2021年10月21日木曜日

【下町情緒を楽しんで】東京・墨田区ら、東京スカイツリー中心に周辺地域ににぎわい創出


  東京都墨田区にある観光スポットの東京スカイツリーを訪ねた人たちに区内を回って楽しんでもらおうと、官民連携の街づくりが進んでいる。鉄道高架橋の下に商店街、隅田川の支流に船着き場などを設け、集客や回遊の仕組みを整備。隅田川に歩道橋を架け、隣接する浅草エリアとも行き来できるようにした。感染症の影響で落ち込んだ観光客を呼び戻せるか。これまで進めてきた官民の街づくりの真価が問われている。

 新型コロナウイルス感染症の流行前、東京スカイツリータウンには年間約3000万人の観光客が訪れていた。だが2020年度の来場者数は約1626万人。前年度と比べ56・3%減となった。感染拡大で人数は減ったものの、東京スカイツリーが持つ集客力のポテンシャルは変わらない。

 地域に根差した街づくりを進めてきた墨田区では「動線をつなぐことでにぎわいを取り戻したい」(都市整備部都市整備課)とコロナ後の姿を描く。

 東武鉄道、東京都、墨田区の3者は、東京スカイツリータウンの南側に面して流れる北十間川や、この川沿いにある隅田公園を生かした回遊性を持つ街をつくるために連携している。「北十間川・隅田公園観光回遊路整備事業」を14年度に始動。20年度に入り、新たな商店街や船着き場などが順次開業した。


 東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)浅草駅~とうきょうスカイツリー駅間で北十間川に面する高架橋の下に、複合商業施設「東京ミズマチ」が20年6月に誕生。高架下倉庫が商店街に生まれ変わった。国内外の宿泊需要に対応する宿泊施設や、川や公園と近接するレストラン、スポーツと一緒にカフェが楽しめる開放的な施設など14店舗が軒を連ねている。官民連携事業の初弾として、水辺の街づくりが形になった。

 「東京ミズマチににぎわいをもたらす上で、大きな役割を果たすのが舟運だ」(区の担当者)。区は北十間川を快適に利用してもらうため、水質浄化を目的に河道をしゅんせつ。舟運の出発点として東京ミズマチの東端部に、クルーザーなどが停泊できる「小梅橋船着場」を3月に完成させた。区は現在、船舶の運航やにぎわい創出などに関する実証実験を進めている。24年度以降、舟運事業を開始したい考えだ。

 東京ミズマチの北側に広がる隅田公園(約8ヘクタール)。区はPark-PFI(公募設置管理制度)で民間活力を導入して整備・運営を任せている。南側を先行して整備。樹木が多かった公園内に芝生広場を設け、見通しが良く家族連れに親しまれる空間を創出している。現在は北側の設計業務を進めている。

 東武線は東京ミズマチのある高架橋を西に進み、隅田川を渡り、浅草駅に到着する。東武鉄道は鉄道橋梁沿いに歩道橋「すみだリバーウォーク」を建設。20年6月に開通した。東京スカイツリーから呼び込んできた人たちを東京ミズマチや隅田公園にとどまらせず、隅田川を渡って浅草エリアに歩いて行ける道ができた。これは同時に、浅草側の観光客を東京スカイツリー側に呼び込む新たなルートにもなる。

 とうきょうスカイツリー駅周辺では今後も地域を回遊する仕組みづくりが計画されている。区は既存の「言問通り」「桜橋通り」を、にぎわい創出につながる街路に再整備。新たに「(仮称)南北通り」「墨田区画道路12号線」「(仮称)押上駅北口線」も整備する予定だ。駅北口には駅前広場を設けて滞留空間とし、駅だけでなく東京スカイツリータウンや、いくつもの街路に人をいざなう。区は21年度内に「とうきょうスカイツリー駅周辺街路整備計画」の素案をまとめる。

 隅田川の対岸にある浅草エリアも観光地でコロナ禍の厳しい状況に陥っている。台東区は「浅草地区まちづくり基礎調査」を20年度に実施。調査結果を踏まえ、21年度はコロナ禍での街づくりの在り方を検討している。学識経験者や地元住民らでつくる「浅草地区まちづくりビジョン策定委員会」を22~23年度に組織し、20~30年先の長期的視野に立った街づくりビジョンの策定作業に入る。

 隅田川を隔てた両区はともに都内屈指の観光スポット。それぞれに観光街づくりが進んでいるが、両エリアがともに魅力を高め合えば観光客をさらに引き付けることができる。そのためにも両区の連携と協力がより求められそうだ。

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