◇世界を視野に専門性高める◇
大学の機械工学科で流体工学を勉強し、卒論では人工心臓などの新しい血液流体に関する研究を行いました。もともと職人の世界が好きで、専門を生かして新しいことに取り組みたいと考え、鹿島に入社しました。
最初に配属された建築設計本部では設備設計を担当しました。早くプロになりたいという意識が強かったため、土日も出社して図面を読み、分からないことを先輩によく聞いていました。
1983年に米国の現地法人へ出向します。5年で帰国する予定だったのですが、ちょうど日系の投資が増えていたころで、「帰らなくていいよ、本社に連絡しておくから」と言われ、そのまま米国で働くことになりました。
米国では、半導体や自動車、製薬といったさまざまな工場関係のプロジェクトなどに携わり、エンジニアとしてとてもいい勉強になりました。米国の仕事では、いろんなことができるより、どういうところを深くやっているかが評価されます。日本も世界で戦おうとするならそうしたことがより求められてくるため、エンジニアリング事業本部では若い人たちが専門性を高められるよう指導と組織運営に努めています。
米国での仕事を通じ、マネジメントとは何かについてもいろいろと学びました。外部でリーダーシップの研修を受けても、戻るところは人とのコミュニケーションです。働く人たちがどれだけ本気になるか。この環境をつくることが、会社をつくることでもあると教えられました。
日本と米国の違いには決断のスピード感があるように思います。例えば全体の6割にめどが付いたら、残る4割はリスクを想像してマネジメントするという考え方で実行に移すのが米国です。ところが今の日本は、事前に100まで詰めないといけない世情です。これが世界と比べて決断の遅さにつながっているのではないでしょうか。失敗も含めてやらないと次のステップには行けません。私もいろんな失敗をしました。でも、それが糧になって次に進んでこられました。
今は忙しくて大変だとしても、それぞれの仕事が将来どういったことに結び付くのか、それを認識しているかどうかは大きく、私も繰り返し伝えるようにしています。そして若いころにどれだけ注力して苦しんだ経験を持つかで、後に成熟する時の大きさが変わってくるものです。
失敗しないためにという思考があまりに強いと、大切な一歩を踏み出せなくなってしまうかもしれない。4割のリスクをできるだけ読み切ってトライさせる。これが大事だと思っています。
(まるがめ・ひでや)1976年早大理工学部機械工学科卒、鹿島入社。Kajima Associates社長、Kajima Building&Design社長、常務執行役員エンジニアリング本部副本部長などを経て、16年4月から現職。長崎県出身、64歳。
職場の仲間たちと旅行した時の一コマ |
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