◇共通言語で理解を深める◇
学生時代にパスコを訪問した時、コンピューターを使ってデータや地図、画像を扱っている様子に大きな可能性を感じたのを覚えています。都市計画や土木的な要素が絡みあった航空測量の世界にも魅力を感じました。
最初の配属先は仙台支社。本社で見たようなコンピューターを使った最先端の仕事場といった風景はそこになく、自分の思い描いていた職場環境のイメージと落差があったのは否めませんでした。パソコンは1、2台ありましたが、大半の業務は手作業。都市計画の基礎調査データをまとめる作業で電卓をたたいて集計したり地図の色を塗ったりなど、非常にアナログな作業でした。
航空写真だけでは地図は作れず、現地踏査であちこちを歩き回りました。労力として大変な面はありましたが、基礎的なことを実体験で学ぶことができました。ソフトウエアなどIT設備に最初から頼ってしまうと、技術やノウハウのブラックボックス化が問題になります。アナログ的な作業に苦労することで、業務を改善し間違いをなくそうという発想が生まれてきます。
支社も少人数だったため、若手ながらいろいろな仕事を任せてもらいました。技術的なことにとどまらず、プロジェクトの原価管理や協力会社への発注手続き、価格交渉など、大げさに言えば経営的な観点から経験を積むことができました。
1年目の秋ごろ、GISを使う必要がある仕事を任され、東京の本社に出張しました。同行してくれた先輩は一通り説明した後、仙台にすぐ戻ってしまいます。何もかもが初めての状況の中、とにかくマニュアルを調べたり周りの人たちに教えてもらったり、試行錯誤しながら何とか2カ月ほどで業務を完了させることができました。GIS関連のスキルアップ以上に社内の人脈が広がったことが大きな財産でした。
2年目にロックフィルダムの堤体の挙動を監視するアプリケーションの作成を担当しました。発注者との打ち合わせに出向いた時、ダムの「天端」を「てんたん」と読んでしまい、恥をかきました。同席していた営業職の先輩から「最低限のダムの知識も知らない人間が所属する会社に、仕事を任せて大丈夫だろうかと懸念を抱かせてしまう」と注意を受け、仕事への向き合い方を諭されました。
専門領域の知識を高めると同時に幅を広げることも必要です。プロジェクトを一人で完結することはできません。多分野の人たちと交わる部分を、自分の中に増やすことを意識しながら業務に取り組んできました。共通言語で相互理解を深めながら、同じ価値観を共有することがプロジェクト成功の鍵になると思っています。
入社1年目ころ、仙台支社ではいろいろなことな仕事を任せてもらえた (右側が本人) |
(しなざわ・たかし)1987年長岡技術科学大学工学部建設工学課程卒、パスコ入社。東北事業部技術センター長、執行役員事業統括本部長などを経て2021年から現職。東京都出身、57歳。
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