2017年5月31日水曜日

【構想段階からの官民連携確立がカギ】経産省ら、先進スタアリ整備へ資金調達プロセスガイド策定

 経済産業省とスポーツ庁は、多機能・複合型のスタジアム・アリーナ整備を後押しするための「資金調達手法・民間資金活用プロセスガイド」をまとめた。

 行政機関に頼ったこれまでの方法から脱却し、より魅力的で高い事業採算を可能にする施設整備の方向性を具体的に示した。プロジェクトの構想段階から建設や運営など多岐にわたる業務・事業を精緻(せいち)に分解・分析して、公共の役割や民間事業の可能性を明確化する必要があると指摘。官民連携プロジェクトとして位置付けを明らかにした上で、民間企業が事業の上流段階から主体的に参画することで、これまでとは一線を画したスタジアム・アリーナが実現できるとしている。

 これまでのスポーツ施設は建設、運営ともに行政機関が主導し、プロジェクトに伴うリスクやコストを行政機関が負ってきた。プロセスガイドでは構想段階から官民がパートナーシップを組み、検討を重ねることでスタジアム・アリーナ整備の経済波及効果や収益性、地域への貢献などで官民双方の均衡点(ベストミックス)が追求できるとしている。その上で施設特性や地域事情、施設の収益構造に対する認識をプロジェクトの関係者が共有。民間事業者が施設収入を最大化するための方策を検討・具体化すれば、公共の財政負担を軽減しながら収益を生み出す、新しい形のスタジアム・アリーナ整備が可能になる。

 プロジェクトを具体化・進行する上での留意点として、プロセスガイドでは①ステークホルダーの確認と検討体制の整備②顧客の把握と情報提供③顧客経験値の向上④多様な利用シーンの実現⑤まちづくりの中核となる施設⑥収益モデルの確立とプロフィットセンターへの変革⑦収益性の検証と設計などへの反映⑧民間活力を導入する事業方式と多様な資金調達⑨顧客経験値向上ためのインフラ整備-などを列挙。「多様な資金調達」では地方財政や国費に頼ったこれまでの手法を、民間資金を組み合わせた資金調達に転換するべきだと提言している。

 海外での成功事例としてヤンキー・スタジアム(米国ニューヨーク州)、ステイプル・センター(同カリフォルニア州)、ウェンブリー・スタジアム(英国ロンドン市)などを紹介。2007年に竣工したウェンブリー・スタジアムはアリーナとともに、オリンピックレガシーを活用したロンドン最大規模の都市整備・再開発プロジェクトの中核施設として、ブレント特別区のまちづくりに大きく貢献しているという。

 スタジアム・アリーナの収益性を高めるには快適性と先進性、地域環境、効率活用、複合性の5項目を織り込むことが必要だと強調。効率活用では施設の主目的である競技実施に加え、コンサートやコンベンションなど従目的のため、特にスタジアムではハイブリッド芝の導入などが必要だとした。

 国内のスタジアム・アリーナ整備の資金調達は現在、行政や大企業・運営事業者のコーポレートファイナンスが中心となっている。一方海外ではプロジェクトそのものの収益性に基づくプロジェクトファイナンスが多く活用されている。

 資金の返済原資が主に施設収益となるプロジェクトファイナンスの方が、事業そのものの収益性やキャッシュフローを厳しくチェックされる傾向にある。構想段階から緻密な検討が不可欠になり、無駄な投資が抑えられる効果が期待できる。また施設の主利用者になるプロスポーツチームなどには高い経営能力が求められようになる。

 政府は地域の交流拠点となるスタジアム・アリーナを2025年までに20カ所整備する目標を設定している。スポーツ庁らは昨年7月に立ち上げた「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会」を中核組織にして、専門家派遣やガイドライン策定などにより、先進的なプロジェクト形成を支援する考えだ。

【個別施設計画の策定後押し】スポーツ庁、自治体向けスポーツ施設ストック適正化指針(案)策定

体育・スポーツ施設をどう管理し使っていくのか、
地方自治体には対応が求められている。
(写真はイメージ、本文とは関係ありません)
スポーツ庁は、地方自治体向けに「スポーツ施設のストック適正化ガイドライン(案)」を作成した。体育館や競技場、プールなど行政機関や公立学校が保有するスポーツ施設を地域の財産として有効活用するため、施設管理に不可欠な適正化計画策定の手順、運用方法などを解説している。

 計画策定は基本状況の把握、現状分析の1次評価、利用状況や住民ニーズなどの2次評価を経て、個別施設を対象に行動計画を取りまとめる。施設の老朽化や利用頻度、周辺人口の変化などを踏まえ、メンテナンスサイクルの円滑化に向けた環境整備、施設の集約化・複合化などを検討。自治体ごとに保有施設の整備・運用改善につなげる。

 ガイドライン(案)は、13年11月に国がまとめた「インフラ長寿命化計画」に基づく、個別施設計画策定のための手引きに位置付けられる。政府が進めるスポーツ施設の集約化・複合化政策にも連動する。

 スポーツ庁は地方自治体の計画策定を後押しするため、17年度に支援や先進事例収集などを展開。年度ごとに計画策定状況を調査し、進ちょく状況を公表する。

 文部科学省の体育・スポーツ施設現況調査によると、15年時点の体育・スポーツ施設数は全国で約19・5万。このうち6割が学校の体育館やプールなど、3割が公共スポーツ施設となっている。96年以降の施設数は年を追うごとに減少し、08年調査(21・5万施設)から15年調査までに減少した約2万施設の8割を小中高校の施設が占める。地方自治体の公共スポーツ施設数は15年調査で約4・7万件で、02年調査からほぼ横ばいの状況が続く。都市公園内で整備・運用している競技場や球技場は約1・2万件。

 公立学校や地方自治体の体育・スポーツ施設は、多くが高度経済成長期に整備され老朽化の懸念が高まっている。同庁が15年に実施した調査では、全国30市町村が保有する体育・スポーツ施設の約半分が築30年を経過。維持や機能更新、再整備の財政負担は年々大きくなっている。

【回転窓】韓国新大統領の公約

韓国で文在寅新政権が発足して20日余り。新大統領の経済構想は「Jノミクス」と称され、「人間中心の経済、公正で効率的な経済」を目指すものという▼前大統領の不正問題を受けて誕生した新政権だけに、経済構想でも「人間中心」や「公正」のキーワードが目を引く。新大統領は「都市再生ニューディール事業」の推進などに意欲を示しているが、韓国の建設・不動産業界には、今後の政策運営への期待と憂慮が交錯しているようだ▼業界が憂慮する一つの理由は、新政権がインフラ投資に否定的なことだ。大統領任期の5年間にわたり建設産業を困難に陥らせかねない、と本紙と提携している韓国建設経済新聞が5月11日付紙面で報じていた▼そんな中でも、新大統領が地域公約に掲げるプロジェクトには首都圏広域急行列車(GTX)の大幅拡大や西海岸の大規模干拓事業であるセマングム開発事業の加速、金海新空港(釜山市)の建設などがある。国家レベルの大型開発事業に乏しい状況でこうした公約の実現に寄せる韓国建設業界の期待は大きい▼建設投資拡大が景気浮揚のカギであることに日本との違いはない。

【コンプリートは難しい?】東北整備局山形河川国道、「最上川カード」を配布

 東北地方整備局山形河川国道事務所は、50年前に山形県南部から新潟県北部にかけて洪水をもたらした羽越水害の記憶をとどめ、地域住民に防災意識を高めてもらうため、山形県内各地で災害記録パネル展を開いており、開催地ごとに記念の「最上川カード」を配布している。

 同パネル展は北陸地方整備局羽越河川国道事務所、山形、新潟両県の関係自治体などと共同企画している羽越水害50年記念事業の一環。

 今年3月にJR山形駅コンコース(山形市)からスタートし、8月26日に南陽市で開かれる50年記念行事まで、最上川上流域の20市町で巡回中。パネル展では、67年8月の豪雨に始まる洪水被害と復旧の様子をメインに、開催地ごとの災害記録をそれぞれ1週間にわたり紹介している。

