影を落としているという▼子どもの数が減れば玩具の需要減は避けられない。購買意欲を喚起しようと、子育て中の親たちが幼少期に夢中になったアニメやキャラクターなどに再びスポットを当てるメーカーも。親子で楽しめる商品作りが営業戦略のトレンドの一つのようだ▼厚生労働省が先週公表した人口動態統計の年間推計によると、2016年生まれの子どもの数は、1899年の統計開始から初めて100万人を割り込む見通し。死亡数から出生数を差し引いた人口の自然減が30万人を超すのも初めてだ▼少子化に歯止めが掛からず、人口減少が加速していく状況があらためて浮き彫りになった。結婚・出産・育児といった人の営みは国づくりの根幹。国の宝である子どもを産み、育てやすい環境を整備することが結果として産業・経済の発展につながる▼人口減で失う生産力確保のためにロボットに安易に依存する社会は遠慮したい。

【用地取得や施工上の課題浮き彫りに】外環道都内区間、東京五輪までの開通断念

国土交通省関東地方整備局などは、建設中の東京外かく環状道路(外環道)都内区間(東京都練馬区~世田谷区)について、2020年東京五輪までの開通を事実上断念した。

 本年度内に東名ジャンクション(JCT)から本線トンネルのシールド掘進を始めるめどが立ったものの、用地取得や施工上の課題が浮き彫りになっており、具体的な開通時期を見通すことは困難と判断した。

 関東整備局と東京都、東日本、中日本の両高速道路会社が27日に事業連絡調整会議を開き、今後の見通しなどを報告した。

 工事の進ちょくを見ると、東名JCTではシールドマシンの組み立てなどが順調に進展。本年度内に本線シールドが発進するとの見通しが明らかにされた。南行きと北行きが同時に掘進を開始する予定だ。

 大泉JCTについては、シールドマシンの発進架台の構造について見直しが必要になる可能性が出てきた。砂れき層を想定していたが、発進立坑の近くで追加ボーリング調査を行ったところ、一部に砂層が確認され、地質が当初想定よりも弱いとの懸念が生じている。掘進に用いるシールドマシンは国内最大規模で重量が約4000トンにも上るため、掘進時に反力がかかっても有害な変形が生じないよう非常に強固な架台を造る必要がある。

 このため改めて追加の地質調査を行い、架台構造を再検討。施工計画の見直しや全体工程の精査といった作業を進める。大泉JCTからの発進時期は現時点では未定という。地中拡幅部分についても、大規模・複雑な構造となり、施工には相当の期間を要する見込みと報告された。

 用地の取得率は11月末時点で、面積ベースで80%、件数ベースで71%。今年8月時点と比べて進展してはいるものの、非常に厳しい状況にあるとの認識が示された。同会議ではこれまで「東京五輪までの開通の可能性を検討する」との方針を掲げていた。

【24年国体のメーン会場に】彦根総合運動公園第1種陸上競技場、基本設計発注

滋賀県は27日、「(仮称)彦根総合運動公園第1種陸上競技場建築基本設計業務委託」の委託先を決める簡易公募型プロポーザルを公告した。公募説明書などは17年1月13日までホームページで配布、参加表明書は同日まで県民生活部スポーツ課主会場整備係へ持参または簡易書留で受け付ける。同31日には現地見学会と説明会を開催する。技術提案書の提出期限は2月24日で、審査結果の通知は3月中旬を予定している。

 事業は、24年に開催される国体・全国障害者スポーツ大会の主会場となる県立彦根総合運動場(彦根市松原町3028)に現在、第2種陸上競技場しかないことから、国体の施設基準を満たす第1種陸上競技場を備えた都市公園として再整備するのが目的。新築する陸上競技場については、陸上競技以外のさまざまな競技やイベントなどの実施を見据えた多目的競技場として整備することを計画している。

 業務内容は、第1種陸上競技場の新築・電気設備・機械設備・外構に係る基本設計と景観に関する環境調査各一式で、施設規模は想定延べ床面積が2万3000平方メートル程度、主構造がRC造(PC造を含む)またはSRC造、収容人数が1万5000人以上(メインスタンド固定席7000席程度)。予定工事費の上限は88億円に設定している。履行期限は17年12月26日、設計価格は5869万0440円(税込み)。

 選定に当たっては、▽滋賀らしい国体・全国障害者スポーツ大会の主会場となる競技場とする▽誰もが利用でき、利用したくなる▽周辺環境と調和し、歴史的・文化的景観に配慮した競技場となる▽ライフサイクルコスト・環境負荷の縮減を図る▽安全で安心な競技場となる-ための方策をテーマとする提案内容のほか、業務実施体制、予定技術者の経歴、業務実績、実施方針・実施フローなどを評価する。

【アマモメッセンジャー参上!】金沢小児童、関東整備局にアマモの種届ける

 横浜市立金沢小学校の児童たちがサンタクロースにふんし「アマモメッセンジャー」(アマモに東京湾再生へのメッセージを込める者)として関東地方整備局を訪問し、海で採集したアマモの種を届けた。

 同小は、横浜市に残る唯一の自然海岸「野島干潟」に近いことから「金沢八景-東京湾アマモ場再生会議」と協力して野島海岸や横浜市金沢区海の公園などでアマモ場の再生活動に取り組んでいる。

 自分たちで採集したアマモの種で「東京湾を海の生き物でいっぱいにしてほしい」との願いから毎年種を届けており、今年で10年目を迎えた。

 種を受け取った関東整備局総務部の羽鳥修統括調整官は「貴重な種から皆さんの“海をきれいにしてほしい”という気持ちが伝わってくる。整備局は海をきれいにし、親しんでもらうため人工干潟や人工海岸を設置している。この種で素晴らしいアマモの森をつくりたい」とお礼を述べた。

 関東整備局では、子どもたちが届けてくれたアマモの種を通じて人と海の自然なつながりを取り戻し、世界に誇れる「美しく豊かな東京湾」が形成されるよう、引き続き東京湾UMIプロジェクトをはじめとした東京湾水環境再生への取り組みを推進していく。

