◇「引き出し」増やすため毎日が勉強◇
祖父や親戚が建設関係の仕事に携わっていたから、子どもの頃から建設業に触れる機会が多く、建築の道に進んだのもその影響が大きかったという。
入社後、半年間の横浜での研修を経て名古屋支店に配属。以来、10年目の中堅技術者として会社を支える。「目の前で建物が出来上がっていくのを見ることができるのが建築の醍醐味(だいごみ)。足場を解体し建物全体が姿を現した時は感慨もひとしおですね」。
しかし、最初のころは工具の名前をはじめ知らない専門用語に苦労した。職人さんへの連絡ミスで、まとまった大きな搬入が遅れたことも。それでも当時は女性技術者が少なく、相手も対応に慣れていなかったこともあり「同期入社の男性より、風当たりは弱かったかも」と振り返る。
オフィスビルや文教施設などの現場を経て、現在は女子大学として歴史と伝統ある金城学院大学の施設の維持修繕を担当。大学構内に事務所を置き、建物のメンテナンスに取り組む毎日だ。上司はいるが他の現場にいることが多く、見積書の作成から営業提案まで実質一人で何でも対応する。
「先輩が築いてきたお客さまとの信頼関係を壊すことはできません。施設担当者からの要望には何でも応えなければ」。電気や水回りなど、専門以外でも簡単なものであれば自ら対応する「何でも屋」。できない、分からないでは済まされず、場合によっては特別な知識も求められる。
「建物に関する幅広い知識が必要ですから、いまだに毎日が勉強です。施設担当者に分かりやすく説明し、相手の要求を満たす提案を行うためにも、自分の“引き出し”を増やすことを常に考えています」。さまざまな要求に応えつつ、女性目線のきめ細かいメンテナンスを心掛ける。
建設業で活躍する女性技術者が増えつつある状況については「ランドマーク的な建物の建設に自分の手で携わることができる、文字通り“地図に残る仕事”です。喜びを分かち合う仲間が一人でも増えてほしい」と語る。「社会的にも女性が社会で活躍する流れにありますし、弊社もそのための制度を整備しています。もっと多くの女性が建設業で活躍するようになれば、結果的に女性も男性も働きやすい環境が実現できると思います」。
最後に、女子大という今の現場で生かされる女性の優位性を聞くと「女性だから、建物を見て回っても不審がられることがありませんね」と、笑顔で答えてくれた。
(金城学院建築工事作業所、ほりかわ・なおみ)
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