 最上川カードは来場者に見学記念として全21種類が用意され、毎回異なる図版を1枚ずつ公開。これまでに歌川広重の「出羽 最上川月山遠望」や、天童豊栄床固(洪水復旧工事と魚道整備)、白鷹山レーダー雨量計など9枚が登場している。10枚目は、31日から飯豊町の町民総合センター「あ~す」で開かれる展示会で紹介される。

【大林組、汎用遠隔操作装置を初導入】熊本城石垣撤去現場に無人化建機採用

高所作業車(写真左側)から重機を遠隔操作し
地震で崩れた石垣の石材を撤去
熊本市と大林組は29日、16年4月の熊本地震で被災した熊本城(熊本市中央区)で進めている飯田丸五階櫓石垣復旧事業の工事の状況を報道関係者に公開した。安全面を考慮し、重機を無人で操縦できる汎用遠隔操縦装置「サロゲート」を初めて現場作業に本格的に導入。特殊なアタッチメントを取り付けたバックホウを高所作業車から無線操縦し、一つ一つ丁寧に石材を撤去している。6月半ばをめどに撤去を終える見通しだ。

続きはHP

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/川崎地質の協力で土砂災害セミナー開く

 国立土木工学大学(NUCE)と土木コンサルティング会社のVJECは5月24日、日本の川崎地質の協力を得て土砂災害に関するセミナーを開いた。会場には関係省庁や建設会社の関係者のほか、両国から多数の研究者が詰め掛けた。

 ファン・クアン・ミンNUCE副学長は冒頭、「ベトナムは土砂崩れなど自然災害の影響を受けやすい。毎年のように大規模な洪水や地滑りが発生しており、自然環境だけでなく地域生活にも大きな被害を与えている。ベトナムの研究者がセミナーを通して日本の経験から学び、土砂災害に対する理解を深めてほしい」とあいさつした。

 グエン・ホアン・ザン教授はセミナーで、両国の技術者ネットワークを拡大し、類似のテーマでワークショップの開催を検討すると話した。

セイ・ズン、5月29日)

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/自治体、インフラ予算確保に躍起

大統領公約に全国の均衡発展と地域インフラ事業が大量に盛り込まれていることを契機に、地方自治体が来年度予算(国庫)確保のための「銃声なき戦争」を繰り広げている。

 大統領府や国会を相手にした「ソウル・キャンプ」を設けるという構想まで出てきている中で政府当局は難色を示している。

 政府や関係機関によると、各自治体が来年度予算案編成に着手した中、本年度に比べて大幅増の国庫確保方策を推進中であることが分かった。

 地方財政統合公開システムによれば、本年度の自治体全体予算は前年度比6.9%増の283兆7610億ウォン。うち自治体自ら調達する地方税収入は全体の4分の1程度で、残りはほとんど国庫や地方交付税で構成される。

 このため、国庫確保のための自治体間競争と中央政府・国会との「綱引き」が毎年繰り返され、それが今年はとりわけ激しい様相を示している。9年ぶりの政権交代とともに、任期途中の大統領選という特殊な状況で新政府がスタートしたためだ。

 自治体はそれぞれ公約事業を前面に出して予算の増額編成に着手し、国庫確保にも総力戦で乗りだしている。

CNEWS、5月22日)

2017年5月30日火曜日

【収容3・5万人規模、全席個席化・屋根拡張も】川崎市、等々力2期整備の基本方針(案)策定

メインスタンドを改修した現在の等々力陸上競技場
(提供:川崎市)
川崎市の福田紀彦市長は29日の定例会見で、サイドスタンドとバックスタンドを対象にした「等々力陸上競技場第2期整備事業」の基本方針(案)を策定したと発表した。既存施設を生かした増改築を実施し、Jリーグや国際的な陸上競技大会が開催できる収容可能人数3万5000人規模で、日本陸上競技連盟第1種公認のスタジアムにグレードアップする。選手と観客の距離が近く臨場感あふれる観戦環境を実現すると同時に、全席を屋根が覆い背もたれも付いた快適な観客席にする。サッカーや陸上競技以外にも、日常的に利用できる多目的な機能を備えた複合施設への転換を目指す。

 市は6月12日~7月11日に基本方針(案)に対する市民からの意見募集(パブリックコメント)を実施した上で、8月に基本方針を正式決定する。18年3月中に同事業の整備計画を策定する予定だ。

 第2期整備事業は試合や大会を開催しながら実施し、施設閉鎖期間を可能な限り短縮する。Jリーグ開催への影響を最小限にするため工事は分割施工する。市は検討段階で①現状維持②増改築③全面改築-するという3案で整備手法や性能、コスト、多機能化・民間活力導入などを検証。学識者や利用団体からの助言・提言も受けながら比較検討し、最も評価が高かった増改築案の採用を決めた。
サイド・バックスタンドの増改築イメージ
増改築イメージは、両側のサイドスタンドとバックスタンドを対象に、現在の観客席をはさむ形で1階と3階に観客席を新設する。サイド・バックスタンドの収容可能人数は現在の合計1万4000人から1万1000人増え、2万5000人規模となる。高さ30mの屋根を設け、1階部分を含め全席がカバーできる構造にする。増改築案を採用することでスタジアム全体で3万5000人の収容が可能になり、観客席全体を屋根でカバーできる。観客席の個席化と45cm以上の幅があり背もたれも付いた仕様もクリア可能という。

 1階観客席の傾斜角を変更して見やすさが増す。既存1・2階席後方のコンコースが広がり、スムーズな動線確保も見込める。ユニバーサルデザインの導入、ICT(情報通信技術)や映像機能の充実など施設としての機能・魅力向上も図れる。全体工期は約25~27カ月、概算イニシャルコストは約90億~100億円を見込む。

 15年3月に共用開始した現在の等々力陸上競技場は施設面積4万3957㎡(メインスタンド2万1853㎡)、収容人数2万7495人(Jリーグ公式届け出は2万6827人)。メインスタンドは約79億円を投資して前傾型スタンドの新設や座席の増設、屋根架設、LED照明導入、車椅子席や多機能トイレの整備などを実施した。メインスタンドの収容可能人数は改修前が3531人、改修後が7495人。

 市は近く開始するパブリックコメントの結果も踏まえ、整備手法や事業費、工事期間、周辺への影響、資産マネジメントなどを勘案した整備計画を17年度内に策定する。 

【回転窓】「二つの老い」にも希望

「二つの老い」-。都市の郊外にある住宅団地の現状をそう表現するらしい。言うまでもなく、一つ目の「老い」は建物の老朽化、もう一つの「老い」は住民の高齢化のことである▼住まいのある東京郊外の住宅団地で先日あった管理組合の総会の議案書にもこの文言が書かれてた。本体は丈夫でもエレベーターの無い住棟は一つ目の老いに当たろう。総会の出席者や管理組合の役員を見渡すと、二つ目の老いも覆い隠せない▼「孤独死に備えて住人の緊急連絡先を把握する必要がある」「マイカーを手放す高齢住民が増えて駐車場が余り、管理費収入が減り続けている」「集会所の和室が膝の痛い高齢者に敬遠されて利用が低調」…。会合の話題には何とも気がめいるものも多い▼が、もちろん希望がないわけではない。豊かな緑とゆったりとした敷地に恵まれた郊外の団地は子育て世代にとっては好環境といえる。最近は実際に移り住んでくる若い家族も見掛ける▼多様な世代がコンパクトに暮らす街は、これからの都市の理想形の一つにもなるだろう。高度成長時代が生んだ団地という財産を有効活用する知恵を絞りたい。