【建設地は海の森公園】馬術クロスカントリーコースでアセス評価書案

東京都は、2020年東京五輪の馬術会場となる東京臨海部の仮設施設「海の森クロスカントリーコース」の環境影響評価書案を作成した。

 評価書案の内容に対する意見は、17年1月29日まで都オリンピック・パラリンピック準備局大会施設部調整課で受け付ける。

 都が新規造成を計画している「海の森公園」の敷地58・7ヘクタールを建設地として暫定活用する。整備は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が担う。

 芝の競技コース(距離約6キロ、幅員約15メートル)のほか、選手や馬のウオームアップエリア(面積約5300平方メートル)を配置。五輪後の公園利用を見据え、コースの路盤には自然遷移が進みやすい素材を取り入れる。予定工期は16~20年度。

 クロスカントリーコースの建設地南側を流れる水路にはボート・カヌー競技の会場(海の森水上競技場)が都によって別途建設される。

2016年12月27日火曜日

【江戸城天守、現代に蘇る】東京国立博物館と凸版印刷、江戸城のVR作品制作

 東京国立博物館と凸版印刷は、現存しない江戸城天守を精密に再現したVR(バーチャルリアリティ)作品「江戸城の天守」を制作、来年1月4日から東京国立博物館の東洋館内にあるTNM&TOPPANNミュージアムシアターで公開する。

 石垣や瓦、金具など江戸城を構成する100万以上の部材をデジタル化。史料や歴史考証を元に江戸城天守の姿を再現した。ミュージアムにある300インチの大型スクリーンに実寸大で映し出す映像では葵紋の金具に刻まれた葉脈、鯱の鱗を留めるための鋲も見ることができるという。再現に当たっては天守と同年代に建築された江戸幕府関連の社寺や城郭など、現存する文化財を丹念に取材。細部の意匠再現に役立てた。平成の大修理が進行中の日光東照宮・陽明門の工事現場、金具の製作現場も映像で紹介する。

(上から)寛永の天守全景、再現したかざり金具、天守の構造、金鯱
監修:東京国立博物館 制作:凸版印刷
江戸城天守は1657年の明暦の大火で焼失した。江戸幕府の重臣・保科正之が天守よりも城下の復興に財源を充てるべきだと提言し、再建が見送られたといわれる。VR作品では明暦の大火で焼失せず、築後360年が経過した天守を想定し、経年変化を施した天守を東京の3D地図に合成。現代の街並みと江戸城が融合した景観が鑑賞できる。

 作品の上映期間は2017年1月4日~3月31日。所要時間は約40分で、料金は高校生以上500円、中学生・小学生300円。大学生以上は博物館の入館チケットが別途必要になる。

【会場変更にご注意を】建設業関係11団体、賀詞交歓会はグランドプリンスホテル新高輪で

 日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)など建設業関係11団体主催の「17年新春賀詞交歓会」は、17年1月5日に会場をグランドプリンスホテル新高輪(東京都港区高輪3の13の1)の国際館パミール3階「北辰の間」に変更して行われる。

 例年開催してきた東京プリンスホテル(東京都港区)が改修工事中のため。

 事務局は「これまでの会場から変更となっており、参加を予定されている皆さまは十分ご注意下さい」と会場変更をアナウンスしている。

 (写真は今年の賀詞交歓会であいさつする日建連・中村満義会長)

【フルグラ増産へ新工場】カルビーが千歳工場増強工事着手

 カルビーが北海道千歳市にある千歳工場敷地内にシリアル食品「フルグラ」の新たな生産拠点となる新工場を建設している。設計・施工者は非公表。7月から工事を進めており、17年5月の竣工、8月の稼働開始を目指す。

 工事費は約20億円を見込む。新工場の建設で朝食事業の強化やフルグラの北海道ブランドイメージの定着などを図る。

 千歳工場の所在地は千歳市北信濃779の4(敷地面積3万1540平方メートル)。新工場はS造2階建て延べ2085平方メートルの規模。工場には、同社唯一のフルグラ生産拠点である清原工場(宇都宮市)から生産ラインを1ライン移設し、フルグラシリーズのうち主力商品である「800gフルグラ」を中心に生産する。新工場での年間総生産額は約40億円となる見込み。

 新工場建設に伴い商品の北海道ブランドをより打ち出していくため、17年2月1日に工場名称を千歳工場から北海道工場に変更する。

 同社では米食やパン食と並ぶ新たな朝食としてシリアル食品の市場規模が拡大することを予測。またフルグラの売り上げも12年度以降毎年1・5倍のペースで伸びていることなどから、シリアル食品を含む朝食事業をスナック菓子事業に続く第2の柱に位置付け、シリアル食品市場におけるフルグラのブランド力強化を目的に生産体制を拡充することとした。

 既存の千歳工場は1969年から稼働しており、ポテトチップスなどを生産している。

【高さ248m、21年竣工予定】三菱地所、豪州で超高層ビル開発

サーキュラーキータワーの完成イメージ
(右側の最も高いビル)
三菱地所は、オーストラリアのシドニー中心部のオフィスビル開発事業に参画する。同国の不動産・建設会社のレンドリース社、中国の不動産会社の平安不動産との共同事業として高さ248メートルの超高層ビルを建設する。設計会社を17年に決め、18年にレンドリース社の施工で着工する予定。21年の竣工を目指す。

 開発事業の名称は「サーキュラーキータワー」。約4600平方メートルの敷地に、オフィスビル、商業施設棟、公共施設棟、広場を整備する。

 三菱地所がオーストラリアに進出するのは初めて。先進国の中で、相対的に高い経済成長率が見込めるため、今後も事業機会を獲得していく考えだ。今回の開発事業には三菱地所アジア社を通じて事業参画する。出資比率は30%。

【コンセッション方式導入へ始動】有明アリーナ、管理・運営で事業者ヒアリング実施へ

有明アリーナの完成イメージ
提供:東京都、15年10月時点
東京都が2020年東京五輪のバレーボール会場などとして江東区有明に新設する「有明アリーナ」の管理・運営のあり方に関する事業者ヒアリングを、17年1月下旬から2月中旬まで実施する。コンセッション(公共施設等管理運営権)方式の導入を前提に専門的な意見を求める。参加申し込みを同1月20日まで受け付ける。

 質問事項は▽施設の活用方策▽収益増加の方策▽追加投資の意向▽地域活性化の取り組み▽自由提案-の5項目。都はヒアリング結果を踏まえ、17年度にコンセッション方式の実施方針を定める。事業者の募集・選定・契約締結は18年度に行う。

