建設業に外の風を入れることが地域振興にも役立つ… |
東京・霞が関の官庁街に勤務する若手・中堅の職員が数年間、地方自治体に出向することがある。建設、国土交通行政に一貫して携わってきた土師誠さん(仮名)もその一人だ。
国の組織の場合、財務、総務、外務、農林水産、国土交通など、名は体を表すという通り、それぞれの役割が明確な組織で職員は働く。一方、総合行政が展開される地方自治体の場合、国交省からの出向でも、他省に関連する仕事に携わることも少なくない。
当然、これまでとは違うジャンルの業界や専門家とやり取りすることも出てきて、それをきっかけに新たな付き合いに発展することもある。
出向先の自治体で土師さんが携わった仕事の一つが地方都市の振興策。大都市に流出した若者を呼び戻して定住人口を確保したり、衰退していく商店街を活性化したりする。国交省が関与する部分もあるが、他省に関連した施策も多い。
振興策の一環で、若者や学生が参加する活動を展開するNPO法人の設立にも関わった。その活動には、地域の企業などから集めた資金が大きな原資になるケースもあり、若者たちと一緒に協賛金集めにも奔走したこともある。
そんな中で気付いたことがあった。協賛金を出す企業の名前には、製造業など他産業ばかりが目立つ。自分がこれまで関わってきた建設関連の企業の名前がなかなか出てこない。地域振興という文脈の中で建設産業が語られることが少ないのはなぜだろう。
若者たちも建設会社に協賛金のお願いに出向こうとはしない。敷居が高いのか、あるいは、お願いする対象として見られないのか。
地域のインフラや住宅をはじめとする建物の整備に携わる建設産業は、地域に密着した業界であるはずだ。建設、国土交通行政から出向している身としては、建設産業にもっと地域振興に関与してもらいたいという思いもあった。それ以上にハード面にたけた建設産業が関与すれば、振興策がより良い形で発展するという期待があった。
自治体への出向を終えて霞が関に戻った後、いくつかの部署を経て、建設産業の振興政策に関連した仕事に携わるようになった。そこで、かつて自治体に勤務していた時に付き合いの出来た地域振興関連の人たちの知見やノウハウを、担当する政策に生かしていきたいと考えた。
「建設産業界にも、他業界や違うジャンルの有識者の考えを反映させたい」という思いからだったが、逆に言えば、「他のジャンルの人たちにも建設産業界のことを知ってもらいたかった」とも。
政府が掲げる地方創生にもかなう取り組みが今、地域の建設産業から生まれつつある。重要なのは、建設産業という一つの枠にとらわれない「地域」を担うさまざまなジャンルの人たちとのコラボレーション。それによって地域振興の新たな展開を生み出す可能性も出てくると考えている。
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