2016年12月26日月曜日

【建設業の心温まる物語】道下電機(福井県)・道下典代さん

 ◇見えない電気が繋げる縁◇


怒った顔など一度も見たことのない穏やかで優しい祖父は、お祭りになると自転車でうれしそうにお呼ばれにやってきました。昭和のころの話です。

 祖父は、後頭部に髪がなく少しごつごつしていました。そんな祖父が亡くなり何年も経ち、それが昔お勤めをしていたころの傷であることを知りました。昔、電力会社に勤めていた祖父は、電柱上で作業をしていました。変電所が送電を切ったとの合図で作業に掛ったのですが、手違いがあり活線だったため電気が入り頭から抜けたのです。その痕です。娘である母や叔母は、幼いころ父の横で寝ると、父の手足はその影響かいつも震えていたと話していました。でも、「一度もつらいとか、痛いとか聞いたことがないね」と話していました。そのため、約1年の闘病生活ののちは現場には復帰せず、集金業務に携わったそうです。

 それなのに祖父は、我が娘である母を、電気工事業を営む父に嫁がせて下さいました。自分が危険な目に遭ったのにその電気に関わり電気に触れるその可能性があるのに。

 私は幼いころから父の後ろをよくついて歩きました。近所で現場があるとたまに一緒に行き、お客さまであるおじちゃん、おばちゃんや大工さんに可愛がってもらい、懸命に仕事する父を見、その父の背中を追い仕事の手伝いを始めました。その父も亡くなり、現在私は、母と主人と共に電気工事に関わっています。見えない電気なのに繋がっている不思議を感じます。

 どの時代にあっても、命をささげ、熱意を持ち、心ある仕事を続けてこられた方々のおかげで様々な物(建物も、道路など)が生み出され、形作られ生かされています。多くの先人の心ある仕事に感謝を込めて。

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