2016年5月25日水曜日

【15年度も好調維持】ゼネコン各社、アジア市場で大型受注相次ぐ

 過去最高益を更新するなど16年3月期は好決算が相次いだゼネコン。堅調な国内事業にとどまらず、海外で受注高を伸ばした企業も目立つ。経済成長の著しい東南アジアを中心に、土木は道路や橋梁、港湾などインフラ整備に伴う日本の政府開発援助(ODA)案件を獲得。一方、建築は日系企業に加え、現地企業などからの受注が増えつつある。15年度にゼネコン各社が受注した主なプロジェクトをまとめた。

 ◇ベトナムやシンガポールで高速道路・国際空港・病院◇

 15年度は前年度に続き、東南アジアでの受注が多かった。各社からの発表ベースで最も多かった国はベトナム(5件)。清水建設は、ベトナム高速道路公社からホーチミン市南部で計画されている全長2764メートルの長大橋建設工事を受注した。現地の建設会社ビナコネックスE&Cとの共同受注。同市とハノイ市を結ぶ南北高速道路の一部で、本邦技術活用条件(STEP)が適用される円借款事業で建設する。JVの受注総額は約207億円。工期は47カ月。

三井住友建設が受注した越・ホーチミン市郊外に建設する長大橋の完成イメージ
 三井住友建設もベトナム南北高速道路の一部となる総延長約3・2キロの長大橋建設工事を現地の建設会社シエンコ4とのJVで受注した。ホーチミン市とカイメップ・チーバイ港を結ぶ南北高速道路(58キロ)の1工区で、ODAによって建設する。工期は42カ月。JVの受注総額は約201億円。同社は14年7月に隣接工区も受注しており、ODA工事区間11キロのうち2工区合わせて7・9キロを担当している。

 五洋建設は、りんかい日産建設とのJVで、ベトナム政府から「ラックフェン国際港建設プロジェクト(航路浚渫工事)・パッケージ9」を総額約198億円で、東洋建設も「同・パッケージ8」を約151億円で単独受注した。事業はSTEPが適用される円借款で行われる。浚渫土量はパッケージ9が約1575万立方メートル。パッケージ8が約1405万立方メートル。工期はいずれも915日間。同港の整備は日越両国による初のPPPプロジェクトとして進められている。

 国内で冷蔵倉庫の実績が豊富な東亜建設工業は海外でも受注活動のターゲットの一つに据え、ベトナムで冷凍冷蔵倉庫の新築工事を設計・施工一括で受注した。施設は、平屋一部2階建ての倉庫棟と2階建ての事務所棟(いずれも基礎はRC造、上屋はS造)で構成し、総延べ床面積は約8700平方メートル。海外需要開拓支援機構(東京都港区、太田伸之社長)、日本ロジテム、川崎汽船が共同出資する「CLKコールド・ストレージ社」がアジアで物流事業を展開する一環として計画した。完成は16年7月を予定している。
東洋建設JVが手掛けるカンボジア・シアヌークビル港ターミナル整備工事の完成予想パース
 東南アジアではこのほか、東洋建設が前田建設とのJVで、カンボジア唯一のコンテナ船用大水深バースを備える「シアヌークビル港」のターミナル整備工事を受注した。円借款事業で受注総額は約51・3億円(東洋建設分は約35・9億円)。17年7月の完成を目指す。

 急速な経済発展が続くミャンマーでは、交通インフラの整備に続き、病院や学校施設の整備も活発化しつつある。鉄建は、ミャンマーで総合病院の新設工事を受注した。受注金額は4億5800万円。ODAによる無償案件で、本館北棟(RC造2階建て延べ2539平方メートル)などを建設する。16年6月末の完成を目指す。同社が海外で建築工事を手掛けるのは00年以来15年ぶりとなる。

 三井住友建設もミャンマーでヤンゴン工科大学の拡充工事を受注している。受注金額は7億8780万円。ODAによる無償案件で、実験棟(RC造3階建て延べ約1600平方メートル)と研究棟(RC造5階建て延べ約1400平方メートル)を建設する。工期は14カ月。

 同社は、商船三井がフィリピンに新設する商船大学の建設工事も受注した。最大1200人が学ぶアジア・太平洋地域最大級の私立商船大学となる。約13・2ヘクタールの敷地に、校舎や学生寮、疑似訓練船など総延べ約3万平方メートルの施設群を設計・施工で整備する。工期は16年5月~17年10月を予定している。

 大林組、清水建設、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステムの4社は、バングラデシュで橋梁の建設工事と改修工事を共同で受注した。ODA案件で、受注金額は約900億円。首都ダッカと第2の都市チッタゴンを結ぶ国道1号線上にある延長約400~1400メートルのPC橋3本を改修し、それぞれ同規模の鋼橋3本を新たに併設する。工期は48カ月。

五洋建設がシンガポールで受注した大型病院の完成イメージ
一昨年、シンガポール進出50周年を迎えた五洋建設。主力の海上土木工事に加え、建築工事の受注にも積極的で、シンガポール保健省が発注した「シンガポール総合病院アウトラム・コミュニティー・ホスピタル新築工事」を受注した。S・RC造地下4階地上19階建て延べ約14万8000平方メートルの規模で、受注金額は約576億円。19年の完成を目指す。同社がシンガポールで大型病院の新築工事を施工するのは5件目で、現地ではほかにRC造地下2階地上10階建て延べ約28万8000平方メートルの「センカン総合病院新築工事」を施工中だ。

 安藤ハザマはラオスに進出して今年で48年。日本の円借款で進められる「ビエンチャン国際空港(PTB)ターミナル拡張事業」の工事を受注した。既存の国際線PTB(延べ1万3000平方メートル)を倍の2万6500平方メートルへと拡張する工事などを施工する。昨年末に現地で起工式が行われた。工期は18年7月までの940日間。工事価格は75億円。

 東急建設は、バングラデシュのダッカ都市交通会社(DMTC)が発注した「ダッカ都市交通整備事業(MRT)6号線1工区ウッタラ車両基地造成工事」を受注した。日本政府の円借款による援助案件で、22ヘクタールの車両基地の地盤改良と土地整備を実施する。工期は25カ月。今年6月に着工し、18年の完成を予定している。請負金額は約80億円。同社がアジア圏で都市鉄道工事を受注したのは、タイ、インドネシアに続き3カ国目となる。

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