【記者手帖】安全大会の時期に思うこと

テーブルの下に忍ばせたスマートフォンで、ゲームアプリに興じる男性。熱心に操作しており、前方で登壇している人物の話は聞こえない様子◆高校や大学の教室ではない。建設会社の安全大会の最中に実際に目にした光景だ。最後列に設けられることが多い記者席から、参加者の様子がよく見える。毎年取材をしていると、会場に居ながらも大会に「参加」していない人物を見掛けることは珍しくない◆厚生労働省の発表によると、昨年の建設業の労働災害による死亡者は294人と前年より1割減ったが、産業別では最も多い。安全大会の季節になると、改めて災害の多い業界だと気付かされる。「安全大会では自分が遭遇した死亡災害について話す」という支店長を取材した。「事故の様子を生々しく話していると、それまで聞いていなかった参加者がはっとして顔を上げる」という◆発表される労災統計は無味乾燥な数字でも、被災者はすべて生身の人間。その誰もが誰かにとって大切な人だったに違いない。毎年の行事をマンネリ化させない秘けつは、そこに訴えかけることにある気がした。(ゆ)

【現場で鍛えた技能で勝負】TETSU-1GP、地方予選続々開催

 幕張メッセ(千葉市美浜区)で11月25日に開催される第2回「全国鉄筋技能大会」(TETSU-1 GRANDPRIX)の地方予選が全国で開かれ、各地の代表選手が続々決まっている。
関西地区の代表に決まった谷口さん㊧と村田さん
 関西鉄筋工業協同組合(岩田正吾理事長)は27日、大阪府東大阪市の府立東大阪高等職業技術専門校で代表選考会を開いた。関西地区に与えられた二つの枠を懸け、8人が熱戦を繰り広げた結果、1位の谷口圭さん(富田興業)と2位の村田信一さん(田村工業)が代表の座を獲得した。
静岡県予選で1位になった立野さん
 静岡県鉄筋業協同組合(池谷侑治理事長)は28日、静岡市清水区の清水テクノカレッジで静岡県予選大会を開催。県内の鉄筋工6人が参加し、1位に立野匡昭さん(長友鉄筋工業)が選ばれ、全国大会への進出を決めた。

  全国鉄筋技能大会は、鉄筋工事における責任施工の大前提となる技能向上を目的に15年度から開催。競技課題は鉄筋組立技能検定1級の実技試験課題にはら筋1段を追加したもので、年齢が45歳以下であることや、1級技能士合格後2年経過していることが参加資格となっている。
関西地区大会の様子
 競技時間は標準1時間20分で、1時間40分を超過した場合は失格となる。勝敗は精度得点と作業時間得点の合計で判定。技能検定よりも厳しい基準を設け、同点であれば精度得点を優先することから、「いかに正確に組み立てられるか」(岩田理事長)が勝負の分かれ目となるという。

【施工は鹿島JVら】栃木県総合スポーツゾーン新スタジアム新築(宇都宮市)が起工

 ◇収容2・5万人、完成は19年9月◇

 栃木県が宇都宮市で計画している「総合スポーツゾーン新スタジアム新築工事」の起工式が29日に現地で開かれ、工事が本格的に始まった。2022年の栃木国体や全国障害者スポーツ大会のメイン会場となる施設。工期は19年9月30日まで。20年度の供用開始を予定している。

 設計・監理は、久米設計・AIS総合設計・本澤建築設計事務所JVが担当。施工は建築を鹿島・増渕組・渡辺建設・那須土木・磯部建設・浜屋組JV、電気設備をユアテック・三信電工・大進電気工事・テクノ産業・中央電機通信・前田電設JV、給排水衛生設備を日神工業・田中工業・横山工業JV、空調設備を藤井産業・小牧工業・金箱工設JVがそれぞれ手掛ける。

計画地は総合スポーツゾーン内(宇都宮市西川田2)。建物の規模はRC一部S・SRC造4階建て延べ4万2168平方メートル。屋根には鉄骨架構の膜屋根を採用する。第1種公認の陸上競技場で、400メートルトラック9レーンが設けられる。Jリーグの施設基準に準拠した天然芝のサッカー場も整備。観客席数は約2万5000席で、各種イベントにも対応した施設となる。

 式典では、栃木県の福田富一知事や、久米設計の江副進取締役副社長執行役員、鹿島の渥美直紀代表取締役副社長執行役員、ユアテックの遠藤和雄専務取締役営業本部長、日神工業の神宮厚代表取締役、藤井産業の藤井昌一社長らによる鍬入れが行われた。

 福田知事は「県民に喜んでもらえるものと考えている。施工には県内企業が多数参加しており、オール栃木で素晴らしいスタジアムが完成することを期待している」とあいさつ。久米設計の江副副社長は「緑の丘に凜(りん)と鎮座するデザインとした。県民の皆さまに愛されるスタジアムにしたい」、鹿島の渥美副社長は「総力を結集し、無事故・無災害でスタジアムを完成させる。最善の努力をする」と決意を述べた。

【完成予定は19年度1Q】味スタ改修(東京都調布市)、18年度着工へ

 東京都は、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会や20年東京五輪で使用する調布市の「東京スタジアム(味の素スタジアム)」の改修整備計画を明らかにした。

 17年度に実施設計、18年度に改修工事の契約手続きをそれぞれ行う。同年度の着工、19年度第1四半期(4~6月)の完工を目指す。「東京スタジアム(味の素スタジアム)改修基本設計」は1億1700万円で日本設計に委託していた。

 東京スタジアム(調布市西町)は、S・RC一部SRC造地下1階地上5階建て延べ8万6142平方メートル。現在の観客席数は約5万席。

 ラグビーW杯の開幕までに、▽昇降機の増設▽車いす対応トイレの増設▽和式トイレの洋式化▽競技用照明のLED化▽特別観覧席の更新▽既存観客席の一部更新▽受変電設備の一部更新▽フリーWi-Fiの導入▽インゴールの芝拡張、高さ17メートルのゴールポスト設置-などを施工する予定。必要な工事は業種ごとに分割して発注する方向だ。

 東京五輪の開催時、東京スタジアムではサッカーに7人制ラグビー、近代5種の各試合が開かれる。ラグビーW杯の終了後、五輪対応の追加工事として、車いす席から試合をより観戦しやくするための改修を別途行う。


2017年5月29日月曜日

【五輪関連施設は19年秋完成へ】馬事公苑改修(東京都世田谷区)、インドアアリーナや厩舎など新設

再整備完了後の馬事公苑のイメージ
(ⓒ 日本中央競馬会)
 2020年の東京五輪・パラリンピックで馬術競技が開かれる馬事公苑(東京都世田谷区)の改修計画が明らかになった。日本中央競馬会(JRA)は五輪開催に合わせて老朽化した施設を更新。国際基準に適合した馬術競技会場にすると同時に、馬事振興の拠点として優れた指導者や技術者の育成、馬との触れ合いなどを可能にする施設にする。

 改修計画では敷地内の北エリアに事務所や物販店、飲食店が入るメインオフィス(S造3階建て延べ約6740㎡)や管理センター(S造3階建て延べ約6060㎡)、審判棟(S造2階建て延べ360㎡)、二つの厩舎(RC・S造平屋延べ約1190㎡と同約1670㎡)を整備。S・RC造3階建て延べ約8670㎡のインドアリーナも新設する。南エリアには事務・JRA職員寮(S造3階建て延べ約1560㎡)と厩舎(RC・S造2階建て延べ約1800㎡)を整備する。

 馬事公苑(東京都世田谷区上用賀1の1ほか、2の1の1ほか)の敷地面積は約19万1000㎡。改修後の総延べ床面積は約4万1380㎡(改修前:約3万5320㎡)。前回1964(昭和39)年の東京五輪で馬場馬術競技の会場として使用されている。
20年には五輪で馬場馬術と総合馬術、障害馬術、パラリンピックでは馬術が行われる。

 改修計画では、施設整備以外に苑内のはらっぱ広場やナチュラルアリーナ、サクラドレッサージュなどの既存樹木を可能な限り残す。正門付近や放牧場、はらっぱ広場などにある大径木も保存する。五輪開催以外にも地域に開かれた「緑の憩いの場」として、地域住民により親しまれる施設にする。