 有明アリーナは1万5000席の観客席を持つメインアリーナや、サブアリーナ、ジム・スタジオ、カフェ・レストランなどで構成する計画。総延べ床面積は4万5600平方メートルを想定している。

【インフラドクター、海外展開本格化】首都高速会社、タイで高度管理システム構築へ

MMSを使いバンコク市内の高速道路で実施したデータ収集の様子

3D点群データで視覚化した道路構造物
首都高速道路会社が道路インフラの維持管理業務を高度に管理・支援するシステム「インフラドクター」の海外展開に本格着手した。タイの高速道路公社(EXAT)が管理する道路構造物を対象に3次元(3D)の点群データを11~12月に計測・収集した。技術協力先の大学やEXATなど現地の官学関係機関と協力・連携し、現地の環境・ニーズに適した簡易システムの構築に取り組む。

続きはHP

【回転窓】「鉄道復権」の陰で

30年以上前の学生時代、国鉄の周遊券を使って北海道を鉄道でよく旅した。大陸を思わせる広大な原野や雪の森を1両や2両のディーゼルカーで行く旅は鉄道マニアでなくても楽しい。鉄道自体が一つの秀逸な観光資源でもあった▼JR北海道が、運行路線のほぼ半分に相当する約1237キロ(10路線13区間)を「単独では維持が困難」と発表したのは11月。うち3区間は廃止が前提、8区間は路線維持費用に沿線自治体の協力を求めるというから、地元の受けた衝撃は想像に難くない▼12月も、高倉健さんの映画ゆかりの留萌線の一部廃止、無人駅10カ所の来春廃止発表と北海道の鉄道をめぐる残念な話題が続いている。頻発する災害の復旧費用も路線存続の逆風になっているようだ▼国鉄時代もローカル線の赤字は問題だったが、民営のJRに国鉄のようなおおらかさを求めるのはどだい無理である。これも時代の変化と甘受せざるを得ないのかもしれない▼言われて久しい「鉄道復権」の時代は、「高速鉄道隆盛」の時代と同義でもあるだろう。その陰で地方のローカル鉄道が次々と消え行く現状は、何ともやり切れない。

【記者手帖】「ミスター新幹線」の先見の明

鹿児島県選出の元衆院議員・小里貞利氏が14日に亡くなった。阪神・淡路大震災対策担当相などを務めたが、「ミスター新幹線」の印象が強い人でもあった。駆け出しのころ取材した九州新幹線鹿児島ルート関連の式典の壇上で熱弁を振るう姿を記憶している◆九州新幹線は無駄の象徴だと批判され、着工まで陳情などに随分苦労したエピソードを話していた。そんな新幹線も開業後は乗客数が伸び、今ではすっかり九州の足として定着した。「国土の均衡ある発展」を訴え、整備に奔走した故人の先見の明に感服するばかりだ◆本格的な少子高齢社会を迎え、あらゆる産業で生産性の向上が課題になっている。人口減少の中、国土を支え、生産性を上げるための手段にはICT(情報通信技術)の活用などもあるが、高速交通網の充実もその一つだろう◆大分県や宮崎県を経由する東九州新幹線構想が再燃している。採算性など課題は多いが、そこから生まれる可能性に期待する地元の声は理解できなくもない。小里氏ならどう思うか、かなわぬことではあるが聞いてみたい。(松)

2016年12月26日月曜日

【「稼げる」施設づくりの胎動顕著に】2016年のスポーツ施設整備を振り返る

 2016年も残すところ1週間。日刊建設工業新聞社は紙面やSNSを通じてスポーツ施設整備のニュースを届けてきました。本紙に掲載した記事の中からスポーツ施設の整備に関連する主な記事をピックアップし、あらためて紹介します。

 ※記事文末の( )は新聞掲載日。紹介した記事のほか、ブログだけに掲載している記事もあります。よろしければブログの検索機能で「スポーツ」や「スタジアム」のキーワードをどうぞ。


開業後初の大規模改修実施/照明LED化や内野席改良、施工は竹中工務店

 東京ドームは、東京都文京区の全天候型多目的スタジアム「東京ドーム」の大規模リニューアル工事を今月始める。内野観客席の全席改良などを通じて快適性を向上させるほか、アリーナ照明のLED化や建物外構部の緑化などで環境負荷の低減を図る。総事業費は約50億円。営業を継続しながら19年1月までに段階的に工事を実施する計画だ。施工は主に竹中工務店が担当する。(1月26日)


Jビレッジ復興・再整備、3月に実施設計・施工一括発注

Jヴィレッジの復興・再整備イメージ
 サッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」の復興・再整備を進める福島県電源地域振興財団と福島県は、新設するサッカー場とホテル棟を実施設計・施工一括の公募型プロポーザルで発注する方針を決めた。3月14日にサッカー場、同22日に宿泊棟のそれぞれ公募手続きを開始する。(2月23日)

日建設計、スペイン・FCバルセロナのスタジアム改修を設計

カンプ・ノウの改修完成イメージ
ⓒFCB
 スペインのプロサッカークラブ・FCバルセロナは、本拠地「カンプ・ノウ」スタジアムの大規模改修の設計者を日建設計と現地設計事務所パスカル=アウジオ・アルキテクテスのチームに決めた。スタジアムを全面改装し、収容人数を現在の9万9000人から10万5000人に拡大するほか、すべての座席を覆う屋根を架ける。工事は17~18年シーズンに始まり、2021年に完成する予定だ。(3月10日)

JSC、Jリーグ運営拠点整備に助成金

 日本スポーツ振興センター(JSC)は6日、全国の地方自治体が計画する競技施設などの整備を支援するため、16年度中に運用を開始する新たな助成制度案を明らかにした。サッカーJリーグの運営拠点になる施設の整備費のうち、助成対象経費の4分の3(限度額15億円)を負担する。2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会と20年東京五輪開催に備え、競技施設の新設・改修、キャンプ地の整備にも助成金を支給する。(4月7日)

総合運動公園陸上競技場新築(青森市)が起工、施工は大林組JV

競技場の完成イメージ
 青森県が事業主体となる「新青森県総合運動公園陸上競技場新築工事」の安全祈願祭が5日、青森市内の建設地で開かれ、建設工事が始まった。基本計画作成は昭和設計(大阪市)、設計は伊東豊雄建築設計事務所が担当。大林組・丸喜齋藤組・西村組JVの施工で18年12月の竣工を目指す。(4月7日)

