「名選手は名監督にあらず」とはよく聞く言葉だが、この人の言動は、監督としても大きな可能性を感じさせてくれる▼バレーボール全日本女子監督の中田久美さんがその人。選手時代は「天才セッター」と呼ばれ、1984年のロス五輪で日本が銅メダルに輝いた立役者の一人である。引退後は実業団チームの監督で実績を残し、昨年10月から全日本監督を務める▼中田さんはマスコミのインタビューにこう答えている。「オリンピックで指示待ちの選手は通用しない」。試合中も直接指示するのはここぞという場面に限る監督スタイルは、そんな考えに基づくものなのであろう▼マニュアル化された方法をいくつ覚えても、自ら考えないと通用しないのはスポーツに限らない。失敗学が専門の畑村洋太郎氏はマニュアル化が〈偽のベテラン〉を生み、〈失敗することで成長した経験がないからこそ、大事なところで大失敗を繰り返す〉(『だから失敗は起こる』NHK出版)と指摘する▼先の国際大会で不本意な成績に終わり悔し涙を見せた中田さん。選手に〈考える〉ことの重要性を説く監督とチームの活躍に期待しよう。
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