◇地球への製図は楽しい仕事◇
就職先を決める時、大学の教授に「青木建設から就職案内が来ているのでどうか」と紹介していただいたのが入社のきっかけです。これからは海外に出て活動しなければならない、青木建設は海外で伸びていく会社といったお話も伺い、入社試験を受けました。
入社して最初の1週間は本社で一般常識などの研修を、続けて3カ月間の英会話研修、2週間の測量研修を受けました。人事部から配属先の希望を聞かれ、寒がりなのでできたら暖かい地域がいいと希望を伝えたのですが、実際には新入社員の中で一番北の現場に赴任となりました。
それが岩手県内の東北自動車道の現場です。ここの所長は社内でも非常に厳しい方だと、赴任前から聞かされていました。まさにその通りでしたが、大変にかわいがってもいただきました。入社してから5カ所の高速道路工事に従事しましたが、最初の現場で試験室の業務を担当できた経験が大いに役立ちました。
二つの目の現場は常磐自動車道で、ここでも前の現場でお世話になった所長とご一緒できました。1年ほどたったころでしょうか。毎日が忙しくて余裕もなく動き回っていた時、私はミスをしてしまいました。構造物の均(なら)しコンクリートを打った後、翌朝には墨打ちが終わっていなければならなかったのですが、それが遅れてしまったのです。これには協力会社の世話役から「墨が出ない状態では、足場を組むとび職も配筋する職人もすべて遊びになってしまう。どうしてくれるんだ」と厳しく怒られました。
この時までは、自分が忙しく動いていれば仕事をしていると勘違いしていたのかもしれません。段取り良く、効率良く工事を進ちょくさせることの重要性がよく分かりました。こうしたミスもありましたが、構造物の墨打ちというのは、図面を書くのと違って実物と同じスケールですから、まさに地球に製図をしているようで楽しかったと記憶しています。
これまでに海外赴任の経験はありませんが、高速道路や鉄道の高架橋など多くの土木構造物の施工に携わってきました。手掛けた構造物が完成した時の喜びはひとしおです。完成後に利用し、施工中のいろいろなことが思い出されるのもいいものです。若い人にもこの感激をぜひ味わってほしいと思います。
経験の浅い人に絶対に間違えてはいけないと言っても、入社して3年生になるころまではどうしても間違うことがあります。ですから、社内の研修などでは「間違ってもいいが、同じことを3回繰り返してはいけない」とよく話しています。
(土木事業本部統括本部長兼新規開発本部長、はしもと・とみのぶ)1978年日大理工学部交通工学科(現交通システム工学科)卒、青木建設(現青木あすなろ建設)入社。執行役員企画開発本部副本部長、取締役常務執行役員土木統轄本部長兼東京土木本店長などを経て16年4月から現職。東京都出身、61歳。
常磐自動車の現場に勤務していた当時の一枚。 結婚してまもないころだった |
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