公共スポーツ施設を「稼げる施設」に-16年内に整備指針、設計段階で助言も

 政府は、地方自治体が所有・運営する大規模集客型の公共スポーツ施設を官民連携で「稼げる施設」へと変革させる。プロ野球やサッカーJリーグのように1回の試合開催だけで最大数万人規模の観客を呼び込めるポテンシャルに着目。年末までに、スポーツ以外でも利用できる機能の多様化や鉄道駅に近い立地を誘導する施設整備の指針をまとめる。17年度からは設計段階から国が直接助言を行えるような仕組みも導入する方向だ。(6月21日)

東京・大田区、臨海エリアでスポーツ施設重点整備

 東京・大田区は、2020年東京五輪を見据え、羽田空港に近い臨海エリアでスポーツ施設を重点的に整備する。整備対象となるのは、▽大田スタジアム▽平和島ユースセンター▽大森ふるさとの浜辺公園▽森ケ崎公園▽(仮称)昭和島二丁目公園-など。既存施設の改修や再整備を通じ、スポーツ施設が集積した臨海エリアを「新スポーツ健康ゾーン」と位置付ける方針だ。(6月22日)

名古屋市、瑞穂公園陸上競技場改築調査業務入札公告

 名古屋市教育委員会は12日、「瑞穂公園陸上競技場改築に係る調査業務委託」の一般競争入札を公告した。 同陸上競技場は、1994年の「わかしゃち国体」に向けた整備以降、20年以上大規模な改修が行われておらず、老朽化が進んでいる。Jリーグクラブライセンス制度のスタジアム基準を一部満たさず、収容人数も国際サッカー連盟の国際規格に足りないなどの課題も抱えている。市は、大規模スポーツイベント開催に対応できる施設へ再整備するため、今回の調査を皮切りに具体化を図る。(7月13日)

早大スポーツ科学学術院・間野義之教授に聞く「稼げる施設」の実現策は

 スポーツ庁と経済産業省が設置した「スポーツ未来開拓会議」が、スポーツ市場の拡大に向けた方策を検討している。その中でキーワードになっているのが「稼げる施設」。同会議の座長として中心的な役割を果たしている早稲田大学スポーツ科学学術院の間野義之教授は「施設の整備・運営に対する首長の理解が深まれば、状況は大きく変わる」と指摘。スポーツビジネスに関わる民間企業の育成との連動で、欧米並みの環境は生まれると強調する。(7月19日)

政府、「稼げる」スタジアム・アリーナづくりへ戦略作り着手

 政府は27日、スポーツで使う大規模集客型のスタジアム・アリーナをより「稼げる施設」へと変革させる戦略を話し合う官民協議会を立ち上げた。鈴木大地スポーツ庁長官をトップに、田村明比古観光庁長官や栗田卓也国土交通省都市局長らが参加。欧米のようにスポーツ施設を街のにぎわい拠点として発展させられるよう、まず年内に新築・改築設計段階でスポーツ以外の多目的利用や最寄りの公共交通機関からの近さといった「稼げる視点」に配慮した施設整備指針を作る。(7月28日)

埼玉スタジアム2002改修検討業務(さいたま市)、梓設計に

 埼玉県は、7月19日に指名競争入札を開札した「埼玉スタジアム2002改修検討業務」の落札者を800万円で梓設計に決めた。同施設(さいたま市緑区中野田500)には4階部分に活用されていないスペースがあることから、2020年東京五輪などを見据えて飲食店舗などの整備の可能性を検討する。(8月19日)

炎暑の五輪控え遮熱・保水性舗装に追い風、東京都や国交省が普及促進

 真夏に開かれる2020年東京五輪を控え、都内の道路で路面温度の上昇を抑える遮熱性・保水性などの環境舗装が注目を集めている。都は五輪会場周辺で環境舗装が広がるよう区などへの働き掛けを強化。国土交通省も試験施工した都内の国道でランナーによる試走会を開くなど普及に力を入れる。舗装業界にとっても環境舗装の市場を拡大する大きなチャンスとなりそうだ。(9月6日)

沖縄県沖縄市、1万人多目的アリーナ整備を計画

沖縄アリーナの完成イメージ
提供:沖縄市
 新しいコンセプトの多目的アリーナ整備とまちづくりを一体的に行う取り組みが、沖縄県沖縄市で進んでいる。来場者に楽しんでもらうエンターテインメント性と「稼げる」施設としての機能性を徹底的に追求。市は、観光産業を発展させ、地域振興にも貢献する起爆剤として事業を推し進めている。国内にあるこれまでの施設とは一線を画す「沖縄アリーナ」プロジェクトの最前線を紹介する。(9月8日)

文科省有識者会議、文教施設コンセッションで中間報告

 文部科学省の有識者会議は、地方自治体の文教施設の民営化促進策を検討した中間報告をまとめた。公共機関が施設を所有したまま運営権を民間に売却する公共施設等運営権(コンセッション)方式の導入を前提とする。コンセッションに有効な安定した収益を見込みやすい施設として、プロスポーツの試合やコンサートなど多目的に活用できるスタジアム・アリーナを挙げ、新設か大規模改修を行う機会に合わせて民間事業者のアイデアを最大限生かすことを求めた。(9月8日)

スポーツ庁、「稼げる」スタジアム整備でモデル事業支援

 スポーツ庁は17年度から、主に地方自治体が所有・運営する大規模スポーツ施設を「稼げる施設」へと変革させるモデル事業に乗りだす。音楽コンサートなどスポーツ以外のイベントにも利用する「多機能化」や、商業店舗など収益施設を併設する「複合化」を促進。これらを前提とする新築・改築・大規模改修計画に費用補助や技術的助言を行う。(9月12日)

沖縄県がJ1規格スタジアム建設、2・5万人収容

 沖縄県は、サッカーJリーグ1部(J1)規格のスタジアムの建設計画概要を公表した。那覇市の奥武山公園内に約2万5000人収容の施設を建設する。本年度に基本計画を策定するとともに用地取得を行い、17年度から2カ年で基本・実施設計を進め、19年度の着工、21年度の完成、22年度の供用を目指す。用地費を含む総事業費は約218億円を見込んでいる。(9月16日)

