2016年5月9日月曜日

【駆け出しのころ】大林組執行役員東京本店建築事業部統括部長・和國信之氏

 ◇「自信を持って堂々と」を励みに◇

 1970年に大阪万博が開かれた時は中学1年でした。関西出身の私は会場に近いこともあり、会期中に5、6回は見に行ったでしょうか。そこで斬新なパビリオンを見たのが、建築に興味を抱くきっかけとなりました。

 会社には構造設計の担当として採用されたのですが、入社1年目は会社の決まりで現場に配属されました。ここの班長が厳しい方で、正しくできているかのチェックについてはよく指導されました。

 もともと現場で働きたいと希望していたのですが、2年目に設計へ異動します。以来、10年半ほど構造設計を担当した中で、後の自分に大きな影響を与えたのは、海外で3年ほど経験を積めたことです。最初は米国で自動車工場の建設プロジェクトに設計チームの一員として携わりました。実はこの時まで海外に行ったことがなく、飛行機に乗るのも初めてでした。

 その後、米国の設計事務所に留学します。仕事だけでなく、家族との時間などプライベートを大事にする米国の暮らしぶりに日本との違いを感じたものです。私も留学中はそれに近い暮らしをしていたのですが、今は仕事が最優先という生活を送っています。

 留学を終えて設計に戻り、2年ほどたったころ、上司に「現場に行きたいと言っていたよな」と言われ、国内の建築現場に出ることになりました。自ら設計を担当していたプロジェクトだったのですが、竣工を迎える前に異動となり、今度は米国の建築現場に赴任します。これ以降も国内外でいくつかの現場を担当しました。設計と現場、さらに国内と海外でこうしたキャリアを持つのは、後の営業担当も含めて社内では珍しいかもしれません。

 「自信を持って堂々とやりなさい」。これはかつて先輩から言われ、いろんなシーンで励まされてきた言葉です。言い換えるなら「逃げるな」という意味だと理解しています。若い人たちにはいつでもどこでもベストを尽くしてもらいたい。そうすれば、どこかで良い方向につながっていくものです。

 現場勤務のころはいつか所長になりたいと思っていました。ですから10年前に営業へ異動することになった時は驚きました。それまでは営業の知識がなく、ゼロからのスタートでした。上司からは「真剣、誠実、スピードが無くては受注できない」と教えられ、私も部下に同じことを言っています。そして常に「執着心と準備」を心掛けています。受注したいという強い意志を持ち、そのためにできる限りの準備もする。これが大事だと思っています。

 (わくに・のぶゆき)1982年東大大学院工学系研究科建築学修士課程修了、大林組入社。東京本店建築事業部営業第五部部長、同建築事業部統括部長などを経て、16年4月執行役員東京本店建築事業部担任副事業部長兼建築事業部統括部長(現職)。兵庫県出身、59歳。

米国留学中に夫婦で参加した懇親会での一枚


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