2016年6月3日金曜日

【回転窓】被災者支援と企業モラル

 熊本地震の被災者に支給される義援金の差し押さえ禁止法が先の通常国会で成立し、近く施行される▼義援金は被災者に直接渡される善意のお金である。被災者が借金を抱えていた場合に金融機関が差し押さえていたとは、多くの人は考えていなかったに違いない。銀行側のモラルも疑いたくなる▼義援金の使途では、東日本大震災後に「どう使われたのかが分からない」と不満を漏らす人が少なくなかった。情報公開に問題はなかったか。このためか、熊本地震の被災者支援では義援金を贈るより地元産品の購入を選ぶ人が増えている▼5月中旬にパシフィックコンサルタンツが東京本社で行った熊本・大分物産展には大勢の人が詰め掛けた。同社は滋賀県内の「道の駅」の運営で培ったノウハウを生かし、熊本や大分の道の駅の事業者から物産を集めた。新規に取り組む地域再生支援事業を通して信頼関係を構築した人脈が被災者支援に役立った▼企業が社会に欠かせない存在と認識されるには人々からの信頼が必要だ。企業モラルの確立や情報公開もその一つ。企業統治のあり方を、もう一度見直す時期にある。

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