2015年10月5日月曜日

【不可能を可能にする】大林組JV、首都高で国内初の上下層拡幅工事に挑む

国内初の拡幅工事が進む首都高板橋・熊野町JCT
 首都高速道路中央環状線の板橋ジャンクション(JCT)と熊野町間JCT(東京都板橋区)の間で、国内初となる上下層の車線拡幅工事が進められている。上下の道路を支える橋脚2層構造からなる高速道路の車線拡幅は、構造的に実現不可能とされ、建て替えるしかなかった。施工を担当する大林組・JFEエンジニアリング・横河ブリッジJVは、橋脚の土台の再構築でフーチングと橋脚の固定に鋼製格子部材を用いた「合成構造フーチング」など新技術を導入し、さまざまな課題を克服している。

 工事名は「板橋・熊野町JCT間改良工事」で首都高速道路会社が発注した。概要は施工延長520メートルで、場所打ち杭工(径1・5~2メートル、26~33メートル、120本)、合成構造フーチング拡幅工11基、RCフーチング工3基、RCフーチング拡幅工2基。工期は12年9月~18年3月。

 板橋JCTと熊野町JCTは、上下線合わせて一日当たり15万台の車両が行き来する交通の要所。両JCTは1本の直線道路でつながっているが、この区間では慢性的に渋滞が発生し、早急な対策が求められていた。

 工事では、3車線の両側を1・7メートルずつ広げて4車線化する。現在は橋脚の土台を一回り大きくするため、土台の再構築が進む。合成構造フーチングは、今回の工事用に首都高速道路会社と大林組が共同開発した。

 16本中11本の橋脚基部に採用。フーチングと橋脚の固定に、アンカーフレームに替わる鋼製格子部材を用いるのが特徴で、埋め戻しに必要な一定の土かぶり厚を少なくできるという。

 ラケット式と呼ばれる橋脚が上下層の道路を支持している。上層を支える側柱が下層の拡幅に支障となるのが課題。「サンドイッチ工法」と呼ぶ新工法を導入し、既設橋脚の前後を、拡幅分だけ側柱を広げた新設橋脚で挟み込んで道路を受け替えし、既設橋脚を撤去した後、道路を広げる方法を考案した。

 この新設橋脚の建て込みはJVの他社が担当しており、大林組は既設橋脚の撤去を今秋から始める予定だ。ラケットの先端に当たる横梁は乾式ワイヤソーで1ブロック20トンに切断し、日本通運と共同開発したリフト機能付きの特殊トレーラーで段階的に撤去する。CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)で作業手順をシミュレーションし、本番に備えている。

 工事の詳細は、大林組のホームページ「プロジェクト最前線」で紹介している。

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