2017年2月27日月曜日

【建設業の心温まる物語】安東建設・森崎公明さん(大分県)

 ◇今津灯台は初心に戻れる場所◇

 大分県中津市今津で灯台の補修工事を行いました。この灯台は今津漁港から沖に1キロほどに位置します。

 灯台はもと円柱形で直径3・0メートル、高さ8メートルでした。ところが長年の海水による浸食で30%ほど失われていました。そのため新たに8角形の増新コンクリートを打設する工事でした。

 今津の海は干満差が大きく、最大で6メートルを超えます。しかも約1時間に1メートルの潮位差がうまれるため、工事は時間との戦いでした。最も潮位が下がる時には、1キロ沖まで歩いていくことができるため灯台下部の作業をすることができます。しかし、起重機船が灯台に寄ることができないため、船を使う作業はできません。

 潮位が上がると起重機船は近寄れますが、灯台下部は水没してしまうため、潜水夫による作業となってしまいます。入念な準備、設備の用意、気象情報の収集が必要な工事でした。

 1回目の水中コンクリート打設時のことです。起重機船2隻、生コン車6台、ポンプ車1台をセットした後に、気候が急変したのです。これだけ準備をしていたためなんとかコンクリート打設したいと思いました。しかし、もしも風が強くなり波が高くなると、重大災害となるおそれがあります。私は悩んだ末に作業を中止する判断をしました。その結果、20名以上の作業員が誰一人けがすることもなく、陸地に上がれた時の安堵感は今までも忘れません。

 私にとっての今津灯台は、安全について初心に戻ることができる場所なのです。

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