 東京五輪前の準備工事、解体工事、第1期工事は17年1月に着工。19年秋までの34カ月間で工事を完了する。第2工事を含めた全体完成は22年11月を予定。設計・施工は大成建設と山下設計の連合体が担当している。再整備に当たり、JRAは15年12月にDB(設計・施工一括)方式で「馬事公苑整備工事」の入札を実施。大成建設らが293・9億円で落札し、16年1月から設計に入っていた。

【回転窓】今年のプリツカー建築賞

今月20日に東京都港区の迎賓館赤坂離宮で、建築界のノーベル賞とも呼ばれる「プリツカー建築賞」の授賞式が行われた。日本での開催は1989年の奈良市の東大寺以来28年ぶり2回目▼今年の受賞者はスペインのRCRアーキテクツを率いるラファエル・アランダ、カルメ・ピジェム、ラモン・ヴィラルタの3氏。故郷のカタルーニャ地方に拠点を置き、スペイン国内を中心に公共建築や住宅などを設計している▼それぞれの地域の歴史や気候、文化などを深く考察し、リサイクルされた鉄やプラスチックなどの現代的な素材を創造的かつ幅広く利用。建築と敷地の関係、素材の選択を考え、幾何学を駆使して自然環境を生かした建築にまとめ上げている▼グローバル化がこのまま加速し続けると、地域性や地域独自の芸術、風習を失ってしまうのではないか。3氏の手掛ける建築は普遍性と地域性を両立させる可能性を示しており、そこが高く評価された▼地域との結び付きを建築デザインを通して考える時期が来ている。今回の選考は20世紀末的な「スターアーキテクト」の時代の終わりを示唆しているのかもしれない。

【オープン予定は来年6月】千里南公園カフェ整備(大阪府吹田市)、オペレーションファクトリーに

 大阪府吹田市は「千里南公園パークカフェ整備事業」の設計・建設・運営などを担う事業者の公募プロポーザルで優先交渉権者を、飲食店プロデュースのオペレーションファクトリー(大阪市西区、笠島明裕社長)に決めた。

 同社は食パン専門店とカジュアルイタリアンカフェ(終日営業)などを提案。市は同公園(津雲台1の3)に新たなコミュニティー空間をつくろうとパークカフェの設置を企画した。

 パークカフェの事業用地は3000平方メートル弱で建築面積は約100~500平方メートルと設定していた。

 同社は食パン専門店などの営業や料理教室など定期的なワークショップの開催なども提案。市では整地工事や上下水道工事を行う。事業者は11月ごろにパークカフェの工事に着工、18年6月ごろのオープンを予定。公園の開設面積は10・5ヘクタールで1963年に開設。阪急電鉄千里線南千里駅から北へ徒歩5分の場所にある。

【技術移転で現地に貢献】清水建設ら、越ホーチミン地下鉄のシールド工事始動

 ベトナムの都市部で初となるシールド工事がいよいよ始動する。

 交通量が多く歴史的建造物が立ち並ぶホーチミン市中心部で、バーソン駅とオペラハウス駅を結ぶ781メートルのシールドトンネル2本を掘削する難工事。施工を担当する清水建設・前田建設JVは、経験がない現地企業への技術移転も進めながら、月進250メートルを目標に工事を進め、来年5月の掘削完了を目指す。

 同JVが施工するホーチミン市都市鉄道1号線CP1B工区(ホーチミン市人民委員会都市鉄道管理機構発注)では、西側からオペラハウス駅舎、シールドトンネル、バーソン駅舎、開削トンネルを構築する区間で、受注時の請負金額は約246億円。19年2月の完了を目指し、14年8月に着工。両地下駅舎や開削トンネルの施工を進めてきた。

 先行するオペラハウス駅舎の施工では、駅舎に隣接するオペラハウスやREX HOTELなどの歴史的建造物群が軟弱地盤の上に直接基礎で立っているため、建造物の挙動解析と計測管理を綿密に行いながら、地下4層、深さ27メートルの駅舎構築を推進。バーソン駅舎予定地はサイゴン川に面するため、一部を二重のシートパイルで締め切って河川水の流入を断った後、地中連続壁を構築して掘削・躯体工事を進めている。

 今回着手したシールド工事は、上下線2本のトンネルをバーソン駅側から掘進する。当初は左右に並行するトンネルは、200メートルほど掘進した後に、車線が減少する地上道路の幅員に合わせて上下に並び、オペラハウス駅に到達する。2本とも外径約7メートルのシールド機1台で施工し、オペラハウス駅に向かって左側から出発。下側に到達する1本目は9月に掘削を完了。右側から上に抜ける2本目は12月に掘削を開始し、18年5月の完了を予定している。

 ホーチミン市都市鉄道1号線は、日本が円借款で事業化を支援。本邦技術活用条件(STEP)の適用案件で、日本企業の優れた建設技術や車両、鉄道システムなどが取り入れられている。

同工区でも、シールド工法でのトンネル掘削では、施工経験のない現地の技術者や作業員に対する指導が重要な役割になっている。清水建設の岡本正代表取締役副社長は「海外では、現地のパートナーなくしてその国のやり方や考えをすべて理解することは難しく、重要な存在だ。そのパートナーに技術を移転し、作業員の教育を行い、清水建設の安全、品質、工程管理などを理解してもらう。それによってパートナーが評価され、発展していくことはわれわれにとってもうれしいことだ」とその重要性を強調する。

 シールド機での掘削は、29日に本格的にスタートする。清水建設の河合信之ホーチミン地下鉄建設所長は「シールド工法は日本では定着しているが、ベトナムでは初めて。安全、品質第一で確実な工法を採用し、急ぐことなく、緩めることなく、着実に進める姿勢を見せることで、現地の技術者にもしっかりと技術が伝わると信じている」と話し、同国初となる地下鉄シールド工事の施工に意欲を見せる。

【凜】新日本建工(高松市)・伊澤ももさん

 ◇自分の勘を信じ転身決断◇

 国土交通省の非常勤職員からこの春、内装工事を手掛ける高松市の新日本建工へ。関東出身。初の四国行きには、多少の不安もあった。それでも、地方を経験してみたかったという思い、そして持ち前の好奇心から「何か面白いことができそう」という自分の勘を信じて転身を決断した。

 入社後、建設業特有の事務処理や経理を学びながら、事業計画の研究に取り組んでいる。

 岡村真史社長が、社業の傍ら市内の内装異業種と連携してつくった職人育成塾で代表理事を務めており、その広報や事業計画づくりも手伝っている。担い手確保・育成の施策に取り組む建設産業行政を見続けてきた経験が生かされている。

 それでも建設業界には足を踏み入れたばかり。今は業界がどのようなものかをしっかりと学びながら、「自分でしてみたいこと、自分でできることを見つけていきたい」。女性ならではの視点で現場のあり方も考えていきたいという。

 次から次へとアイデアを出してくる社長の指示を受け止めながら、同時並行で複数の案件をこなす。「正直大変です」と笑うが、全幅の信頼を寄せられている表れでもある。

 香川県の会社に就職した理由は、実はもう一つ。以前習っていた少林寺拳法の本山である金剛禅総本山少林寺が県内にあること。「そうしたことも何かの縁かもしれませんね」。

 (いざわ・もも)

【建設業の心温まる物語】ヒメノビルド・北山昇平さん(愛知県)

 ◇この仕事を続けていく覚悟ができた日◇

 入社して1年目に、マンション新築工事現場に配属になりました。8カ月間の工事でした。施主さまは親の代から続いていたご商売をやめられ、敷地内にマンションを建設するという計画でした。近くにお住まいのため、毎日施主さまと顔を合わせました。そのご様子から、マンションが完成する日を毎日楽しみにしていらっしゃることをひしひしと感じました。

