2021年10月5日火曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・297

建設業の持続的な成長には女性の定着と活躍が不可欠

 ◇人の役に立てる喜びが原動力◇

  東北地方の地場ゼネコンで働く山田好恵さん(仮名)は、入社15年で土木技術者としてさまざまな現場を経験した。現在は現場監督として山間部のトンネル工事に従事している。

 社内では年齢が一回り以上離れた若手技術者の教育も担当。現場に慣れず不安を抱える若手技術者の必死な姿を見ると、駆け出しだった頃の自分を思い出すという。

 建設業に興味を持ったのは中学生の時。父親に誘われ夏休みに行われた現場見学会に参加した。初めて見たダムは想像をはるかに上回るスケールだった。一瞬でダムの魅力に「恋をした」。技術者として建設会社に入り、最初に配属されたのはダム工事の現場。中学生の時に抱いた感動を思い起こしながら、「しっかり働いて人の役に立ちたい」と仕事に臨んだ。

 現場で最初に任された仕事は積算や資機材の発注手続きなど。デスクワークが多く、イメージしていた現場での仕事と大きな違いがあった。年齢がほとんど変わらない女性の先輩社員や同期の男性社員が現場に出て奮闘している姿を見ると、自分の立場にもどかしさを感じてしまった。

 待っているだけでは何も変わらない。持ち前の行動力と負けん気を発揮し、空き時間を見つけ現場に出るようにした。前向きな姿勢が上司の目にとまり、少しずつ現場での仕事も任されるようになった。

 現場監督を初めて任されたのは入社3年目。道路橋の橋脚を造る工事だった。ミリ単位の緻密さが要求される仕事。工期厳守は最重要課題で、自分が思うように作業が進まないことに焦りが募った。追い詰められた自分を助けてくれたのは、経験豊富な先輩社員や現場の最前線で汗を流すベテランの職人だった。

 自らの経験を踏まえ、若手には「分からないこと、できないことを素直に認め、頭を下げて先輩に教えてもらうことが大事」と繰り返し伝えるようにしている。困難に直面し、仕事を投げ出したくなる時は必ずある。でも完成した施設を地元の人たちが当たり前のように利用している姿を見ると、「人の役に立てる喜びが心の底から湧き上がってくる」。技術者のやりがいはその喜びにあると思っている。

 現在は技術者としての仕事と並行し、会社が注力している再生可能エネルギー分野の新規プロジェクトにも関わっている。東北は洋上風力など再エネ事業の激戦地域。専門部署の立ち上げは会社の将来に影響を与え、自分にとっても大きな挑戦になる。

 豊かな暮らしを支える上で電力の安定供給は不可欠なものの一つ。人の役に立てる喜びが仕事の原動力--。これからもこの思いを大切にして仕事と向き合っていこうと思っている。

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