Jリーグ・村井満チェアマンに聞く「スタジアム改革の現状は」

 これまでの発想から脱却し、スタジアムやアリーナを多機能・複合化施設として整備する。スポーツをめぐる新たなプロジェクトの胎動が全国各地で顕在化しつつある。プロスポーツの一つ、サッカー・Jリーグは数年前から「スタジアム改革」の必要性を訴え、行政や産業界にアプローチし続けてきた。地域活性化や産業振興など山積する社会的課題の解決策として、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満理事長(チェアマン)は「スタジアム整備はいくつかの答えを示すことができるはずだ」と断言する。(9月20日)


愛知県と名古屋市、26年アジア競技大会開催地に

 26年の第20回アジア競技大会の開催地が25日、ベトナム・ダナンで行われたアジア・オリンピック評議会(AOC)の総会で愛知・名古屋に決まった。同大会が日本で開催されるのは1958年の東京、94年の広島に次いで3回目。県内で開かれる大規模な国際イベントは05年の「愛・地球博」以来となる。(9月27日)

日産スタジアム大規模改修(港北区)、設計は松田平田設計

 横浜市は日産スタジアム(横浜国際総合競技場、横浜市港北区小机町3300)の大規模改修に着手する。特定天井の改修やフィールド床を補強する。改修工事の基本・実施設計は松田平田設計が担当。8月15日に8640万円(税込み)で随意契約した。契約期間は17年3月31日まで。着工時期は未定だが、19年のラグビーワールドカップ決勝戦が同競技場で行われることから、これに間に合うよう工事を進める。(9月30日)

栃木県、総合スポーツゾーン新スタジアム新築(宇都宮市)WTO入札公告

 栃木県は11日、「総合スポーツゾーン新スタジアム新築工事」の一般競争入札(WTO対象)を公告した。技術提案型の総合評価方式を適用。参加申請書を11月4日まで受け付ける。開札は12月14日。建物の規模はRC一部S・SRC造4階建て延べ4万2168平方メートル。屋根には鉄骨架構の膜屋根を採用する。施設内には、400メートルトラック9レーンの陸上競技場と、Jリーグの施設基準に準拠した天然芝のサッカー場を整備する。観客席は約2万5000席を確保する。(10月12日)

大阪府東大阪市、花園ラグビー場整備3件入札公告

現在の花園ラグビー場
提供:東大阪市
 大阪府東大阪市は24日、花園ラグビー場整備に係る増築・改修工事等と、電気設備、機械設備工事の制限付き一般競争入札3件を公告した。各工事とも11月22日まで電子入札参加申請書や工事費内訳書、入札書を受け付け、同日開札する。(10月25日)

新国立競技場の実施設計大詰め、隈研吾氏「満足できるものになる」

 2020年東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の実施設計が大詰めを迎え、28日に14枚の完成予想図が公表された。「外苑の緑とスポーツをつなぐ市民に開かれた杜のスタジアム」をコンセプトに設計され、木や緑を用いた外観や日本らしさを感じさせる内装となっている。(10月31日)

「吹田スタジアム」はどうできた?-Jクラブとゼネコンが強力タッグ

 サッカー専用の大規模スタジアムとして、今年3月に産声を上げた「吹田市立サッカースタジアム」(大阪府吹田市)。建設資金を寄付と公的助成金で賄い、自治体に施設を寄付した上で指定管理者制度を活用し、プロスポーツクラブが自主運営するスキームは、多方面に大きなインパクトを与えた。スポーツ施設の整備と維持管理のあり方で新たな道筋を示した吹田スタジアムはどのようにしてできたのか。プロジェクト関係者に完成までの道程と今後の展開について取材した。(11月8日)


札幌市と北海道、JOCに26年冬季五輪開催提案書提出

フィギュアスケート会場のイメージ
開催提案書より
 札幌市と北海道は8日、日本オリンピック委員会(JOC)に26年冬季オリンピック・パラリンピックの開催概要計画などをまとめた開催提案書を提出した。市としての正式な立候補を表明したことになり、今後はJCOが17年度にかけて国内の立候補都市を決定する。最終的な開催都市は19年に国際オリンピック委員会(IOC)の総会で決まる予定。(11月10日)

スポーツ庁、次期スポーツ基本計画で「スタジアム・アリーナを街づくり拠点に」

 スポーツ庁は18日、17年度にスタートさせる次期5カ年の第2期スポーツ基本計画の素案をまとめた。直近の12年時点で5・5兆円に上るスポーツ市場規模を20年までに10兆円、25年までに15兆円へと拡大する目標を設定。数千~数万人の観客を収容できる大型のスタジアムやアリーナを街づくりの拠点に位置付け、地域活性化の創出につながる施設整備を促す。(11月21日)

京都スタジアム実施設計等(亀岡市)、受託候補に東畑建築事務所

 京都府は24日、「京都スタジアム(仮称)実施設計等業務」の公募型プロポーザルで、東畑建築事務所を受託候補者とする選定結果を公表した。基本設計の一部修正と実施設計を行う業務で、今後は同者との協議がまとまり次第、契約を締結し、業務に着手する予定だ。基本案作成業務は東畑建築事務所、基本設計業務は日建設計が担当した。(11月28日)

スポーツ庁長官・鈴木大地氏に聞く「スタジアム・アリーナ改革の現状は」

 2020年東京五輪の開催に向けて盛り上がるスポーツ産業。さらなる市場拡大を目指す政府が今年提唱した新たな成長戦略が、数千~数万人の観客を収容する大型のスタジアムとアリーナの改革だ。今後の新築や増改築では、より「稼げる」施設造りを促すという。改革を先導するスポーツ庁の鈴木大地長官に、五輪の水泳で金メダリストとして活躍した現役時代の経験も踏まえた展望を聞いた。(12月8日)

新国立競技場、首相ら出席し起工式開く

 2020年東京五輪のメイン会場として、日本スポーツ振興センター(JSC)が建設を進めている「新国立競技場」(東京都新宿区ほか)の本体工事着手を祝う起工式が11日、現地で行われた。安倍晋三首相や丸川珠代東京五輪担当相、小池百合子都知事ら大会関係者のトップらが一堂に会し、工事の無事竣工を祈った。基本・実施設計と施工は大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVが担当している。(12月13日)

