2021年10月20日水曜日

【回転窓】縁起を担ぐトンネル工事

  トンネル坑口の上に飾られている「化粧木」。両端が上に反り、斜めに切られた形状。これは何だろうと思っていたら、現場の担当者が「鳥居」だと教えてくれた▼トンネル工事には言い伝えや風習などが数多くある。化粧木も山の神に対する信仰心の厚さと、社となる坑内の安全を祈願したものだ。確かに「山の神が嫉妬するから坑内には女性を入れない」などの言い伝えもある▼今でこそ安全な作業環境が確保され、坑内に女性を入れないことはないが、工事の安全を祈り、縁起を担ぐ作業員は今も多い。未知なる自然と向き合い施工する作業員にとって、自然への畏れは忘れてはならないのだろう▼19日付最終面にトンネル探究家・花田欣也氏の新書『鉄道廃線トンネルの世界』を紹介した。廃線にはなったが今なお公道や観光目的などで利用されている110のトンネルを解説している▼鉄道ファンが高じてトンネルの魅力にはまった花田氏。「トンネルの歴史を調べると、ただ通過するだけのトンネルが違うものに見えてきた」という。縁起を担ぎながらトンネルを命懸けで造った人たちの思いが伝わったのかもしれない。

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