2017年9月14日木曜日

【回転窓】利根川決壊70年

 関東地方などに甚大な被害をもたらしたカスリーン台風で利根川が決壊してから16日で70年になる。濁流は東京湾に達し、多くの地域が水没した▼利根川沿いのある地域にはかつて、嫁を迎える際に対岸に声を掛ける風習があったという。戦前は30年に一度は洪水が起きると言われていたが、両岸で同じように被害が出ることは考えにくい。自分たちが被害に遭ったら支援してもらい、逆の時には助けに行く。そうしたリスクヘッジが根付いていたのだろう。大災害に備えた遠隔自治体同士の協力に通じる話である▼河川整備の効果もあり、カスリーン台風以降、利根川は氾濫していないが、「雨の降り方がたまたま幸運だっただけ」と指摘する専門家もいる。近年はどこでどのような集中豪雨に見舞われるのか予測が難しい状況にある▼「(2年前の)鬼怒川決壊を他山の石としなければならない」。カスリーン台風で堤防が決壊した埼玉県加須市の大橋良一市長が話していた。水害の恐ろしさを語り継いできた地だが、危機意識の薄れも感じているという▼起きないための備えと、起きた時の心構え。どちらも大事にしたい。

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