岩手県釜石市、釜石鵜住居復興スタジアム建設入札公告

スタジアムの完成イメージ
提供:釜石市
 岩手県釜石市は、19年のラグビー・ワールドカップ日本大会開催に備えて建設する「釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)」の施工者選定手続きを公告した。(12月13日)

総合スポーツゾーン新スタジアム新築(宇都宮市)、鹿島JVに

スタジアムの完成イメージ
提供:栃木県
 栃木県は15日、一般競争入札(WTO対象)を14日に開札した「総合スポーツゾーン新スタジアム新築工事」の落札者を、133億円で鹿島・増渕組・渡辺建設・那須土木・磯部建設・浜屋組JVに決めた。入札には大林組・東武建設・中村土建・日豊工業・板橋組・佐藤工業JVも参加したが、応札額が予定価格を上回ったため無効となった。工期は19年9月30日まで。(12月16日)


東京都・小池百合子知事、有明アリーナ新設表明/18年度にコンセッション事業者公募

有明アリーナの完成イメージ
提供:東京都、15年10月時点
 東京都は、見直しを進めていた2020年東京五輪のバレーボール、車いすバスケットボール(決勝戦)の競技会場を現計画通り「有明アリーナ」(江東区有明)に決めた。小池百合子知事が16日の定例記者会見で発表した。完成後の有明アリーナの管理・運営はコンセッション(公共施設等運営権)方式で民間事業者に任せる。16年度中に事業者ヒアリングを行い、17年度に実施方針を策定。18年度に事業者の公募・選定・契約締結を行う。(12月19日)

東京五輪競技施設、都がコスト縮減策概要公表

 東京都は21日、2020年東京五輪のために新規整備する「海の森水上競技場」(東京臨海部)、「オリンピックアクアティクスセンター」(江東区辰巳)、「有明アリーナ」(同有明)の3施設で取り組むコスト縮減策の概要を明らかにした。五輪後の維持管理など年間のランニングコストは、海の森で2億66百万円、アクアティクスセンターで9億88百万円、有明アリーナで8億89百万円と試算した。(12月21日)

【回転窓】「会」の積み重ねが糧に

記者という仕事をしていると「いろんな人にお会いできるでしょう」とよく言われる。確かにその通り。企業、業界団体、行政機関のトップから現場の最前線で働く人たちまで、お会いする方たちは多種多様だ▼人に話を聞き、文字に起こし、記事にする。単純極まりないこの仕事。お聞きした話の中には、紙面という物理的な制約や記者としての技量のせいで文字にすらできずに終わった内容も少なくない▼インタビューなどをさせていただくと、その人がどんな立場であれ、お聞きした話に素直に感動することも多い。いっそ取材の様子を動画や音声で余すところなく読者の皆さんと共有できればと思うこともしばしばだ▼すぐに記事に反映できなかった言葉も別の記事に反映させたり、後の仕事に生かされたりすることもある。お会いした人の数が記者活動の糧になっていることは間違いない▼石井啓一国土交通相が先日の記者会見で今年を表す漢字1文字を問われ、「会」と答えた。陳情に訪れる自治体の首長たちや外遊先で会談する要人等々、「会」を積み重ねることが国交行政に役立っているという。記者と似ている。

【節目を機にさらなる飛躍めざす】17年に◯◯周年迎える企業、奥村組と大本組が創業110周年

今年も残り1週間を切った。来年2017年に建設業界では、多くの企業が創業や設立からの節目を迎える。上場ゼネコンでは、奥村組と大本組が共に1907(明治40)年の創業で来年が110周年。1917(大正6)年創業の巴コーポレーションは100年企業の仲間入りを果たす。専門工事会社や設備工事会社でも節目を迎える企業が少なくない。各社はそれぞれの節目を機に次への飛躍を目指す。

 民間信用調査会社の帝国データバンクがまとめた「周年記念企業調査」によると、17年に10年刻みで節目を迎える企業は全国で14万5103社に達する。建設業では10周年が4882社、50周年が8697社、100周年が124社。特に50周年を迎える企業が多く、業種別では最多の37・4%を占める。

 上場ゼネコンのうち、創業110周年を迎える奥村組は、1907年に創業者・奥村太平氏が森本組初代社長の森本千吉組長に弟子入りし、奈良県で土木建築請負業に従事することになったのが始まりだ。土木はシールドや山岳などトンネル建設を得意とする一方、建築は国内初の実用免震ビルを建設するなど「免震のパイオニア」としての地位を築いてきた。

 同じ1907年に大本組の創業者・大本百松氏は岡山県で建設請負業を創業した。海洋土木工事で実績を重ね、大深度ニューマチックケーソン工法や無人化施工技術に強みがある。首都圏での体制を一段と強化するため、東京本社の自社ビルを東京都港区青山に建設し、今年3月移転した。

 巴コーポレーションは100周年、長谷工コーポレーションと大末建設は80周年をそれぞれ迎える。巴コーポレーションは、1917年に野澤一郎氏が前身となる「巴組鉄工所」を東京で創立。送配電用鉄塔・鉄柱の国産化に着手し、研究開発、設計・製作上の技術的課題を克服して企業化に成功した。

 1937(昭和12)年の2月に長谷工コーポレーションが兵庫県尼崎市で、3月に大末建設は大阪府松原市で創業した。

 終戦間もない1947(昭和22)年に創立し、70周年を迎える企業も多く、基礎・地盤工事業では日特建設、機械器具設置工事業では太平電業、東京エネシス、電気通信工事業では西部電気工業、日本電通、神田通信機、はつり・解体工事業ではベステラなどが名を連ねる。

 節目を迎える17年を前に、周年記念事業を進めている企業もある。1917年に北九州市でスタートを切ったTOTOは、創立100周年記念事業の一環として、15年8月に「TOTOミュージアム」を創業地に開設している。
創立当時(1910年代)の衛生陶器研究所㊤と製品置き場の様子
(提供:TOTO広報部)

