◇大事なのは腹を割って話すこと◇
大学4年の時、大学院の試験に合格していたのですが、親友があるゼネコンに行くというので、自分も就職しようと考えを変えたんです。そうして入社試験を受けたのが大林組でした。
最初の赴任地は卒業した大学のある札幌で、2社の共同企業体(JV)で施工している地下鉄工事の現場に配属されました。JVの出資比率は確か50%ずつ、当社がサブでした。最初はスポンサー、サブといったこともよく分からず、何かにつけてもう1社の人ばかり呼ばれていくのが不思議でした。この現場にはスポンサー会社の新入社員もいて、周りからよく比べられたものです。互いに切磋琢磨(せっさたくま)しました。
札幌支店には都合8年ほど勤務しました。小さな支店だったこともあり、若いうちから測量だけでなく発注者や協力会社との打ち合わせ、予算書の作成などさまざまな仕事を任せてもらいました。それで一通りの仕事が分かるようになり、非常に良かったと思っています。お客さんから仕事を頂き、協力会社に仕事をしてもらっている。当時は仕事のやり方だけでなく、そんな自分たちの立場をわきまえることも教えてもらっていた気がします。
横浜支店の現場に異動すると、ここの所長は研修に来る新入社員をどんどん受け入れる方で、私が教育係を担当しました。測量や出面の取り方など、札幌支店で自分が若いころから経験させてもらったことすべてを教えました。
これまでに海外赴任の経験もあります。台湾の現場でした。米国帰りの現地のエンジニアが、書類に自分の名前と資格を書いてサインとしているのを見て大変驚きました。その人に聞くと、資格は「PE(プロフェッショナル・エンジニア)」だと教えてくれました。自分もいずれはそういう技術者になりたいと引かれました。自らの責任において判断できる技術者に憧れたのです。
そのためには研鑽(けんさん)を積み、分からないことがあれば素直に聞いて吸収していかなければいけません。若い人たちにもこうしたことを伝えてきたつもりです。
入社から22年ほど現場にいて、01年に営業を担当することになりました。大きな転機でした。営業という仕事は無から有を生み出すもので、ものすごく難しいと感じました。特に民間営業を担当した時は失敗の連続でした。受注したいという気持ちが先走り、発注者のニーズを的確につかめていなかったのだと思います。
職場で一番に大切なのはコミュニケーションですが、ただわいわいと話すのではなく、腹を割って話すことが大事です。そのための雰囲気と組織づくりも私たちの役割です。
(たおだ・のぞむ)1979年北大工学部土木工学科卒、大林組入社。奥清津第2発電所新設工事第4工区工事長(土木)、本社土木本部営業推進部部長、同本部長室長などを経て、15年4月から現職。PE(プロフェッショナル・エンジニア)。奈良県出身、59歳。
入社して最初に配属された現場の事務所で |
0 comments :
コメントを投稿