 私は入社1年目であったため、上司に指示された目の前の仕事をとにかく一所懸命に行っていました。ほうきで現場を掃いたり、ゴミを拾ったりして行う現場の清掃。夏の暑い中、作業員さんと一緒にバイブレーターを持ちながらのコンクリート打設作業。夜にはドラフターに向かっての施工図作成。朝から夜まで働きどおしで正直なところ体はきつかったですが、それ以上にこれまでの人生の中で、経験したことのないほど充実していました。

 建物が完成に近づき足場を解体すると、マンション全体の姿が現れました。自分が関わって作ったと思うと感無量でした。その日の夕方、施主様から声をかけられました。「できましたね。ありがとう。毎日朝早くから夜遅くまでたいへんでしたね」と言われました。その一言で、やりがい、働きがいを感じ、この仕事を続けていく覚悟ができました。そしていくら苦労をしても、見てくれている人が必ずいるということを改めて実感できました。

【建設業の心温まる物語】小島組・田平宏樹さん(愛知県)

 ◇カメルーンでピンチを救ってくれた人◇

 待望の第一子が生まれたばかりのときでした。海外出張が決まりました。場所は日本から遠く離れたアフリカのカメルーン。サッカー選手エムボバの出身国ですが、それ以外にカメルーンの知識は全くありませんでした。最初に言葉の問題がありました。他の外国のゼネコンと一緒に工事を進めるため、その国のことばがメイン。当社で外国人のWさんを通訳として雇いました。通訳を介しての交渉は難しく苦労しました。

 そんな中、最大の問題が食事でした。外国のゼネコンが用意した料理長の味が、私たちに合いません。そして外国の方のマナーにも悩まされました。食事は食堂で食べるビュッフェスタイルで、人気のあるおかずには早くから人が並びすぐになくなりました。

 後ろに3人待っていても気に入ったおかずであれば全て自分の器に入れてしまいます。たまに出るフルーツは我れ先に持ち去り、人気のないおかずばかり残っていました。事態は更に悪化し、食事の開始時間を守らなくなりました。あまりのマナーの悪さと食事の味によって日に日に食欲がなくなっていきました。

 そんな状況を毎日見ていた通訳のWさんがある日、食堂で外国の方を一喝しました。「見ろ、田平さんが食事を食べられなくて困っている。お前たちは自分のことしか考えられないのか?恥ずかしくないのか?」と。

 それからも毎日、Wさんは食事のたびに私たち日本人に気を使ってくれました。「明日は田平さんの好きなチキンが出るよ!」とか、「今日は洋梨があったからとってきたよ!」とか、少しホームシックになっていた私にとって本当に支えになりました。

 無事工事が終わり、その国の方々ともわかり合えるようになりました。カメルーンの振興、そして国際親善をすることができたこと、うれしく思いました。

【建設業の心温まる物語】奥村組土木興業・佐々木慶仁さん(大阪府)

 ◇私の人生を変えた大震災と明石海峡大橋◇

 小学校6年生の卒業式の日、私はテレビで東日本大震災のニュースを見ました。建物や人を押し流す津波や、燃え上がる火災の映像を見て、とてもショックを受けました。

 その時私は、人の命を守る仕事ができる消防士になりたいと思いました。その後、災害が起きた際でも、地図を見ただけで安全な場所と危険な場所が分かるようになりたいと思い、土木を学べる学校への進学を決意しました。

 高校で土木を学んでいく中で、まず人を守りたい、未然に人々の安全を守れる仕事がしたいと思うようになりました。「地震で家が倒壊したり、洪水で流されて亡くなる人を限りなくゼロに近づけたい」、そんな思いで土木の学問に取り組みました。

 その後、地図に残るような大きな仕事をしたいと思うようになりました。それには、私の家の近くにある明石海峡大橋が大きく影響しました。いつ見てもその偉容は変わることなく、とても大きな存在感があります。

 また土木の勉強を積んでからは、この橋を完成させるのにどれだけ大変だったのだろう、何人の人がこの工事に関わったのだろう、完成させたときの達成感はさぞ大きいだろう、と考えを巡らせながら見るようになりました。

 地図を書き換えることができるのは土木だけです。私も大きな現場に携わり、地図に残る仕事をしたいと強く思います。そして、自分が携わった工事により、人々の安全や生活を陰ながら支えていけたらと思います。

【サークル】綿半HD 野球倶楽部


 ◇目指すは東京ドームや神宮球場での試合◇

 15年に綿半ホールディングス(HD)内の各社間の交流と健康維持のために公認スポーツクラブの公募があり、野球好きの社員が集まって「綿半Holiday9」が結成された。

 現在の所属部員は25人。業種や部門が異なるさまざまな社員が参加し、年齢層も新入社員から管理職までと幅広い。甲子園出場経験者から未経験者までいる。

 「全員で野球を楽しんで、勝つことをモットーに活動している」と話すのは、代表を務める馬場寿さん(綿半ソリューションズ)。会社からほど近いグラウンドで練習に励むほか、各部員がバッティングセンターに通って技術を磨いている。

 練習の成果を発揮するのが試合。年間12~13試合程度をこなす。「他チームと交流を深め、試合する機会をもっと増やしたい」(馬場さん)と意気盛んだ。

 今後の目標は、東京ドームや神宮球場で行われるような規模の大きい大会に出場すること。そのためには、定期的に練習できる環境を整える必要があるが、「会社近くのグラウンドの抽選が激戦で、なかなか練習する機会を確保できていない」(馬場さん)のが悩み。他チームとの合同練習も視野に入れ、活動していく。

【駆け出しのころ】ナカノフドー建設執行役員海外事業本部副本部長・外岡三弥氏

 ◇おかげさまの気持ち大切に◇

 映画「黒部の太陽」や「海峡」の影響も受け、大型土木工事を手掛けるゼネコンに絞って就職活動をしました。中でも海外プロジェクトへの思いは人一倍ありました。当時は名古屋への五輪招致でソウルに敗れたこともあり、各社の採用は下火で、1年間の就職浪人をしてしまいました。

 就職浪人を相手にしてくれる企業はほとんどなく、困っていると、大学の就職部長が「どうしている」と心配して電話をかけてきてくれたので、「こういう状況です」と伝えました。そこで「土木は強くないけれど、海外展開をしている面白い会社がある」と勧められたのが当社でした。

 就職部長の大学時代の同期が役員をされていると聞き、尋ねていくと、「よく来たな。座りなよ」と言ってくれました。それまで多くの企業に断られ続けてきたので、この言葉をすごく温かく感じ、拾ってもらったという感謝の気持ちでいっぱいでした。

 海外で仕事をしたいという熱意が伝わり、入社1年目の終わりごろ、海外の現場に配属されました。今では考えられないことです。現場はマレーシアのサバ州コタキナバル。イスラム教団サバ本部の事務所・モスクの建設工事です。基礎や外構を担当する土木要員の一人として赴任しました。うれしかったことを覚えています。

 ただ当時は治安が悪く、風土病の心配もあって生活は大変でした。測量や杭打ちを任せてもらいましたが、ことごとく間違え、やり直しの連続。大きなミスをした時には所長から「またお前か、何しにきたんだ」と叱られたものです。

 現地のコンサルタント会社の人も厳しく、私も生意気でしたから、なかなか検査を通してもらえません。そんな時、「攻め方を少し変えたら」と先輩たちがアドバイスしてくれました。謙虚にいこうと、コンサルの人に「まだ1年生です。勉強中なのでいろいろと教えて下さい」と素直な気持ちで伝えると、その後はなぜかかわいがられ、検査もスムーズにいくようになりました。異国の地で、駆け出しだったからできたのだと思います。

 マレーシア、シンガポール、ロシア、ベトナム、タイと海外勤務は通算30年になります。現場管理もさることながら、人間関係の重要性を学び、現地法人でマネジメントをする立場になってからもその経験が生きました。入社当時は、就職するまでの遅れを取り戻そうとするあまり、気持ちが前のめりになり、失敗することが多かったように思います。「ゆっくり急げよ」。海外の最初の現場で先輩から言われた言葉です。