【凜】清水建設広島支店土木部・平井恵梨さん

 ◇鉄道工事の遅延解消効果に感動◇

 今年入社したばかりの新人技術者。土木を専攻した大学時代から現場での勤務を強く志望してきた。

 きっかけは大学を卒業するまで過ごした神奈川県での生活。通学に毎日利用していた鉄道には、特に「開かずの踏切」が多く、電車の遅延も慢性化していた。

 車窓から外を眺めると、いつも踏切をなくすための地下バイパス道路の工事が行われていた。高校卒業を間近に控えたある日、工事が終わった。それを境に、電車の遅延がぱったりと解消。衝撃を受けた。

 「一瞬の線路の切り替えのために毎日いろんな方たちが現場で頑張ってきたんだと分かった。そこで現場は面白そうだなって」

 大学3年の時に経験したゼネコンでのインターンシップを経て現場への興味はさらに強くなった。

 入社間もない今年7月、初めて現場に配属された。山口県岩国市の錦川下流で建設中の平瀬ダム。堤体工が最盛期を迎えている今、コンクリート打設に必要な骨材の管理などを任されている。今の目標は配属中に打設作業に立ち会えるようになることだ。将来は、技術者を目指すきっかけとなった鉄道工事や、海外の現場の仕事にも関わりたいと思っている。

 趣味はサッカー観戦。休日は広島支店に配属された同期と一緒に、購入したばかりの車を運転して広島や北九州にまで観戦に出掛ける行動派だ。

 (ひらい・えり)

【建設業の心温まる物語】大伸建設(愛媛県)・渡部静香さん

 ◇初心にかえることができる場所◇

 私の父は、建設会社を経営しています。私が大学生のころは、建設工事への投資金額は最低レベルで、建設業に対し希望が持てませんでした。そのため、大学卒業後は父の会社に入らず、別の会社で事務職に就きました。

 その後、父の会社のPCの管理を大学時代から手伝っていたことと、育児をするのに時間の都合がつきやすいため、父の会社で働くことになりました。つまり“なんとなく”建設業で働き始めたのです。しかし、大学在学中に測量士補を取得していたこともあり、現場に出て測量をするようになりました。仕事をしているうちに、目の前で物ができていくことが楽しくなり、現場が好きになりました。

 そんなある日、工事金額500万円程度の工事を担当することになりました。ダム付近の国道で、トンネルの入口上部に高さ3・5メートルの落石防護柵を設置する工事です。私はその工種の経験が少なく、協力会社の方に仕事を教えていただくばかりの、頼りない現場代理人でした。私の言うことを信じてもらえず、ぶつかることもしばしば。「本当にこの工事終わるのかしら」と不安になりました。しかし、次第に協力会社の方々とうまくやりとりができるようになり、さらに足場から国道に石や道具が落ちないように、様々な工夫をして、なんとか無事完成させることができました。

 足場を解体し、国道から見上げた落石防護柵。「やったー。ついにできた。私がやったんだ」。本当に感動しました。

 その国道を通り私たちが作った落石防護柵を見上げるたび、初心にかえることができます。

【建設業の心温まる物語】木春建築設計(滋賀県)・藤澤忍さん

 ◇思い出の掛け時計◇

 私が住宅の現場管理をし始めた頃の話です。住宅にしては大きい物件を担当していました。その年は例年よりもかなり暑く職人さん達は思いどおりに動けず、なかなか作業が進みません。引渡日は決まっていましたが、間に合わないのではないかと、私はかなり焦っていました。

 悪いことは重なるもので、その現場を担当していた大工さんが体調を崩し、長期入院されることになってしまいました。その大工さんの息子さんが少しずつ現場を進めてくださいましたが、お伝えしていた引渡日には間に合わない状況となってしまいました。私はもうどうしてよいかわからず、途方に暮れてしまいました。

 頭ごなしに叱られることを覚悟して、引渡日が遅れることを施主様にお話ししお詫びにいきました。すると、「大工さんが病気になったのではしかたないね」と現状を理解し、許してくださいました。そればかりか、何度か現場に通うたび、畑で採れたトマトやキュウリを届けてくれました。施主様は、当時一人暮らしで夜遅くまで働いていた私を気遣い、優しく接していただき、くじけそうな私を励ましてもくれました。

 そしてようやく無事引渡ができました。その時、施主様に何かを手渡されました。それは裏面に「感謝」と書かれた掛け時計でした。この現場では、施主様にご迷惑をおかけしたばかりか、私の方が成長させてもらい、感謝の想いでいっぱいで、涙が思わず流れ落ちました。

 今年、その施主様から年賀状が届きました。建築は「家を建てる」のではなく「家を建てさせていただく」仕事で、引渡後も心でつながっている素敵な仕事だと思います。 

【建設業の心温まる物語】道下電機(福井県)・道下典代さん

 ◇見えない電気が繋げる縁◇

怒った顔など一度も見たことのない穏やかで優しい祖父は、お祭りになると自転車でうれしそうにお呼ばれにやってきました。昭和のころの話です。

 祖父は、後頭部に髪がなく少しごつごつしていました。そんな祖父が亡くなり何年も経ち、それが昔お勤めをしていたころの傷であることを知りました。昔、電力会社に勤めていた祖父は、電柱上で作業をしていました。変電所が送電を切ったとの合図で作業に掛ったのですが、手違いがあり活線だったため電気が入り頭から抜けたのです。その痕です。娘である母や叔母は、幼いころ父の横で寝ると、父の手足はその影響かいつも震えていたと話していました。でも、「一度もつらいとか、痛いとか聞いたことがないね」と話していました。そのため、約1年の闘病生活ののちは現場には復帰せず、集金業務に携わったそうです。

 それなのに祖父は、我が娘である母を、電気工事業を営む父に嫁がせて下さいました。自分が危険な目に遭ったのにその電気に関わり電気に触れるその可能性があるのに。

 私は幼いころから父の後ろをよくついて歩きました。近所で現場があるとたまに一緒に行き、お客さまであるおじちゃん、おばちゃんや大工さんに可愛がってもらい、懸命に仕事する父を見、その父の背中を追い仕事の手伝いを始めました。その父も亡くなり、現在私は、母と主人と共に電気工事に関わっています。見えない電気なのに繋がっている不思議を感じます。

 どの時代にあっても、命をささげ、熱意を持ち、心ある仕事を続けてこられた方々のおかげで様々な物(建物も、道路など)が生み出され、形作られ生かされています。多くの先人の心ある仕事に感謝を込めて。

