悩みがあれば打ち明ける、そういう勇気も大切 |
「小さい頃から建物が出来上がっていく様子を見るのが好きで、ずっとそれを造り上げる一員になりたいと思っていた」。
仮設資材の販売・リース会社に勤める山口加奈子さん(仮名)は、小学生の頃から建設の世界へ進みたいと考えていた。「すべては夢のため。そのためだったら何でも頑張れた」。建設業界で働くという夢をかなえるため、大学では土木工学を専攻し、地質学や構造力学など必要な知識を貪欲に吸収した。
だが、就職活動を始めると壁にぶつかった。就職活動をしていた当時は、「建設業は男の仕事」という風潮がまだまだ色濃かった。企業が主催する就職説明会に出席する学生も大半が男性で、女性は少数派。希望していたゼネコンも、それ以外の建設関連企業も、女性技術者の採用人数は少なかった。
「女性だから建設業界では長く続かない、そんな目で見られていたような気がする」と当時を振り返る。面接で一生懸命思いを伝えても、なかなか受け止めてもらえていないと感じたこともあった。
そんな苦しい時期に出会ったのが、現在勤めている会社の人事担当者だった。説明会のブースを訪れた時、「何か気になることはある?」「就活、うまく進んでる?」と女性の自分に対しても親近感を持って接してくれた。「人とうまくコミュニケーションが取れない」と感じ始めていた矢先の出来事。仕事以外のことでも笑顔で答えてくれる、そんな心地よさに魅力を感じ、入社したいと思った。
現在、工事現場の掘削に必要な山留めと構台の計画図・加工図の作成を主に担当している。目まぐるしく変化する工事現場でベストの回答を導き出すため、試行錯誤を繰り返す毎日だ。受け持つ現場が重なると、作業が夜遅くにまで及ぶことも少なくない。
これまで数々の現場を担当してきたが、最も記憶に残っているのは都心部での大規模な再開発工事。一つのミスが人命に直結する中での仕事に極度のプレッシャーを感じ、計画図の作成が思うように進まなくなった。朝起きた時に、仕事に行きたくないと思う日もあった。
そんな中で助けてくれたのが、同じ職場の同僚。不安そうな表情を読み取ってくれたのか、仕事はもちろん私生活の悩みにまで相談に乗ってくれた。「あのまま一人で仕事をしていたら、重圧に押しつぶされていたかもしれない」。同僚が救いの手を差し伸べてくれたことで、もやもやしていた気持ちが一気に晴れた。プレッシャーを跳(は)ね返し、楽しみながら仕事ができるようになった。
今、仕事で一番大切にしているのは、コミュニケーションを積極的に取ることだ。同僚が少しでも悩んでいそうな表情をしているのを見たら、進んで話を聞くようにしている。
「就職活動の時や、仕事で悩んでいた時、助けてもらったように」。あの時の経験が今、生きている。
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