会場に展示されている「薬師寺東院堂」の構造模型 |
竹中工務店が手掛けた建築を通じ、建築の歴史と美術との関わりを紹介する展覧会「竹中工務店400年の夢-時をきざむ建築の文化史-」が、6月19日まで東京都世田谷区の世田谷美術館で開催されている。会場には図面や模型のほか、建築物を題材にした絵画や写真、チラシやポスターなどが数多く並び、社会背景や産業構造と相互に影響を与えながら変遷を続けた建築の様子、写真や絵画など文化・芸術の発展にも影響を与える建築の姿を映し出している。
世田谷美術館ではこれまで、「企業と美術」をテーマにした展覧会を3回にわたり開催し、文化と暮らし、社会をつなぐ企業の役割を紹介。07年の「福原信三と美術と資生堂展」を皮切りに、13年に「暮らしと美術と高島屋展」、15年に「東宝スタジオ展」と、企業活動により生み出された産物が、どのような社会的背景の中で、どのように人々の生活や社会に影響を与えてきたかを浮かび上がらせてきた。
展示室内は、プロジェクトの目的、用途などによって八つのカテゴリーに分類し、各プロジェクトにまつわる模型や図面、パネルなどを展示。人々の暮らしに不可欠な衣食住に深く関係するさまざまな施設を作り上げてきた建築が、時代の変遷とともに形を変えながらも、人々の暮らしや社会、芸術・文化にも多くの影響を与えている姿を映し出している。
◇建築と文化・芸術の関わり紹介◇
先へ進むと、人々の記憶や思い出を作る劇場やホテル、商業施設などに焦点を当てた「出会いのかたち」、明治以降急速に進んだ社会構造や労働形態の変化に応じて形を変えたオフィスビルなどを取り上げる「はたらくかたち」をテーマにした展示が続く。「夢を追うかたち」では、人類が夢の実現に挑戦するパイオニア精神に焦点を当て、東京タワーや南極観測用施設、東京ドームなど時代を先導した建築物群を紹介している。
「暮らしのかたち」は都市化の中で生まれた多様な形態の集合住宅をはじめとした生活拠点、「感性を育むかたち」は学校や美術館、博物館など感性を創造する場としての建築にスポットを当てる。「時を紡ぐかたち」では保存、修復、復元をテーマに和の伝統的な建築文化の継承に焦点を当て、「これからのかたち」では重なり合う布に映し出された映像と音楽を通じ、目に見えない環境とつながる未来の建築のあり方を思考する場を提供している。
展示品は、竹中工務店所蔵のものばかりではなく、それぞれの建築物の施主や個人の所有で普段は目にする機会が少ないものも多い。同社の歴史だけではなく、それらの芸術作品を通じ、各建築物が竣工した時代の気配、時代背景と共に歩んできた建築の変遷も知る貴重な機会となっている。
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