2017年5月29日月曜日

【駆け出しのころ】ナカノフドー建設執行役員海外事業本部副本部長・外岡三弥氏

 ◇おかげさまの気持ち大切に◇

 映画「黒部の太陽」や「海峡」の影響も受け、大型土木工事を手掛けるゼネコンに絞って就職活動をしました。中でも海外プロジェクトへの思いは人一倍ありました。当時は名古屋への五輪招致でソウルに敗れたこともあり、各社の採用は下火で、1年間の就職浪人をしてしまいました。

 就職浪人を相手にしてくれる企業はほとんどなく、困っていると、大学の就職部長が「どうしている」と心配して電話をかけてきてくれたので、「こういう状況です」と伝えました。そこで「土木は強くないけれど、海外展開をしている面白い会社がある」と勧められたのが当社でした。

 就職部長の大学時代の同期が役員をされていると聞き、尋ねていくと、「よく来たな。座りなよ」と言ってくれました。それまで多くの企業に断られ続けてきたので、この言葉をすごく温かく感じ、拾ってもらったという感謝の気持ちでいっぱいでした。

 海外で仕事をしたいという熱意が伝わり、入社1年目の終わりごろ、海外の現場に配属されました。今では考えられないことです。現場はマレーシアのサバ州コタキナバル。イスラム教団サバ本部の事務所・モスクの建設工事です。基礎や外構を担当する土木要員の一人として赴任しました。うれしかったことを覚えています。

 ただ当時は治安が悪く、風土病の心配もあって生活は大変でした。測量や杭打ちを任せてもらいましたが、ことごとく間違え、やり直しの連続。大きなミスをした時には所長から「またお前か、何しにきたんだ」と叱られたものです。

 現地のコンサルタント会社の人も厳しく、私も生意気でしたから、なかなか検査を通してもらえません。そんな時、「攻め方を少し変えたら」と先輩たちがアドバイスしてくれました。謙虚にいこうと、コンサルの人に「まだ1年生です。勉強中なのでいろいろと教えて下さい」と素直な気持ちで伝えると、その後はなぜかかわいがられ、検査もスムーズにいくようになりました。異国の地で、駆け出しだったからできたのだと思います。

 マレーシア、シンガポール、ロシア、ベトナム、タイと海外勤務は通算30年になります。現場管理もさることながら、人間関係の重要性を学び、現地法人でマネジメントをする立場になってからもその経験が生きました。入社当時は、就職するまでの遅れを取り戻そうとするあまり、気持ちが前のめりになり、失敗することが多かったように思います。「ゆっくり急げよ」。海外の最初の現場で先輩から言われた言葉です。

 若い人に期待するのは、失敗を恐れず、何にでもチャレンジすること。「~のおかげ」と常に感謝の気持ちと謙虚さを忘れなければ、失敗しても誰かがきっとフォローしてくれます。

 (とのおか・みつや)1983年中央大理工学部土木工学科卒、84年中野組(現ナカノフドー建設)入社。ベトナム駐在員事務所長、タイナカノ社長、同社長兼ナカノベトナム会長などを経て、17年4月から現職。静岡県出身、57歳。

入社1年目。マレーシアの現場で現地コンサルの
スタッフと一緒に(左から2人目が本人)

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