【サークル】日立建機ラグビー部 パワーディガーズ


 ◇ラグビー日本代表の勢い借りて部員増に期待!!◇

 1970年にラグビー経験者が社員に声を掛けて発足。72年からは茨城県ラグビー協会主催の社会人リーグに参加し、会社公認の部として活動している。現在の部員数は約30人。「ラグビーを通じて部員の親交を図ることをモットーに活動している。

 日々楽しみながら練習に励んでいる」と代表の宇治克将さん(制御システム事業部先端システム設計部)は話す。

 毎週土曜日に行う土浦市内での練習のほか、茨城県内外のラグビーチームとの練習試合を行い、技術の向上を図っている。ラグビー以外にも、部内の懇親会やバーベキュー、合宿や砂浜で行うビーチラグビーなどのイベントで交流を深める。土浦工場の周辺にある高校のラグビー部との合同練習会も企画しており、部員のスキルアップを狙う。

 「部員がなかなか集まらないのが悩み」と宇治さんは話すが、「2015年ラグビーワールドカップでの日本代表の大躍進もあり、ラグビー自体の認知度が上がってきているのは事実」と日本代表の勢いに乗って部員が増加することを期待している。「より楽しく活動が続けられるよう、勧誘活動に力を入れたい」と意気込んでいる。

【駆け出しのころ】不動テトラ常務執行役員ブロック環境事業本部長・中西勉氏

 ◇現場力を磨くことが糧になる◇

 就職先を決める時、大学の教授からはあるゼネコンを推薦していただいていました。しかし、雑誌で見たテトラポッドに魅力を感じ、教授にはお断りしました。そうして推薦もなく、就職を希望して訪ねたのが日本テトラポッド(現不動テトラ)です。会社に先輩はいなかったのですが、不安はありませんでした。

 入社して最初に配属されたのは、静岡県にある福田漁港の建設現場です。テトラポッドの製作と据え付けなどを行いました。現場に着任して間もないある日、こんなことがありました。先輩社員からウエットスーツを渡され、海の中に入ってブロックの据え付けをしてくるよう言われたのです。

 私は普通に泳げましたが、海の中に潜るのとは違います。それも入社したばかりのまだ寒い4月ごろの海です。これは大変な会社に入ったと思いました。潜水作業員もいたはずですが、人手が足りなかったのかもしれません。当時は何でもやったわけです。

 この現場には4年ぐらいいました。いきなり潜らされたのにはびっくりしましたが、小規模ながらさまざまな工事を経験でき、楽しかった思い出があります。

 次に担当したのは、これも漁港ですが、石川県の志賀原発の近くにある赤住漁港建設工事です。25トン型テトラポッド2000個を使用した傾斜堤構造の防波堤を造る工事でした。ここでは施工中に大型台風が来襲し、一夜にして何千立方メートルもの中詰め石が流失するという災害に遭遇しました。台風が来ているさなかでは手の施しようがなく、ようやく通過した朝になって現場を見たらなくなっているのです。これには皆がぼうぜん自失でした。

 やり直すにしても工期が迫っています。不眠不休とは言いませんが、職員と協力会社とが一体となり、40日間も休みなしでの船舶作業で無事に工期内に完工させることができました。これには大きな達成感を得られ、私の工事屋としての原点になっています。

 今思い起こすと、私はこれまで失敗の連続だったような気がします。でも、失敗を糧に成長してこられたのでしょう。土木は現場第一主義。若い技術者には、失敗を恐れず、数多くの現場を経験し、現場力を磨いてほしいと思っています。この現場力こそが、将来の土木屋としての糧になることは疑いのないことです。

 テトラポッドに魅せられて入社し、これまでに工事、設計、営業と社歴を重ねてきました。(今年8月に)ブロック環境事業本部長となり、また日本消波根固ブロック協会の会長を務めている現在、今更ながらブロックとの不思議な縁に驚かされています。

 (なかにし・つとむ)1979年東京理科大理工学部土木工学科卒、日本テトラポッド入社。テトラ執行役員東京支店長、不動テトラ執行役員東京支店長、常務執行役員土木事業本部副本部長などを経て、16年8月から同ブロック環境事業本部長兼土木事業本部副本部長。福岡県出身、61歳。
入社9年目に事務所で。
学生時代に雑誌で見たテトラポッドに魅せられた

2016年12月22日木曜日

【自動洗浄でスッキリ】日建リース工業、ヘルメット自動洗浄機開発

 日建リース工業(東京都千代田区、関山正勝社長)がヘルメットの洗浄から乾燥まで最短20秒で完了する専用洗浄機「メットシャワー」を開発した。機械に入れるだけで自動で洗浄を行うため、手間がかからない。17年3月にレンタルを始める予定。

 ヘルメットを機械に設置してから約5秒間洗浄し、約15秒で乾燥させる。夏は冷風、冬は温風で乾燥させるため、使用時の快適性が向上する。

 水を使用せず、開発した特殊な洗浄剤「メットフレッシュ」を用いて洗う。1回当たりの洗浄液の消費量は3ミリリットル。5リットルの容器に洗浄液を入れて使用するため、約1700回の連続洗浄が可能という。給水・排水設備も不要で、機械をコンセントにつなげられればどこでも使える。主に工事現場や工場などでの使用を想定。建設会社などに積極的に導入を働き掛ける。

【17年秋完成めざす】立川市にBリーグ・B2基準アリーナ整備、3000人収容

 ◇17年3月着工めざす◇

 立飛ホールディングス(東京都立川市、村山正道社長)は20日、東京都立川市に整備するアリーナの計画概要を公表した。

 設計・施工は日本建築構造センター(東京都渋谷区)が担当。施設の収容人数は3000人規模を想定している。17年3月の着工、同年秋の完成を目指す。

 計画名称は「(仮称)アリーナ立川立飛」。建設地は多摩都市モノレール線立飛駅北側の立川市泉町500の4(敷地面積8368平方メートル)。土地は同社が所有しており、一部は駐車場として暫定利用している。

 建物はS造2階建て延べ5989平方メートルの規模。ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)・B2ライセンスの試合開催基準を満たす施設とする。

 立飛駅南側には、立飛ホールディングスと三井不動産が共同開発した大型商業施設「ららぽーと立川立飛」(15年12月開業)がある。同施設と建設するアリーナとともに、周辺地域のにぎわい創出につなげる計画だ。