 若い人に期待するのは、失敗を恐れず、何にでもチャレンジすること。「~のおかげ」と常に感謝の気持ちと謙虚さを忘れなければ、失敗しても誰かがきっとフォローしてくれます。

 (とのおか・みつや)1983年中央大理工学部土木工学科卒、84年中野組(現ナカノフドー建設)入社。ベトナム駐在員事務所長、タイナカノ社長、同社長兼ナカノベトナム会長などを経て、17年4月から現職。静岡県出身、57歳。
入社1年目。マレーシアの現場で現地コンサルの
スタッフと一緒に(左から2人目が本人)

2017年5月26日金曜日

【JAXAの不整地走行ロボ活用】竹中工務店ら、盛り土締め固め自動RI試験ロボ開発

竹中工務店は25日、竹中土木、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、盛り土の締め固め試験を自動で行う「自動RI試験ロボット」を開発したと発表した。従来の人力による試験に比べ、所要時間を約15%短縮できるという。今後、竹中土木などが手掛ける道路建設工事への適用を目指す。

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【積女ASSALだより】あすなろ建築事務所・今野亜紀さん

 ◇楽しく情報を共有◇

 昨年の4月に新卒として入社し、現在は主に建具の積算をしています。

 大学では心理学を専攻していたため、入社当時は積算の知識が全くありませんでした。そこで仕事を通して経験を積むだけでなく、積算士試験を受験するという目標を立てました。試験では意匠や構造など幅広い知識を問われるため、初心者の私が積算の考え方を学ぶにはとても効率的な方法でした。講習会にも参加する機会があり、積算の知識だけでなく働き方について先輩方のお話を聞くことができました。

 楽しく情報を共有できる機会のため、つながりを広げていけたらと思います。資格取得を通して得た経験は今後の実務にも生かしていきたいです。

 (こんの・あき)(次回は大成建設の武内恵美さんを紹介します)

【回転窓】「訓練~就職」定着を

未就業者に無料で職業訓練と資格取得の機会を提供し、就職支援までをセットで行う厚生労働省の「建設労働者緊急育成支援事業」。建設業振興基金が受託している同事業が3年目に入った▼全国各地の業界団体などと連携し、地域の特性を生かしながら、訓練に参加する人材を集めて事業が展開されている。事業は5年計画。トータルで5000人が訓練を受けることを目標にしている▼参加する人材は年齢も経歴もまちまち。建設業に対する思いも各人各様だが、建設現場で必須の訓練や資格取得を自ら行えば相応の費用がかかるところを無料で参加できる。そこに大きな魅力を感じて参加する人たちが多いようだ▼企業にとっても、建設について何も知らないままより一定の訓練を受けてくる人材は魅力。入職後の教育にかかる時間やコストを抑え、即戦力として働いてもらうことができるからだ▼業界や企業が主導する将来の担い手の確保・育成。これを国が支援する事業も折り返し点に差し掛かっている。終了後も、訓練から就職支援という一連の流れを定着させることができるか。国費を投じた壮大な実験でもある。

【若手・中堅社員に出会いの場提供】都中建、7月に初の婚活パーティー開催

東京都中小建設業協会(都中建、山口巖会長)は25日、会員会社(計132社)に勤める独身の男女同士の結婚を後押しする初の「婚活パーティー」を開催すると発表した。若手・中堅社員の職場定着促進策の一環として企画した。7月23日(日曜)の午後2時から東京都新宿区にある「日比谷BARの食卓新宿店」で開催する。

 対象は会員会社に勤める20~40代の独身男女各15人。応募は先着順に都中建へのFAX(03・3354・7271)で受け付ける。参加費は男性3000円、女性2000円。会員各社からは協賛金として参加者1人当たり5000円を募る。

 都中建によると、現時点で会員会社に勤める20~40代の独身者が何人いるか詳細に把握していないが、各社からは出会いの場を確保してほしいとの要望が多かったという。パーティーでは異性の参加者全員と会話できる時間を確保する。2回目以降の開催は同日の様子や参加者の意見などを踏まえて検討する。

 建設業団体が主催する婚活をテーマにしたパーティーやイベントはこれまでに、山梨市建設協力会(山梨県山梨市)や、埼玉県電業協会と埼玉県電気工事工業組合などが開いているという。

2017年5月25日木曜日

【5年連続増加、初の600万円台に】上場企業の平均年間給与、605・7万円に

 民間信用調査会社の東京商工リサーチがまとめた2016年の「上場企業平均年間給与」調査によると、上場3079社の年間平均給与は605万7000円となり、前年に比べ6万3000円増加した。2011年の調査開始以来、5年連続の増加で初めて600万円台に乗った。

建設業161社の平均年間給与は671万9000円(前年比1・9%増)業種別で見ると金融・保険業(153社)の702万9000円に次いで、10業種の中で2番目に高い水準にある。

 建設業の平均年間給与は618万6000円(2011年)→623万1000円(2012年)→624万9000円(2013年)→637万8000円(2014年)→658万8000円(2015年)と推移している。

 個別企業の平均年間給与で最も多い金額帯は500万円以上600万円未満の936社(構成比30・4%)。次いで600万円以上700万円未満が755社(24・5%)隣、500万円以上700万円未満が3079社中1691社と半数を超える。500万円未満も723社あり、同社は「上場企業の給与は二極化傾向が強まっている」と分析する。

【回転窓】書写山と落書き

兵庫県姫路市の書写山円教寺を訪れた。天台宗三大道場の一つ。岩山の中腹に設けられた舞台造りの摩尼(まに)殿や、国内最大規模の仏堂である食堂(じきどう)などが森の中に連なる。「西の延暦寺」との評も納得がいく見応えだった▼宝物殿に弁慶が学んだという勉強机がある。鬼若と名乗っていた若い頃に同寺で修行に励んだという。だが、寝ている時に顔に落書きをされて激怒。いたずらをした兄弟子と大げんかになり、そのいさかい時に火が講堂などに燃え移ってしまう▼その再建に向け、資金を集めようと太刀を奪い歩く中で牛若丸と出会う。伝説も含まれようが、歴史の一幕を想像しながら見入った。もう一つ興味深かったのが、戦国時代に柱に彫り込まれた落書き。羽柴(豊臣)秀吉に占領された時代のものという▼険しい地形で守りに有利な上、兵士が寝泊まりできる施設も豊富。秀吉は、播磨地方を支配下に収めようと争う中で本陣に選んだ。僧侶は追い出され、多くの仏像や寺宝が略奪されたと伝えられる▼争いの時代に文化より時の権力者の思惑が優先されるのは歴史の常。そうしたことが繰り返されないよう願うばかり。

【曲面屋根が美しい…】竹中工務店ら、木造複層格子梁を開発

 竹中工務店と一粒社ヴォーリズ建築事務所は曲面の屋根をつくる木造の複層格子梁を開発し、国内で初めて滋賀県近江八幡市の学校施設に適用した。

 木造複層格子梁は主材となる上弦材と下弦材を短辺方向に架け、斜材を上下弦材の間にトラス状に組み込む架構。トラス成を確保することで部材の小断面化と製作工期の短縮を実現した。

 斜材は屋根の面内剛性を高めるだけでなく、屋根構造の立体的な力の伝達にも役立っている。

 導入したのは学校法人ヴォーリズ学園の「ヴォーリズ記念アリーナ」。ヴォーリズ学園が屋根構造を木造にするよう求めたのを受けて、両社が複層格子梁を開発した。

 複層格子梁に使用したのは工場生産の湾曲集成材。複層格子梁にしたことで断面を220ミリ×450ミリにサイズダウンできたという。

 最初に下弦材を設置してその上に斜材を置き、さらに上弦材を設ける。材料同士は金物で接合する。伝統木造の技術「貫架構」を組み込むことで屋根架構を一体化。木質系の母屋と組み合わせることで暖かみのあるシンボリックなアリーナ内部空間を実現した。工期や重量、コストともS造の屋根とほぼ同じという。両社は特許を共同出願済み。

