2017年9月5日火曜日

【回転窓】生きた建築の野外博物館に

明治維新から150年目を迎える2018年に、政府は神奈川県大磯町に残る初代首相・伊藤博文の旧邸宅などが並ぶ一角を「明治記念大磯邸園」として整備するという▼対象地は伊藤の旧宅や隣接する旧池田成彬邸(旧西園寺公望邸)、旧大隈重信邸、旧陸奥宗光邸など計6ヘクタール。整備後は公開し、明治期の立憲政治の歴史を後世に伝える▼大磯は東京から鉄道で1時間という立地に加え、白砂青松の美しい景色や温暖な気候が政財界の大物や文人に好まれ、明治・大正期にぜいを尽くした和・洋館が軒を連ねた。開発の波で当時の建築は少なくなったが、今も大磯駅から吉田茂邸がある城山地区までの歩ける範囲に集中して残る▼文化的価値の高い建物を展示する博物館も貴重だが、建築はやはり建てられた地にあってこそ、その価値がよく理解できる。どのように地域と調和しているのか。そうした設計の工夫は現地でないと分からない▼大磯に残る貴重な建物群を残し、街全体を「生きた建築の野外博物館」として活用できないものか。邸園の整備をきっかけに、地域資産を連携する観光振興モデルの提案が出てくることを期待したい。

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