◇現場力を磨くことが糧になる◇
就職先を決める時、大学の教授からはあるゼネコンを推薦していただいていました。しかし、雑誌で見たテトラポッドに魅力を感じ、教授にはお断りしました。そうして推薦もなく、就職を希望して訪ねたのが日本テトラポッド(現不動テトラ)です。会社に先輩はいなかったのですが、不安はありませんでした。
入社して最初に配属されたのは、静岡県にある福田漁港の建設現場です。テトラポッドの製作と据え付けなどを行いました。現場に着任して間もないある日、こんなことがありました。先輩社員からウエットスーツを渡され、海の中に入ってブロックの据え付けをしてくるよう言われたのです。
私は普通に泳げましたが、海の中に潜るのとは違います。それも入社したばかりのまだ寒い4月ごろの海です。これは大変な会社に入ったと思いました。潜水作業員もいたはずですが、人手が足りなかったのかもしれません。当時は何でもやったわけです。
この現場には4年ぐらいいました。いきなり潜らされたのにはびっくりしましたが、小規模ながらさまざまな工事を経験でき、楽しかった思い出があります。
次に担当したのは、これも漁港ですが、石川県の志賀原発の近くにある赤住漁港建設工事です。25トン型テトラポッド2000個を使用した傾斜堤構造の防波堤を造る工事でした。ここでは施工中に大型台風が来襲し、一夜にして何千立方メートルもの中詰め石が流失するという災害に遭遇しました。台風が来ているさなかでは手の施しようがなく、ようやく通過した朝になって現場を見たらなくなっているのです。これには皆がぼうぜん自失でした。
やり直すにしても工期が迫っています。不眠不休とは言いませんが、職員と協力会社とが一体となり、40日間も休みなしでの船舶作業で無事に工期内に完工させることができました。これには大きな達成感を得られ、私の工事屋としての原点になっています。
今思い起こすと、私はこれまで失敗の連続だったような気がします。でも、失敗を糧に成長してこられたのでしょう。土木は現場第一主義。若い技術者には、失敗を恐れず、数多くの現場を経験し、現場力を磨いてほしいと思っています。この現場力こそが、将来の土木屋としての糧になることは疑いのないことです。
テトラポッドに魅せられて入社し、これまでに工事、設計、営業と社歴を重ねてきました。(今年8月に)ブロック環境事業本部長となり、また日本消波根固ブロック協会の会長を務めている現在、今更ながらブロックとの不思議な縁に驚かされています。
(なかにし・つとむ)1979年東京理科大理工学部土木工学科卒、日本テトラポッド入社。テトラ執行役員東京支店長、不動テトラ執行役員東京支店長、常務執行役員土木事業本部副本部長などを経て、16年8月から同ブロック環境事業本部長兼土木事業本部副本部長。福岡県出身、61歳。
入社9年目に事務所で。 学生時代に雑誌で見たテトラポッドに魅せられた |
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