 ヴォーリズ記念アリーナは奥行きが約39メートル、幅が約33メートルのメインアリーナを備える。規模はRC造(屋根木造)2階建て延べ2303平方メートル。意匠設計と監理を一粒社ヴォーリズ建築事務所、構造設計と木造関係監理、施工を竹中工務店が担当。16年5月中旬に着工、17年3月に完成した。

【総合運動場整備が始動へ】佐賀県、6月補正予算案に基本設計費計上

総合運動場の完成イメージ
佐賀県は、17年度一般会計6月補正予算案の要求状況をまとめた。要求額は46億92百万円。現計予算額と合わせた予算額は前年同期比2・0%減の4381億94百万円となる。目的別要求額のうち土木費は15億97百万円、部局別要求額のうち県土整備部は15億61百万円となった。

 主な要求ではスポーツを楽しむ環境整備事業費として2億67百万円を要求するとともに18年度までの限度額2億82百万円の債務負担行為を設定。予算が可決されれば総合運動場等整備のアリーナや水泳場、陸上競技場などの基本設計などを行う。

 施設整備は県総合運動場と県総合体育館(いずれも佐賀市日の出)がある一帯で行う。整備基本計画によると、総合運動場の競技施設周辺の西エリアは屋外競技を中心とした拠点、総合体育館周辺の東エリアは屋内競技を中心とした拠点とし、総合運動場陸上競技場の東側の国道に面した駐車場周辺の中央エリアにアリーナなどを新設する。

 新設するアリーナのメインアリーナはバスケットボールコート3面の広さで観客席は6000席以上(うち固定4000席以上)。コンサートや展示会など多目的に利用できる施設とする。これに周辺施設への動線となるペデストリアン(歩行者用)デッキ、カフェやレストラン、スポーツショップなど有料テナントが入居するテナント棟を併設する。

 陸上競技場は第1種基準を満たすよう雨天練習場の整備や走路改修、老朽化した施設の改修などを行い、水泳場はコース幅を変更し屋外50メートルプールを屋内プールに改修する。総合体育館は空調改修やボクシング・フェンシング場の整備を行い、管理棟やテニスコートの改修も行う。 整備基本計画策定業務は梓設計が担当した。

【ピーク時の2割減に】16年度末の建設業許可業者、46・5万社

国土交通省は24日、2016年度末(17年3月末)時点の建設業許可業者数を発表した。総数は46万5454業者で前年度末に比べて0・5%、2181業者減少した。減少は2年連続で、ピークだった1999年度末(60万0980業者)と比べ22・6%減となった。新たな許可業種区分として16年6月に申請受け付けを始めた「解体工事」は1万3798業者が取得した。

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2017年5月24日水曜日

【回転窓】「夢の技術」発信しては

今から3年前、本紙が「50年後に実現させたい夢の技術」をテーマに募った60のアイデアが「建設再興-新時代の技術産業へ」と題した企画特集号に掲載されている(2014年10月15日発行)▼例えば、樹脂ではなく実際の土砂を使ってあらゆる起伏や斜面などを成形するのが「3Dプリンター型建機」。層を重ねて上方に成形するだけでなく、地下を削って下方にも構造物を造ることができ、実現したら画期的な技術になるだろう▼軟らかい状態ではラップのように薄くて簡単に曲げられるが、硬化させると高強度になるのが「自由自在な素材」。空気を透過させ、呼吸するように最適な温度の空気を室内に取り込める▼建設会社や行政機関などで働く人たちから寄せられたアイデアはどれも興味深く、建設技術の未来を予感させてくれるものばかりだった。今読み返しても、近い将来に実現してほしいと期待が膨らむ▼経営環境が厳しい時代を経てきた建設産業は長い間、どこか「夢」を語れないでいたのかもしれない。未来を託す担い手たちを確保・育成していくためにも、そろそろ「夢」を広く発信していってもいい。

【施工は竹中工務店JV】三菱地所、6月1日にホークスタウン跡地商業施設(福岡市)着工

三菱地所は、福岡ヤフオクドームに隣接する福岡市中央区地行浜で進めているホークスタウンモール跡地複合再開発計画の大規模商業施設の地鎮祭を6月1日に開く。竹中工務店・錢高組・小林建設・松本組・坂下組JVの施工で着工する。建物規模は2棟総延べ約12万5000平方メートル。設計・監理は三菱地所設計が担当。18年度下期の開業を目指す。

 商業施設棟は本体棟がS・RC造4階建て、アネックス棟が同8階建て。同社の旗艦商業施設ブランドである「MARK IS(マークイズ)」を冠し、賃貸面積は約4万8000平方メートル。同社グループで最大級、福岡市の天神地区以西で最大規模の商業施設となる。建設地は中央区地行浜2の2の1。跡地では商業施設棟以外に三菱地所レジデンスによる高層分譲マンション2棟の建設も計画している。

【体育館など3施設検討】鹿児島県、大規模スポーツ施設整備で6月にも有識者委初会合

鹿児島県は、大規模スポーツ施設のあり方検討に着手する。6月にも有識者らで構成する検討委員会の初会合を開き、総合体育館、ドーム球場、サッカースタジアムの3施設の必要性や実現可能性などを検討する。

 このうち総合体育館については三反園訓知事がこれまでも必要性を認識していると発言しており、優先的に検討を進める見込みだ。

 県は本年度一般会計当初予算に大規模スポーツ施設のあり方検討事業として319万4000円を新規計上し、現在は有識者らで構成する検討委員会の設置準備を庁内で進めている。初会合は三反園知事が6月上旬ごろに開催したいと表明しているため、これを念頭に日程調整しているもよう。検討内容や検討期間などは初会合で決めるとし、現段階では明らかにしていない。

 施設のうち総合体育館は前知事時代にメインアリーナ、サブアリーナ、武道場などで構成する施設の基本構想をまとめたが白紙撤回した経緯があり、優先的に検討する。必要性を議論し、必要性が認められれば機能や立地場所など踏み込んだ検討に入る。

 ドーム球場に関しては採算面など課題も多いため、実現の可能性などを慎重に検討する。サッカースタジアムは鹿児島市が有識者や競技団体の代表らで構成する協議会を設置し、本年度末の提言に向け議論を進めているため、この進ちょく状況も見ながら必要に応じて対応を検討する。

【研究室訪問】東京大学工学部建築学科・伊藤毅研究室


 ◇「領域史」研究を切り開く◇

 東京大学工学部建築学科の伊藤毅研究室は、東大初の「都市史」を専門とする研究室だ。

 伊藤教授は、時代・地域を問わず幅広いテーマを扱い、世界各地で現地調査を実施。2013年には「都市史学会」を立ち上げ、建築と土木、都市をつなぐインフラに着目した都市史研究を深めている。これまで優秀な研究者を輩出しているほか、「建築史を素養として身に付け、卒業後は建築設計の道に進む学生が多い」(伊藤教授)という。

 伊藤教授の研究の出発点は日本の都市史だが、1999年から一年間、コロンビア大学客員研究員として米国で過ごしたことをきっかけに、海外の都市にも目を向け始めた。植民都市として栄えたキューバの首都ハバナや、13、14世紀に成立したフランス南西部の新都市「バスティード」の調査を実施した。

 東大の建築と土木の研究者が連携して進める研究プログラムに参加したことを機に、建築と土木と都市をつなぐ「インフラ」に着目。オランダ北部フリースラント州に多数現存するテルプと呼ばれる人工の丘の上につくられた集落や、イタリア北東部ポー川水系の都市、17世紀に開かれた南仏ラングドック地方のミディ運河とその周りに成立した都市の研究などを進めている。

 物理的な範囲だけでは都市を捉え切れないとの考えから、伊藤教授は「領域」という視点を提唱する。地図上の線だけでなく、山や川など自然地理的、また言語など社会的な区切りによって生まれる区域を含めた「領域史」という新たな学問体系を切り開こうと意気込んでいる。

