2015年7月8日水曜日

【回転窓】住生活文化をアニメで知る

 夏の風物詩「蚊帳」-。その歴史はだいぶ古いが、日本の一般家庭から姿を消して久しい。言葉の響きに郷愁を覚える方も多かろう▼先日開かれた日本建築学会のシンポジウムで、香川大学の妹尾理子教授が日本の住生活文化に関する面白い調査結果を紹介していた。学生に蚊帳や床の間などが説明された短文を示し、当てはまる実物の写真を選ばせたという▼正しく認識していた学生の割合は、床の間が4割、囲炉裏が6割。これらに対し、実際に触ったり使ったりしたことのある学生はほとんどいないのに、なぜか蚊帳の認知度は9割と高かった。さらに調べると、この情報源はアニメやドラマ、家庭内の会話などであった▼中でもスタジオジブリ制作の大ヒット映画『となりのトトロ』で知ったと答える学生が多く、そうしたアニメ作品を見ることが「子どもや若者に建築やまちなみ、住生活への関心や理解を深めてもらう貴重な機会になっている」と妹尾教授は分析する▼若者が自国の伝統的な住生活文化もアニメで知る時代であることを正視しないと、それこそ「蚊帳の外」に置かれてしまうかもしれない。


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