2016年12月9日金曜日

【回転窓】まずは現場を見よ

東京都内で建築系の中小建設会社を営む社長と話す機会があった。施工に当たって、社員にまず現場を見ることから始めさせるそうだ▼「紙に描かれた図面だけでは読み取れない何かが現場にはある」という。現地を直接見ることで初めて気付くことも少なくない▼例えば、資材の搬出入に用いるダンプの選択。複数の会社が大型車で見積もる中、その会社だけが中型車の利用を提案したことがあった。単純計算でも搬出入に倍の時間がかかるが、「現場周辺の道路の幅員などを考慮すると中型車でないと難しい」。現地を見た社員がそう判断したそうだ▼「見るということに努力をしなければ」。建築家の乾久美子氏は、建築を目指す学生に何をすべきか問われ、そう答えた。建築行為は場所に責任を持つことでもある。クライアントだけでなく、近隣住民に対して責任を負うこともある▼机上で考えた図面が実際の現場にそぐわないことは往々にしてある。工事中、一度も現場に現れない建築家もいるとか。ICT(情報通信技術)の進展で現場環境が変わろうとも、自らの目で「見る」行為は常に建設の基本のはずである。

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