 12年に、日本近世史が専門の吉田伸之東大名誉教授と共に日本建築学会賞(業績)を受賞した。受賞業績は「学的融合による都市史研究プラットホームの構築」。両氏が編集を担い、幅広い分野の歴史研究者が執筆した書籍『伝統都市』全4巻(10年)の成果を中心に、都市をテーマに建築学と歴史学が融合した学際的な研究領域を開拓したと評価された。13年には「都市史学会」を設立し、日本史と建築史だけでなく東洋史や西洋史、美術史、土木史、都市計画史などの専門家も加わった研究ネットワークを築いているところだ。

 ◇世界各地で調査実施、小さなインフラを提唱◇

 最近では、カリブ海・アンティル諸島の調査に着手した。独自の社会を持ちながらも周囲の島や大陸と連携して生存してきた島とその周囲の海を含めた領域を対象とし、植民地時代から独立を経て近現代に至る歴史を踏まえた島のあり方を探る「島嶼(とうしょ)論」を展開していきたいとしている。

 ゼミの学生は、テーマごとに設置された研究会に自由に参加。調査に同行して研究手法を学び、自らの卒論・学位論文の研究に生かす。現地では毎晩ミーティングを行い、白熱した議論が2~3時間続くこともあるほどだ。博士課程には毎年20人程度が所属し、伊藤教授の都市史研究を近くで学びたいと訪れる留学生も多い。伊藤教授は「研究室の自慢は学生が優秀なこと。自分の問題意識から出発して自由に取り組んでいる」と笑顔を見せる。

南仏ラングドック州カスペタン村
で行った現地調査の様子
 災害は都市にもともと存在するものと考える伊藤教授は、11年の東日本大震災が都市史研究を見直すきっかけになったと話す。近代以降、人がつくり上げてきた重厚長大なインフラをもってしても、都市が内包する危機を抑えることはできないことが明らかになった今、都市とインフラはどこを目指すべきか。

 伊藤教授は、オランダのテルプのように住民の共同体だけで維持できる「小さなインフラ」を提示する。

 「震災後、政府は広範囲に大堤防を建設しようとしているが、資金的に不可能に近いだろう。近隣の住民が利益を享受する小規模なインフラが必要だと考える。当然あるとされてきたインフラや大地といった前提がなくなったらどうするか、都市のあり方を問い直す時代が来ている。今こそ複雑な全体像に目を向ける領域論的アプローチが求められている」。

 (いとう・たけし)52年京都府生まれ。77年東京大学工学部建築学科卒、79年同大学院修士課程修了。84年同大助手、87年工学博士取得、94年同大助教授、99年コロンビア大学客員研究員、00年東京大学教授。

【こちら人事部】五洋建設/「進取の精神の実践」可能なフィールド提供

新入社員研修では現場で行う朝礼の演習も実施している
 1896(明治29)年に水野甚次郎が前身となる水野組を広島県呉市で創業。「創造する心に国境はない」との信念の下、国境を越えた海と大地で、さまざまなジャンルの建設工事や開発事業に取り組んできた。「グローバルな臨海部ナンバーワン・コントラクター」を目指す五洋建設は、4年後の2021年に創業125年を迎える。

 採用や新入社員研修を担当する大塚健経営管理本部人事部担当部長は、「求める人材は『自ら考え、行動する人』」と強調する。自身で目標を設定し、主体的に業務を遂行できる人材に期待しているという。

 若い職員にも責任ある仕事を任せるのが同社の方針。「経営理念の一つに『進取の精神の実践』とある通り、失敗を恐れずチャレンジしてほしい。若手のころから、何事にも果敢に取り組む姿勢は大きな成長を促す」と力を込める。

 そうした人材を獲得するため、同社では出身校ごとにリクルーター活動を実施。職場訪問やOB訪問を受け付けている。企業説明会、学内セミナー、合同企業セミナーにも積極的に参加。企業側からの一方的な説明にならないよう、対話型の説明会も実施している。

 「スマートフォンが普及するようになってからは、採用パンフレットは拡張現実(AR)アプリを使い、『見る』から『視る』へと映像コンテンツを切り替えた」と大塚担当部長。建設業を理解してもらうためのインターンシップ制度も国内外で実施しているという。

 研修制度も充実している。入社直後の全職種合同での新入社員研修を経て、3カ月目に職種別の研修、6カ月目に全職種合同のフォローアップ研修を行う。2年目は全職種合同の研修、3年目は職種別の研修を行う。

 技術系の職種は、専門スキルを習得するための専門研修を別途実施。入社後12年間はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)制度を導入し、若年層の成長を促す施策を取っている。

 大塚担当部長は、「学生の皆さんには海洋土木のイメージが強いようだが、陸上土木も同規模の事業比率で多種多様な仕事がある」と魅力をアピールする。建築は、臨海部での強みを生かした大型物流施設や工場が多く、文化・スポーツ施設などのランドマーク施設の実績も増えているという。

 土木・建築とも各国で数々の大規模工事を手掛けてきた。「海外に挑戦したい人は、そのチャンスがある。思い切って自分がやりたい仕事ができる会社だ。自分の夢を持つことが大切。その夢があれば、実現のための目標やプロセスが明確になり、仕事のやりがいが増していく」とエールを送る。

 「面接では学生時代に経験したことを自信を持って話してほしい。皆さんが経験してきたことはさまざまだが、われわれは皆さんの話す姿に映る熱意を見ている」とアドバイスしている。

 《新卒採用概要》
 
 新卒採用者数=男性136人、女性27人(17年度実績)
 
 3年以内離職率=8・1%(14年度新卒)
 
 平均勤続年数=男性19・2年、女性17・1年(17年3月末時点)
 
 平均年齢=43・4歳(17年3月末時点)

2017年5月23日火曜日

【回転窓】社内運動会、復活の効果は

5月の大型連休が終わってから6月の梅雨入りまでの間は、秋と並んで小中学校の運動会シーズン。読者の中にも、もう終わったあるいはもうすぐという方がおられよう▼わが子の晴れ姿を写真やビデオに収めようと、機材片手に奮闘する人も多いが、最近は家族席の場所取りや撮影スペースの確保をめぐる保護者同士のトラブルも増えていると聞く。家族ごとにテントを張るケースも多いとか。校庭にテントがひしめき合う光景に「まるで野外フェスのよう」との声も▼過熱する場所取り合戦に歯止めを掛けようと、学校側は保護者に注意を呼び掛けたり、抽選を導入したり。子どもそっちのけで保護者と学校、あるいは保護者同士がいざこざを起こすなど論外だが、時代とともに運動会の風景も様変わりしたと感じる▼運動会と言えば、社内行事として運動会を復活させる企業が近年増えているらしい。かつては多くの企業が開いていたが、参加者減少やコスト削減などでしばらく下火だった▼ここへ来ての復活には、親睦を深める、一致団結の機会を設けるなどさまざまな狙いがあるようだ。さて、果たしてその効果は-。

2017年5月22日月曜日

【業界イメージ刷新の一助に】全建協連、ユニフォームデザイン事業を展開

全国建設業協同組合連合会(全建協連、青柳剛会長)は19日、東京都千代田区の東海大学校友会館で定時総会を開き、17年度の予算・事業計画を決定した。事業計画を踏まえた活動指針として、業界のイメージを刷新するユニフォームデザインプロジェクトを展開していくことを新たに打ち出した。

 青柳会長は総会後に記者会見し、プロジェクトの狙いについて、「工事現場を格好良くプロデュースしたい。作業着でも電車に乗れる、街を歩けるようになれば、社員のモチベーションもアップし、リクルートの有効なツールにもなる」と述べ、ファッションから建設業への理解促進につなげていく考えを表明。「10月ぐらいにはユニフォームデザインをお披露目できるようにしたい」と述べた。継続的な事業に育てる意向も示した。

 技術者、技能労働者のキャリアパスややりがいにつながる活動も摸索。長野や群馬で具体的な取り組みが始まった施工担当技術者の名前が入った銘板の設置を拡充する活動の支援や情報提供も展開する。