2017年5月1日月曜日

【回転窓】改めて被災地を歩く


先月中旬、東日本大震災の被災地を訪ねた。仙台市中心部から車で30分も走ると、津波で甚大な被害を受けた仙台市若林区の荒浜地区。かつて海水浴場としてにぎわい、住宅地が広がっていたその場所は、今も痛々しい津波の爪痕が残る▼海岸から700メートル内陸にある荒浜小学校は、4階建ての校舎の2階まで浸水したが、児童や近隣住民合わせて320人が屋上に避難。全員が無事救助された。仙台市はこの小学校を「震災遺構」として保存することを決めた▼被災した校舎のありのままを見てもらおうと、極力手を加えずに校舎を保存整備。津波の脅威や教訓を後世に伝え、犠牲者を二度と出さない-。そんな思いが込められた小学校が4月30日から一般に公開された▼震災の経験や教訓をどう生かしていくか。痛みを伴う過去を忘れ去ろうとするのが生物の本能だが、人間の知性によってそれにあらがい、世代を超えて、教え、刻み込む。その結果として「防災文化」が定着していくのだろう▼被災地を歩くことは、改めて防災を考えるきっかけを与えてくれる。地域に伝承された文化に耳や目を傾けることから始めたい。

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